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うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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FIFAが国際試合日の削減を検討へ

2012年03月07日 | サッカー(全般)
国際サッカー連盟(FIFA)は5日、代表戦を開催する国際Aマッチデーについて各大陸連盟や各国リーグ、選手、クラブの代表者と協議し、2015~18年の日程から代表戦の数を減らす案をまとめた。29日からのFIFA理事会で論議する。
 欧州の各クラブから代表戦削減を求める声が上がり、欧州連盟が原案を提出していた。5日まとまった案では、毎年3、9、10、11月と奇数年の6月に2試合ずつ、2年間合計で18試合を行う計画となった。

〔時事通信 2012年3月6日の記事より〕

国際サッカー連盟が定めた2010~2014年までの国際試合日(IMD)


                           *  *  *  *  *


今回の議論の俎上に上った「国際試合日(IMD)の削減」は、いつか実行されるだろうと思ってましたけど、ついに現実になりそうですね。クラブが主流の現在の世界のサッカーは、非常に過密日程になっております。なにせ、選手の給料を払っているのはクラブですから、代表戦で怪我でもされたら莫大な損失を被ります。それに、代表戦が終わって、選手がクラブに戻っても、移動や時差に伴う疲労の影響で、少なからぬ体調悪化を招きます。選手側からしても、せっかく獲得したレギュラーの座をみすみす手放す可能性があります。クラブとしては、なるべくなら代表戦には選手を貸したくないのが偽らざる本音です。

今回、国際サッカー連盟(FIFA)は、先日欧州サッカー連盟(UEFA)が合意した欧州クラブ協会(ECA)の案に従い、IMDの改善案を発表しました。現在IMDは年間7~15日に設定されてます。しかし、FIFAの改善案だと、2015年以降のIMDは2年間の合計で最大18試合に削減される方針です。毎年3・9・10・11月に各2試合、隔年(奇数年)で6月に2試合を実施する予定です。IMDは各月とも2試合に設定されているので、おそらく試合開始の4~5日前から協会が選手を招集することが可能な「公式戦用」だと思われます。また、欧州各国のリーグ戦開幕直前の時期にあたる8月のIMDは廃止となる見込みです。同じく、過密日程の真っただ中となる2月のIMDも廃止予定です。

ちなみに、当初ECAは、「IMDを6日間削減」と「6月のIMDの設定を除外」を要求してました。しかし、FIFAは試合削減により収入が減少することを懸念して、IMDの改善に及び腰な姿勢でした。だが、これに反発したECAは、今月に予定されていたFIFAとの会談をボイコットすることを仄めかしました。さすがに、ECAの案はかなり無理があるので丸呑みはしませんでしたが、圧力に屈したFIFAは妥協を余儀なくされ、IMDの削減をするに至った経緯があります。いかに、現在の世界のサッカー界は、欧州のビッグクラブ中心に回っているのかが良く分ります。

もし、今回の改善案が決定した場合、欧州のクラブでプレーする選手が年々増加しつつある日本にも、メリットとデメリットの両面を含めて影響があります。最大のメリットは、2月に公式戦を組み込まれないことです。先のW杯アジア3次予選のウズベキスタン戦を振り返って分るように、春秋制を採用するJリーグは、2月は開幕前なので、国内組の選手は本調子から程遠く、シーズン真っ最中の海外組も移動と時差の影響で疲労を抱えた状態です。しかも、2月のIMDは「親善試合用」なので、招集期間が僅か48時間前からとなり、選手間の連係を深めることすら困難です。これらの理由が、いつも日本が2月のW杯予選で大苦戦する要因となってます。日本は「地理上のハンディ」はどうしても埋められないが、公式戦用のIMDでW杯予選を実施すれば、少しは改善されるでしょう。

一方、デメリットは、代表戦の対戦相手の質が落ちることが、まず1つ目に挙げられます。早い話が、アジア勢とばかり戦うことです。ただでさえ、IMDの絶対数が少なくなるのに、W杯予選やアジア杯予選の公式戦を優先的に組み込むので、予選開始の早期化及び長期化は避けられないです。アジア勢とはW杯の1次リーグでは絶対に戦わないので、本番を見据えた強化にはあまり繋がらないです。W杯で好成績を収める為には、アジア杯では予選免除される3位以内に必ず入って、格下相手に6試合も戦う“年季奉公”は避けなくてはなりません。また、ベストメンバーで臨める親善試合は今よりも確実に減ると同時に、強豪国との対戦も難しくなります。もちろん、ベストメンバーではない親善試合であれば、Jリーグの協力さえあれば、ある程度の試合数の確保は可能です。しかし、本来の実力から程遠い相手ばかりでは、控え選手の連係を深めることは出来ても、チームの強化には全くならないです。

そして、2つ目は、協会の収入の減少です。試合数の減少は、収入減だけでなく、契約するスポンサー企業の露出する機会が必然的に減ることも意味します。ちなみに、アジアの公式戦(W杯アジア最終予選&プレーオフ、アジア杯本大会、五輪アジア最終予選)の放送権料と広告収入は、アジアサッカー連盟(AFC)の取り分の扱いです。試合を開催する国の取り分は入場料収入ぐらいなので、公式戦の開催はたいして旨みが無く、親善試合の方が遥かに実入りが良いのです(なお、W杯&五輪のアジア最終予選以下のラウンドとアジア杯予選だと、放送権料と広告収入は試合を開催する各国協会の取り分です)。国内開催の親善試合は、代表チームの強化の面で何かと批判は多いです。しかし、そこで得られる収入が、なでしこジャパン&男女各年代の代表チームの活動や、普及&育成事業を資金面で支えている側面もあります。もちろん、商売優先で乱発するのは問題だけどね。

欧州と違って、クラブよりも代表チームの人気が高い日本にとっては、今後は代表戦のマッチーメイクでより難しい状況となることが予想されます。日本のサッカー界は代表チームへの依存度が高過ぎる非常に脆い構造なだけに、協会は今から真剣に対策を打ち出す必要が求められます。


〔追記1〕
国際サッカー連盟(FIFA)は29、30の両日に開いた理事会で、代表戦を開催する2015~18年の国際Aマッチデーについて、各国・地域が原則として2年間で18試合を行うことを決めた。毎年3、9、10、11月と、奇数年の6月に2試合ずつ。2016年は、欧州連盟に加盟する国・地域を除いて6月にも2試合を行う。
(2012年3月31日の時事通信の記事より抜粋)

〔追記2〕
2013年3月、国際サッカー連盟(FIFA)は2013~2018年の国際試合日を正式に発表しました(→詳細はこちら)。



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