うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
のんびり更新しますので、どうぞ気長にお付き合い下さい。

まさにこれぞ下克上 関塚ジャパンが7戦全勝で史上初のアベック金メダル!!

2010年11月25日 | アジア競技大会
◆広州アジア大会・男子サッカー(2010年11月25日 @中国・広州/天河スタジアム)

・決勝
日本 1(0-0)0 UAE
得点者:日本)74分 實藤友紀


・最終順位
優勝・日本、2位・UAE、3位・韓国、4位・イラン

※日本はアジア大会初優勝。
  アジア大会のサッカーで男女アベック優勝するのは今回の日本が史上初めてです。
  また、日本の全ての団体球技を通じても、男女アベック優勝は1974年テヘラン大会のバレーボール以来です。


広州アジア大会の男子サッカーの詳細の成績(日本サッカー協会HP)
             〃              (大会公式HP)
今大会の男子代表選手20人


                           *  *  *  *  *


まるで6年前のアジア杯の再現のようでした

私は四半世紀以上サッカーを観てますが、今回のようなチームは初めて目に掛かりますね。Jリーグの日程を優先した結果、誰がどう見ても2軍以下の戦力しか集まらず、大会前にテストマッチをやってないどころか事前合宿すら期間が短かったです。更には、負傷や不祥事で選手が何人か途中で離脱。なので、下馬評は極めて低かったです。しかし、終わってみれば7戦全勝で優勝。全7試合で17得点を挙げ、失点は僅かに1。数字だけで判断すれば、横綱相撲としか思えないです。日本がアジアの公式タイトルを全勝優勝するのも今回が初めてです。しかも、彼らは端から延長戦やPK戦に持ち込むような、消極的な試合をした訳ではありません。むしろ、格上相手に臆することなく真っ向から挑みました。そして、経験の浅い彼らは敵地の様々な困難を克服し、試合を重ねるにつれて心身ともに逞しく成長しました。

なお、このアジア大会は決して権威の低い大会ではありません。日本は、戦後初めて国際舞台に復帰した1951年の第1回ニューデリー大会から毎回参加。サッカーも全16大会に出場してます。日本のスポーツ界がまだ強かった1970年代頃までは、他の競技ではアジア大会には2軍を派遣していた事もありました。だが、世界で最も普及した競技であるサッカーだけは常にベストメンバーを派遣。しかし、日本はアジアの壁に長年に渡って跳ね返され続け、優勝は皆無でした。それどころか、メダル獲得すら過去に3回だけです。銅メダルを獲ったメキシコ五輪得点王の釜本邦茂でさえも、アジア大会では3位止まりです。なので、アジア大会の59年間の歴史を振り返ると、今回の金メダル獲得は掛け値無しの快挙です。しかも、2軍以下の戦力ですから尚更です。

試合は、まさに決勝に相応しい緊迫した厳しい展開でした。UAEは、一昨年のAFC U-19選手権の優勝国で、昨年秋のU-20W杯でもベスト8に進出するなど、この世代のアジアの強豪国です(U-20W杯メンバーは8人おりました)。なので、現在の日本の真価が問われる一戦でもありました。試合は持ち前の技術と身体能力を活かしたUAEに、日本は苦しめられます。前半の日本のシュート数は僅か2本で、CKに至ってはゼロ。後半早々には、UAEのシュートがクロスバーを2度叩くなど、猛攻に晒されます。しかし、後半に入って徐々に攻勢に転じた日本は、後半29分にCKの流れから水沼宏太のクロスを受けた實藤友紀がシュートを叩き込んでついに先制。この虎の子の1点を体を張って死守した日本が大一番を制しました。愚直なまでに走り切った彼らの姿は、未来に向かって走っているようにも思えました。

あらためて思うのは指導者の存在ですね。たしかに関塚隆監督は川崎時代はタイトルはありません。しかし、当時のJ2史上最多の勝ち点で川崎を2005年にJ1に再昇格させ、以降のシーズンからは降格争いを全くすることなく、常に優勝争いを出来るチームに仕上げました。ACLだって2回連続でベスト8に進出してます。やはり、少なくともJ1で実績と経験が無い指導者でなければ、若い年代の代表監督を務めるのは無理だと思います。ましてや、今回は他国よりも遥かに劣ると思われた戦力でありながら、見事な戦いぶりと完璧な成績で優勝したのだから、大いに評価すべきです。名前すら永久に口にしたくないあの2人の指導者によって台無しにされた今回の世代(特に1989年生まれの選手)は、今回の優勝で少しは失地回復が出来たと思います。

