来年の世界陸上選手権(大邱=韓国)代表選考会を兼ねた福岡国際マラソンは5日、福岡市の平和台陸上競技場発着で行われ、北京五輪銀メダルで38歳のジャウアド・ガリブ(モロッコ)が2時間8分24秒で初優勝した。
同五輪長距離代表の松宮隆行(コニカミノルタ)が2時間10分54秒で日本勢トップの3位に入った。世界選手権代表内定条件の2時間9分29秒以内はクリアできなかったが有力候補となった。
一般参加の高田千春(JR東日本)が4位。順大時代に箱根駅伝で「山の神」と称された今井正人(トヨタ自動車九州)は5位だった。昨年の世界選手権代表の入船敏(カネボウ)は9位。北京五輪代表の尾方剛(中国電力)は途中棄権した。
ガリブはレース中盤から抜け出し、2位のドミトリー・サフロノフ(ロシア)に1分48秒差をつけてゴールした。(スタート時晴れ、気温15・7度、湿度49%、東南東の風2メートル)
〔共同通信 2010年12月5日の記事より〕
* * * * *
私は男子のマラソンをテレビで観る度に、あまり聞きたくない言葉が2つあります。まず1つ目は「箱根のスター」です。私はこの駅伝ルートのすぐ北隣の市に住んでいる人間です。地元民から批判される覚悟でハッキリ言いますけど、この駅伝は箱根のみしか通用しないランナーを量産しているのに過ぎず、マラソン&長距離の選手育成に役立っているとは全く思えません。なにせ、箱根駅伝で求められる走りとは、人に勝つことよりも、決められた距離を設定したタイムで確実に次の走者にタスキを運ぶ安定した走りですから。それに、箱根駅伝は関東ローカルのただの大学生の駅伝に過ぎないのに、マスゴミはこぞって実力未知数の箱根出身のランナーを不必要なまでに持ち上げては、多くのランナーを潰してます。日本のマラソンが最も強かった1992年バルセロナ五輪を境に、もはや箱根駅伝は「長距離選手の墓場」と化しております。
そして、今年も「箱根のスター」として扱われていたランナーが初マラソンを福岡で駆けました。その名は“山の神”こと今井正人。順天堂大学時代に箱根の山登りの5区(往路)で3年連続区間賞を獲得した選手です。ケニア人のペースメーカーが15km過ぎに突然暴走した今回のレース。思わぬアクシデントを機に、北京五輪銀メダルのジャウアド・ガリブ(モロッコ)らトップ選手が抜け出す中に、今井も含まれてました。だが、経験不足が祟ったのか、今井は35km付近で失速。ズルズルと順位を下げて結局5位に終わりました。今井の積極性は買えるが、やはり“箱根仕様”の走りにどっぷりと浸かっている印象を持ちました。つまり、急激なアップダウンの揺さぶられ、たとえ30kmまで喰らい付けたとしても余力が残ってないのでラストスパートで完敗する、いつもの箱根出身者の負けパターンです。まあ、今井は完走したので、昨年リタイヤした山梨学院大学出身のメクボ・ジョブ・モグスよりかは幾分マシでしたけどね。
そして、もう一つあまり聞きたくない言葉は「日本人1位」です。今大会は来年8月に韓国の大邸で開催される世界陸上の選考会を兼ねてました。今大会だけでなく近年の国内のマラソン大会は、日本人の有力選手は選考基準を満たす為に、海外招待選手に勝つことよりも、同胞を倒すことに血眼になりがちです。これは全く持って本末転倒な話です。日本人で誰が1位になるのかよりも、日本人のトップクラスの選手が海外の強豪とどれだけ戦えるのかを、基準にするのが本来あるべき姿のはずです。日本人選手を強化させる目的で海外からわざわざ有力選手を呼んでいるのに、こんな内向きな姿勢では無意味です。今回のレースで終盤粘った松宮隆行が、失速した今井を含めて脱落者を拾い上げて日本人最上位で3位入賞したけど、こんな走りでは高速化した世界のマラソンでは絶対に通用しないでしょう。なにせ、「サブ10」にまたも失敗した松宮は、選考基準から大きく下回るタイムでしたから。
