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整形外科症例(橈尺骨骨折/トウシャッコツコッセツ)

2013年11月08日 | 診療科目

今回は左手を骨折してしまった、オスの11ヶ月齢のチワワさんのお話です。

この子はジャンプしてたら左前足を挙げて様子がおかしいからと、福岡夜間救急動物病院に受診されました。

下が、その時のレントゲン写真です。

 

以前は、交通事故絡みの骨折を治療するケースが多かったのですが、最近はこのように「ジャンプして/ソファーから飛び降りて」という理由で手首の少し上の方を骨折して来院される子が急増してます。

チワワ・プードルなどの活動的な小型犬が人気になり、飼育頭数が増えたからです。

このクラスの犬を飼育されている方はくれぐれもお気をつけ下さい。

(特にイタリアングレイハウンドは要注意です/この記事の最後に、お家で出来る予防法をご紹介しますので、是非参考にされて下さい)

 

この部位の骨折の治療は、かなり繊細な作業かつ困難な点があります。

理由は

1.体重を支える骨であるのに、骨自体が細い(小型犬の平均直径6-8mm)

2.骨折の治癒は、骨の中心(骨髄)と周囲の組織からの栄養補給によって行われるが、骨髄自体が細く周囲組織も少ないので治癒反応が遅い

3.活動的な犬が多いため、治癒するまでに過剰な外力が骨折部位にかかりやすい

上記の理由で再骨折や癒合不全(骨折が正常に治らなかった状態)を起こした場合に、完治させることが非常に難しくなります。

ですので当院ではこの部位の骨折は1回で治すことが重要と考えて、ほとんどのケースでプレート(穴付きの板)とスクリュー(ねじ)による内固定をお勧めしております。

今回使用したプレートは

 

<<遠位橈骨用プレート(カッタブル)/キリカン洋行>>

 

以前は2kg台の小型犬の橈骨にあうサイズのプレートがなく苦慮しましたが、このプレートは厚みや幅が非常によいので助かっております。

もちろん、このままでは長過ぎるので必要な長さにカットして使用します。

 

次のレントゲンは手術後4週目のものです。(レントゲンでは橈骨の骨折ラインが分かりずらくなってます)

 この状態になると、固定器具を除去していく時期に入りますが、一度に全部外すことはしません。

骨折は治って来ていますが、まだまだ脆い状態なので再骨折の危険性があるからです。

当院では、この部位の固定器具の除去は2回に分けて行います。

 

次のレントゲンは先日、固定用のスクリューを3本除去した直後のものです。

もともとスクリューがあった場所が黒く抜けているのが分かります。

この部位が周囲の骨と同じくらい白くなってくると、残りのスクリューとプレートを除去することになります。(時期的にはここから3-4週間後)

この子の治療もいよいよ架橋に入ってきました。

まだまだ油断はできませんが、完治目指して頑張りたいと思います。

 

レーザー治療を受けているリルちゃん(気持ち良さそうです)

 

<お家で出来る注意点>

1.犬達の性格は変えられませんが、無意味にジャンプをしない程度に躾けることは出来るはずです。小さい頃から意識して育てることが重要です。

2.家の中で最も危険な場所は、フローリングの部屋にあるソファーや椅子、ベットです。可能であれば、上り下りをするソファー等がある部屋に入れない/もしくはソファー等を撤去するか低いものに変える/無理ならスロープの設置や着地する場所にラグやカーペットを敷いて滑らないようにする。階段があるお宅では、赤ちゃん用のバリケード等もお勧め。

3.骨折する子の多くは、爪やパットの間にある毛が伸びていることが多いです。

 

この状態は非常に滑りやすいので危険です。定期的に爪切りと毛刈りをしてあげましょう。

 

 


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