そして、今回の金メダル獲得で大いに刺激を受けたのは、間違いなく今大会に選出されなかった1軍扱いの選手でしょうね。なにせ、自分達よりも劣ると思われていた選手たちが、日本サッカー史に残る歴史的な快挙を成し遂げた訳ですから。1軍扱いの選手だって、現在ボルシア・ドルトムントに所属する香川真司を除けば、U-20W杯には全員出場しておらず、アジアの真剣勝負を含めた国際経験も著しく不足してます。自信を付けた今回のメンバーが所属チームでレギュラーを獲得して、1軍をうっちゃることだって十分にありえます。むしろ、関塚監督をいい意味で悩ませるぐらいに、選手間の競争が激しくなることは大いに歓迎したいです。今大会は最高の結果に終わりましたが、もちろんこれが最終目標ではありません。来年6月から始まるロンドン五輪予選こそが本当に重要なのです。そして、1人でも多くフル代表に選手を送り出すことです。なので、今大会を通じて世代全体を強化することに成功したのが最大の収穫だと思います。

それにしても、今日はサッカー以外にも痛快な勝利が多かったですね。福島千里が200mも優勝して日本人初の短距離2冠を達成。女子やり投げでは海老原有希が最終投擲で9年ぶりに日本新記録を叩き出して、28年ぶりに同種目で優勝。ソフトボールも初戦で苦杯を喫した台湾に逆転勝利で決勝進出。更にこれが本当に凄いのですが、女子ハンドボールが世界的な強豪の韓国に29-28で勝利して決勝進出し、韓国の大会6連覇を阻止しました(ソフトも女子ハンドも明日の決勝で優勝目指して頑張れ!!)。今大会は大苦戦続きの日本選手団ですが、今日だけは大いに喝采を上げました。


最後に、日本サッカー初のアベック金メダルを祝して、
いち日本国民としてホスト国に感謝の言葉を申し上げないといけませんね。

開催国なのに、実力を全く発揮出来ずにベスト16で負けた中国の皆様。
代わりに、毎試合日本を熱心に応援してくれてありがとうございましたww
貴国の下品な応援とあからさまに身内贔屓なレギュレーションのおかげで、
我が代表チームは心身ともに鍛えられました。


ARIGATO 謝謝 CHINA!



▼アジア大会の男子サッカーの歴代成績
                       優勝         2位         3位        日本の成績
第 1回(1951年)ニューデリー大会  インド        イラン        日本        3位
第 2回(1954年)マニラ大会       台湾        韓国        ビルマ       1次リーグ敗退
第 3回(1958年)東京大会        台湾        韓国        インドネシア    1次リーグ敗退
第 4回(1962年)ジャカルタ大会    インド         韓国        マレーシア     1次リーグ敗退
第 5回(1966年)バンコク大会     ビルマ       イラン        日本        3位
第 6回(1970年)バンコク大会     韓国&ビルマ             インド        4位
第 7回(1974年)テヘラン大会      イラン       イスラエル     マレーシア     1次リーグ敗退
第 8回(1978年)バンコク大会     韓国&北朝鮮             中国         1次リーグ敗退
第 9回(1982年)ニューデリー大会   イラク       クウェート     サウジアラビア  準々決勝敗退
第10回(1986年)ソウル大会      韓国        サウジアラビア  クウェート      1次リーグ敗退
第11回(1990年)北京大会        イラン       北朝鮮       韓国        準々決勝敗退
第12回(1994年)広島大会       ウズベキスタン  中国        クウェート      準々決勝敗退
第13回(1998年)バンコク大会     イラン       クウェート     中国        2次リーグ敗退
第14回(2002年)釜山大会       イラン       日本        韓国         2位
第15回(2006年)ドーハ大会      カタール      イラク        イラン        2次リーグ敗退
第16回(2010年)広州大会       日本        UAE         韓国        優勝

※アジア大会の男子サッカーの参加資格が23歳以下に変更したのは、2002年釜山大会からです。
  (それ以前の大会は年齢に関係の無いフル代表の大会でした)
  なお、日本は1998年バンコク大会からU-21代表チームで参加。
  1970年バンコク大会と1978年バンコク大会はいずれも同位優勝。



☆日本vsUAE戦のダイジェスト

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4 コメント

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ありがとうU-21日本代表! (まったり屋)
2010-11-26 22:43:46
猫なべさんこんばんは!