種目は全く異なりますが、女子短距離で先の広州アジア大会で100m&200mで2冠を達成した福島千里は、今季のシーズンベストタイムだとそれぞれの種目で世界20位台になるそうです(1ヶ国3名とした場合です)。つまり、現在の福島の実力だと、16名が出場する世界大会の準決勝に進出するには、まだ届かないのです。ただ、それでも福島の出現によって、かつては世界はもちろんのこと、アジアですら全く通用しなかった日本女子短距離陣全体が著しくレベルアップを遂げてます。言うまでも無く、彼女達は日本で一番になることだけに満足してないからです。それに、黒人の天下である世界のスプリントにおいては、アジア王者の肩書きですら全く通用しないのです。つまり、日本女子短距離は井の中の蛙にならずに、常に世界を見据えて戦ってきたからこそ、やっとこの位置にまで辿りついたのです。まだおぼろげですが、世界16位以内のタイムを持つチームに与えられる400mリレーの五輪出場権を獲得することも、上手くすれば可能です。たしかに、世界的に見ればまだ羊の歩みですけど、少なくとも向上心の欠片の無い男子長距離陣よりかは応援のし甲斐があります。
今の日本男子マラソン&長距離陣は、今後の選考レースで実力的に世界に通用しないのであれば、無理して大会に選手を派遣する必要は無いと思います。浮いた予算を、女子短距離の強化の為に回した方がよっぽどマシです。それに箱根出身者は30㎞までしか通用しないのだから、いっそのことペースメーカーにでもなった方がいいのかもしれませんね(苦笑)。なにせ、箱根出身者は、決められた距離を設定したタイムで走らせる事に関しては極めて優れてますから。
今大会の詳細の記録
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「日本人1位」って何?
手段が目的へと変質した箱根駅伝
ついに出た! 国内マラソン初の2時間5分台
同五輪長距離代表の松宮隆行(コニカミノルタ)が2時間10分54秒で日本勢トップの3位に入った。世界選手権代表内定条件の2時間9分29秒以内はクリアできなかったが有力候補となった。
一般参加の高田千春(JR東日本)が4位。順大時代に箱根駅伝で「山の神」と称された今井正人(トヨタ自動車九州)は5位だった。昨年の世界選手権代表の入船敏(カネボウ)は9位。北京五輪代表の尾方剛(中国電力)は途中棄権した。
ガリブはレース中盤から抜け出し、2位のドミトリー・サフロノフ(ロシア)に1分48秒差をつけてゴールした。(スタート時晴れ、気温15・7度、湿度49%、東南東の風2メートル)
〔共同通信 2010年12月5日の記事より〕
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私は男子のマラソンをテレビで観る度に、あまり聞きたくない言葉が2つあります。まず1つ目は「箱根のスター」です。私はこの駅伝ルートのすぐ北隣の市に住んでいる人間です。地元民から批判される覚悟でハッキリ言いますけど、この駅伝は箱根のみしか通用しないランナーを量産しているのに過ぎず、マラソン&長距離の選手育成に役立っているとは全く思えません。なにせ、箱根駅伝で求められる走りとは、人に勝つことよりも、決められた距離を設定したタイムで確実に次の走者にタスキを運ぶ安定した走りですから。それに、箱根駅伝は関東ローカルのただの大学生の駅伝に過ぎないのに、マスゴミはこぞって実力未知数の箱根出身のランナーを不必要なまでに持ち上げては、多くのランナーを潰してます。日本のマラソンが最も強かった1992年バルセロナ五輪を境に、もはや箱根駅伝は「長距離選手の墓場」と化しております。
