IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

もしも彼女が大統領選挙に出たら

2006-01-28 15:57:27 | エンターテーメント・カルチャー
ハリウッドの有名人にも色々とタイプがあるようで、アメリカ国内で誰もが知っている名前でも、国外ではあまり知名度が無いっていうケースがたしかにあるようだ。数年前、記憶が正しければ「日系エンターテーメント」の記事だったと思うけれど、アダム・サンドラーやベン・スティーラーの人気が日本ではあまり高くないと聞いて驚いたことがあった。その逆って誰になるんだろうか?「ナイトライダー」や「ベイウォッチ」に出演したデービッド・ハッセルホフがドイツでもの凄く有名だったエピソードは何度か聞いたことがあるけれど、その日本版って誰になるんだろうか?今日のブログで紹介するオプラ・ウィンフリーというオバチャンも、こちらではヒラリー・クリントンとアンジェリナ・ジョリーを足したくらいの影響力を持つ人。でも、不思議なことに、日本ではそれほどの知名度が無いんだそうで…。この前も何人かの友人と話していて、「仮にオプラが大統領選挙でヒラリー・クリントンやコンドリーザ・ライスと戦っても、十分に勝てるだろうね」とみんなで妙に納得した事があった。今日は、そのオプラについての話です。

オプラ・ウィンフリーは全米で最も知名度の高いトークショー・ホストの1人だが、彼女が自身の出演する人気トーク番組で昨年9月に紹介したジェームズ・フライ氏の自叙伝の内容をめぐる議論が、アメリカ国内では数日前からトップニュースとして報じられている。日本ではそれほど知名度が高くないウィンフリーについて少し説明しておくと、初のアフリカ系アメリカ人女性ビリオネアでもある彼女は、70年代後半にナッシュビルやボルチモアのテレビ局でニュース・アンカーを務めたあと、1984年からシカゴにあるABC系列局で「オプラ・ウィンフリー・ショー」を開始した。当初はシカゴ周辺に限定されたローカル番組だったが、1986年9月からは全国放送へと拡大し、ウィンフリーは少なくとも2011年まで司会を継続する契約にサインしている。ゲストの豪華さでも知られており(昨年、トム・クルーズがソファーで飛び跳ねる奇行を見せたのも、この番組だった)、番組の成功によって全国的な名声を不動のものとしたウィンフリーは、13億ドルの資産を持つとも言われている(フォーブス誌)。ウィンフリーは月刊誌「O」の出版も手掛けており、この雑誌の平均発行部数は270万部に達し、南アフリカ版でさえ30万部という数字を誇っている。

ウィンフリーは毎月1回程度の割合で、自身の番組の中に「オプラのブッククラブ」というコーナーを設けていて、その中で特定の本を取り上げ、書評を行っている。彼女によって紹介された本は、それだけで売り上げが100万部ほど増えるとも言われており、昨年9月に紹介されたジェームズ・フライ氏の「ア・ミリオン・リトル・ピースィズ」はすでに350万部以上が売られている。「ア・ミリオン―」は麻薬と犯罪から更生する様子を描いたもので、フライ氏の自叙伝として書かれていたため、書店ではノンフィクション作品として販売されていた。2003年に発売された「ア・ミリオン―」は順調に売り上げを伸ばしていたが、昨年9月にウィンフリーによって紹介されると、オンライン書店のアマゾンで売り上げ1位を記録し続けるなど、爆発的なヒット作品となった。しかし1月8日、ウェブサイト上でフライ氏の経歴や犯罪歴と自叙伝の内容が大きく食い違う事実が報じられ、フライ氏にストーリーの脚色疑惑が浮上していた。

ミネアポリス・スター・トリビューン紙は2003年初めにフライ氏にインタビューを行っているが、その際に氏は「多少の脚色を行った事実を否定する気は無い」とコメントしている。この3週間、ウィンフリーはフライ氏の作品を弁護し続けてきたが、自叙伝の内容があまりにも氏の実体験とかけ離れていたため、26日になってその態度を180度変えている。26日のウィンフリー・ショーにはフライ氏がゲストとして出演したが、そのフライ氏をにらむようにして、ウィンフリーは「騙された気分だわ」と怒りをあらわにした。「それよりも重要なのは、あなたが数百万の読者を裏切った事よ」、ウィンフリーは続けてそう語っている。フライ氏は脚色の事実を認めながらも、「今でもこれを小説ではなく自叙伝だと思っています」と語った。「ア・ミリオン」の出版元は内容の事実確認が行われなかったと認めているが、今後も自叙伝として販売を続けていくとする声明を発表している。