やってくれました我らがU-21日本代表。
大会前は “予選リーグ突破は何とかできそうだけど・・・?”、と不安を抱きつつ応援していたら、見事予選リーグを3連勝。

決勝トーナメント進出決定後は、“一試合でも多く試合経験を積んで欲しい・・・”、と彼らの国際経験不足を憂いていたところ、インド戦を5-0で圧勝。
更にオーバーエージを含めたA代表を多数擁するタイ、イラン、昨年のU-20W杯ベスト8のメンバーが主力のUAEを相手に厳しい猛攻を受けつつも決して引かず、堂々と真っ向勝負を挑み、そして勝った。

ユース世代の底力を示し、来年のロンドン五輪予選に向け大きな一歩を踏み出した彼らを誇りに思います。
ありがとうU-21日本代表!


今大会は、猫なべさんのブログ記事を読みながら観戦したお陰でとても代表戦を楽しめました。

来年は、ロンドン五輪予選だけではなくアジア杯やコパアメリカと国際大会目白押しの年!
来年も猫なべさんの記事を楽しみに日本代表を応援したいと思います。

素晴らしい記事をいつもありがとうございます(´▽`)ゝ
返信する
コメントありがとうございます (猫なべ)
2010-11-26 23:51:28
こんばんは、まったり屋さん

おそらく、岡田ジャパンのW杯ベスト16よりも、今回の関塚ジャパンのアジア大会優勝を予想する人の方が、
はるかに少ないと思われますね。
しかも、全勝優勝しただけでなく、6試合も完封勝利しましたから。

ちなみに、前回の北京五輪のアジア予選方式を踏襲して、シード国が順当に最終予選に勝ち上がった場合、
日本は実は第2シードになります。
第1シードになるのは、北京五輪で日本よりも成績が良かった、韓国、豪州、中国です。
つまり、韓国と豪州とは、来年9月から始まる最終予選でそれぞれ1/3の確率で同じ組に入る可能性があります。

なので、今後は日本が苦手にしているこの両国に勝てるようにしっかりと強化しなくてはいけません。
世代全体で競争を促してレベルアップする為にも、今回のメンバーは所属チームで
レギュラーを奪い取って経験を活かしてほしいです。
せっかく苦労して獲得した金メダルを輝かせるのも、曇らせるのも、彼らの今後の努力次第だと思います。

お褒めの言葉ありがとうございます。とても励みになります。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
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とりあえずよかったです (こーじ)
2010-11-27 00:27:06
 とりあえずよかったですね。
 これで2大会連続でU20の出場権を取れなかったトラウマからは、いくらか開放されるのではないでしょうか。

 ただし本当の強豪である韓国や北朝鮮と対戦してないので、この2カ国と戦ったらどうなるかというのも見たかったですけどイランやUAEら中東のしたたかなチーム相手にこういった勝ち方ができたのは収穫でしょう。

 2軍といわれるメンバーで優勝できたので、
一気に層が厚くなったのも大きいと思いますね。
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2010-11-27 00:59:14
こんばんは、こーじさん

実は、イランとUAEはロンドン五輪予選では意外にもシード国でないので、
抽選の結果次第では来年6月の2次予選で対戦する可能性があるので、今回勝った事は大きかったと思います。

やはり、半島の2チームと戦えなかったのは心残りですね。
特に今年の北朝鮮のユース年代はU-16とU-19の両方でアジアで優勝してます。
今大会も、南アW杯に出場した選手が10人も含んでおり、初戦で韓国に勝ちましたから。

半島のチームのように、激しいプレッシャーを掛けて背の高い前線にロングボールを放り込むチームに
いかに応戦できるのかが、今後の日本の課題だと思います。

それにしても、関塚監督もザッケローニ監督もスタートがあまりにも良すぎるだけに、
今後は世間から過大な期待が寄せられると思うのでかえって心配しますね。
とはいえ、今回と同様に、来年1月のアジア杯は選手選出の条件があまりよくないので、
フル代表のコーチを兼ねている関塚監督は今回の経験をフル代表に還元しなくてはいけませんね。
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