そして、今年も「箱根のスター」として扱われていたランナーが初マラソンを福岡で駆けました。その名は“山の神”こと今井正人。順天堂大学時代に箱根の山登りの5区(往路)で3年連続区間賞を獲得した選手です。ケニア人のペースメーカーが15km過ぎに突然暴走した今回のレース。思わぬアクシデントを機に、北京五輪銀メダルのジャウアド・ガリブ(モロッコ)らトップ選手が抜け出す中に、今井も含まれてました。だが、経験不足が祟ったのか、今井は35km付近で失速。ズルズルと順位を下げて結局5位に終わりました。今井の積極性は買えるが、やはり“箱根仕様”の走りにどっぷりと浸かっている印象を持ちました。つまり、急激なアップダウンの揺さぶられ、たとえ30kmまで喰らい付けたとしても余力が残ってないのでラストスパートで完敗する、いつもの箱根出身者の負けパターンです。まあ、今井は完走したので、昨年リタイヤした山梨学院大学出身のメクボ・ジョブ・モグスよりかは幾分マシでしたけどね。
そして、もう一つあまり聞きたくない言葉は「日本人1位」です。今大会は来年8月に韓国の大邸で開催される世界陸上の選考会を兼ねてました。今大会だけでなく近年の国内のマラソン大会は、日本人の有力選手は選考基準を満たす為に、海外招待選手に勝つことよりも、同胞を倒すことに血眼になりがちです。これは全く持って本末転倒な話です。日本人で誰が1位になるのかよりも、日本人のトップクラスの選手が海外の強豪とどれだけ戦えるのかを、基準にするのが本来あるべき姿のはずです。日本人選手を強化させる目的で海外からわざわざ有力選手を呼んでいるのに、こんな内向きな姿勢では無意味です。今回のレースで終盤粘った松宮隆行が、失速した今井を含めて脱落者を拾い上げて日本人最上位で3位入賞したけど、こんな走りでは高速化した世界のマラソンでは絶対に通用しないでしょう。なにせ、「サブ10」にまたも失敗した松宮は、選考基準から大きく下回るタイムでしたから。
種目は全く異なりますが、女子短距離で先の広州アジア大会で100m&200mで2冠を達成した福島千里は、今季のシーズンベストタイムだとそれぞれの種目で世界20位台になるそうです(1ヶ国3名とした場合です)。つまり、現在の福島の実力だと、16名が出場する世界大会の準決勝に進出するには、まだ届かないのです。ただ、それでも福島の出現によって、かつては世界はもちろんのこと、アジアですら全く通用しなかった日本女子短距離陣全体が著しくレベルアップを遂げてます。言うまでも無く、彼女達は日本で一番になることだけに満足してないからです。それに、黒人の天下である世界のスプリントにおいては、アジア王者の肩書きですら全く通用しないのです。つまり、日本女子短距離は井の中の蛙にならずに、常に世界を見据えて戦ってきたからこそ、やっとこの位置にまで辿りついたのです。まだおぼろげですが、世界16位以内のタイムを持つチームに与えられる400mリレーの五輪出場権を獲得することも、上手くすれば可能です。たしかに、世界的に見ればまだ羊の歩みですけど、少なくとも向上心の欠片の無い男子長距離陣よりかは応援のし甲斐があります。
今の日本男子マラソン&長距離陣は、今後の選考レースで実力的に世界に通用しないのであれば、無理して大会に選手を派遣する必要は無いと思います。浮いた予算を、女子短距離の強化の為に回した方がよっぽどマシです。それに箱根出身者は30㎞までしか通用しないのだから、いっそのことペースメーカーにでもなった方がいいのかもしれませんね(苦笑)。なにせ、箱根出身者は、決められた距離を設定したタイムで走らせる事に関しては極めて優れてますから。
今大会の詳細の記録
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手段が目的へと変質した箱根駅伝
ついに出た! 国内マラソン初の2時間5分台
一連の記事、まだ読みきれず、理解できないうちに、次々アップ!
猫なべさまの「のんびり」ってどの位のことをいうんだろう?と、いつも足あと画面を見て思ってます。笑
ひとつ質問です。
>箱根出身者は、決められた距離を設定したタイムで走らせる事に関しては極めて優れてますから。
というのは、そう決められているってわけではないですよね?いや、決められているのかな?
そういうものなのですか?それで、あれだけ順位が変わったりするのは、決められたタイムで走れなかったりする人がいたり、決められたタイムよりも速く走れる人がいるからですか?