タブロイド紙のヘッドラインって意外に面白くて、担当者のセンスがモロに出る箇所でもあると思うけど、金曜日の夕方にカフェに立ち寄った時、そこで売られていたニューヨーク・ポスト紙の1面を見て、思わず「うまいねぇ」と思ってしまった。1面にはパレスチナの群集の写真が使われていて、そこに書かれたコピーは一言「ハマスタン(HAMASTAN)」。スタンっていう言葉はもともとペルシャ語で「国」を意味していて、アフガニスタンやウズベキスタンでも分かるように、「~の国」という意味の国名を持つ場所はいくつかある。で、「ハマスタン」はもちろんポストのニュースルームで作られた新しい言葉だけど、意味は「ハマスの国」になるわけで、選挙で大躍進を見せたハマスが政権の舵取りを担う将来を考えると、意外によくできた造語だなぁと感心してしまった。僕は今でも英国系タブロイド紙の愛好家で、ワシントン市内でも時間を見つけては立ち読みを楽しんでいるけど、さすがにヘッドラインのセンスは今でも横綱級だ。ヒマな時に、ウェブででも見比べてみてください。結構おもしろいよ。


写真:26日のトークショーで自叙伝について議論するオプラ・ウィンフリーとジェームズ・フライ氏 (AP通信より)。

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3 コメント

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コラムニスト (ペトロニウス)
2006-01-29 12:05:08
先日、ある知り合いのアメリカ人から、アメリカって云うのは、とってもコラムニストが地位が高いのだよ、といわれました。その人は、NYタイムズのコラムニストでトムフリーダムとかは凄い有名だよ!といわれたが、まったく知らなかった。アメリカは、トークショーが多い国ですよね。それだけ個人の意見を聞きたがる?ということか。日本でいうと朝日などの権威の代わりの世論形成機能を果たすのでしょうか?。タブロイドとか、様々な情報を英語で摂取でききるのは、とても羨ましいです。



ハマスタン・・・は、上手い造語ですねぇ。
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ありがとうございました (ひろふみ)
2006-01-30 13:18:22
ペトロニウスさん、ご無沙汰してます。コラムニストの社会的な地位の高さは、間違いなく日本よりも数段上ではないでしょうか?新聞の規模は大小様々ですけど、それぞれの町に必ず1人は有名なコラムニストがいるのではないかと思います。



トークショーホストもニュースのアンカーもそうですが、こちらの視聴者はテレビ局(ラジオ局)のカラーではなく、それぞれの番組の司会者のキャラクターで番組を選んでいると思います。CNNの場合、夕方6時からは「ファシスト」と呼ばれる(苦笑)移民嫌いのルー・ドゥボスがアンカーですが、10時からはリベラルで若者受けがいいアンダーソン・クーパーがアンカーを務めています。個人的にFOXニュースを見るアメリカ人を理解できないのですが、それでもFOXではなく、ビル・オライリーといったアンカーの強烈なキャラが人気を呼んでいるのではと思います。



これだけコラムニストやアンカーが重宝されるのも、アメリカ人が本質的に誰かの意見を聞きたがっているあらわれなのかもしれないですね。
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ご無沙汰です (ペトロニウス)
2006-01-31 00:42:37
先ほど長文のコメントが、「混雑していて・・・」ですべて消え去り、灰のようになっているペトロニウスです。



えっと、あまりに苦しいので(笑)、簡略に。



そもそもアンカーやコラムニストの「個人の個性」が前面に出るのは、日本社会ととても違うと思います。そして、僕はCNNjを良く見ますが、アンカーが上記のような傾向を表わしているとは、知りませんでした。凄いためになりました。



ああ・・アメリカに住みたいです。



以上。



また明日元気になったら、続きを書きます(笑)。
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