ごめんなさい。
なんだか、頭がこんがらがっちゃって・・・。汗
世界一になるかもしれませんね。
間違ってもこの日の暴走ペースメーカーのようなマネはしないでしょう。
私のブログにも記しましたけど松宮はペースアップした途端に付いて行けず状態ですし、
今井は30キロまで男ですからね。
瀬古利彦は箱根を余興で走っていたと言ってますけど、実際に夏場にトラックでスピードを冬場にロードでスタミナを鍛えるのに対し駅伝は中途半端だから余興にいいという事でした。
そろそろワンジルの‘駅伝はマラソンの強化にならない’というコメントを真摯に受け止めたチームが1つぐらい出てこないかとは思いますけど中国電力勢もダメですしお先真っ暗ですね。
こういうのが女子にも波及している気がします。
そういえば野口みずき以来自分から仕掛けられる選手がいませんね。
駅伝は途中棄権すると順位が無効になり、箱根の場合だと翌年は自動的に予選会に回らなければならず、
後輩に迷惑を掛ける事になります。
なので、他校のランナーと競り合うことよりも、次の走者に母校の襷を確実に繋ぐことが最も重要となります。
如何せん、箱根は総走行距離が約200kmを超えるので、レースの進行とともに各校間の差が開き、
次第に一人だけで走る状態になります。
自分のペースを乱さない為にも、各区間毎に予め設定したタイムを目指した安定した走りとなります。
ただ、この走り方だと急激なペースアップなどの変化に極めて弱く、人との駆け引きも身につかないので、
いざトラックやマラソンで戦うと全く勝負にならないのです。
また、順位が目まぐるしく変動するのは、往路の初めの方の区間と、特殊な区間である山登りの5区ですね。
あと新興大学が往路の最初の方の区間で活躍するのは、入学願書の出願時期に近いので大学名を宣伝する為に、
差がつかない往路を重視しているのが理由ですね。
最終的には、選手層が厚い伝統校が順位で上回りますけど。
箱根駅伝はアマチュアスポーツのように思えますけど、実際は色々と利害が絡んでます。
私が小学生の時のような「地元の風物詩」だった時代にはもう戻れないと思いますね。
「巨人の星」のその回は覚えてますよ(笑)。
星飛雄馬が2軍の試合で登板したスコアブックを左門豊作が探し出し、
致命的な欠陥である球質の軽さを左門に見抜かれるんですよね。
欠陥に気付かなかった星は、大洋との開幕戦で川上監督の指示に背いてあえて左門と勝負するが、
逆にホームランを打たれてしまい、再び2軍行きを命じられたと記憶してます。
星は欠陥を克服する為に、山篭りや禅寺へ修行して大リーグボール1号開発へのヒントを掴みます。
翻って日本の男子マラソン陣は、十数年前から駅伝の弊害を分かっているのにも関わらず、
見て見ぬふりをして全く克服しようとすらしません。
惰性に流されているので、末期症状ですね。
更に悪いことに、近年の景気悪化の影響で各企業は個人で戦うマラソンよりも
企業名を大々的に宣伝できる「ニューイヤー駅伝」の方を重視させている傾向があります。
北京以降不振に喘いでいる女子も、男子と同様に駅伝重視の気配を感じます。
まだ男子ほど高速化してない女子は、いま手を打たないと、将来取り返しのつかないことになりますね。
「新・山の神」と称される柏原も、今井と同じ道を辿るような気がしてならないですね。
とてもわかりやすい説明でした。
しかも、テレビや新聞ではなかなかわからない、側面があぶりだされていて、
本当に興味深く読ませていただきました。
襷をつなぐ→一人で走る→予定したタイム
というからくりが、理解できました。
また、新興大学が往路というのも、非常に現実的な理由で明解です。
こーじさんのコメントの瀬古選手が駅伝を余興と言っていたという話も、初めて聞きましたが、本当に選手にとっても余興にした方がいい、お楽しみ会みたいなものでいい、という気になってきました。
「新・山の神」の柏原くんも、どうなるんでしょうか?心配ですね。
ハッキリ言って、箱根駅伝は「大学最後の思い出作り」ぐらいのスタンスでよいと思いますね。
過熱化した現在は、高校生の長距離ランキング50位以内に入っている殆どの選手が、関東の大学に進学します。
なので、箱根を走ること自体が同年代のエリートの証だと思います。
ただし、大学を卒業してから社会人に進んで競技生活を送れるのは、その中の本の一握りの優れた選手だけです。
なので、圧倒的に多数の選手が箱根が最後のレースとなります。
箱根はそういう選手たちにとっての一生の思い出の場であってほしいと、いち地元民としてつくづく思いますね。
柏原は、いくら山登りでごぼう抜きする活躍しても、マラソンにはあんなコースなんてないのですから、
平地(つまりトラックやロード)で活躍してほしいですね。
今のままだと、「陸に上がった河童」になりかねないですね。