サッカーの女子ワールドカップ(W杯)予選を兼ねた女子アジア・カップ第6日は24日、中国四川省成都市で1次リーグA組の最終戦2試合を行い、既に準決勝進出を決めていた日本は北朝鮮を2-1で下し、3戦全勝の勝ち点9でA組1位となった。来年のW杯ドイツ大会の出場権を懸けて27日の準決勝でB組2位のオーストラリアと戦う。
日本は前半にFW安藤(デュイスブルク)がPKで先制し、FW永里(ポツダム)が追加した。相手の反撃を後半の1点に抑えて逃げ切った。
大会は参加8チームが2組に分かれて1次リーグを戦い、各組上位2チームが準決勝に進出。3位までがW杯出場権を獲得する。
もう1試合は、ともに2敗のミャンマーとタイが対戦した。
〔共同通信 2010年5月24日の記事より〕
アジアサッカー連盟の女子アジア杯の関連ページ
日本サッカー協会の女子アジア杯の関連ページ
今大会の日本女子代表23名(日本サッカー協会のHPより)
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4年前の借りを返す時が来た!!
FIFAランキングがともに5位に位置する日本と北朝鮮。お互いに1次リーグを2連勝した為、直接対決となった最終戦を待たずに、既に準決勝進出を決めてました。ただ、今回は消化試合だったとはいえ、準決勝の対戦カードを決める重要な一戦でした。得失点差で上回る日本が、引き分け以上で1次リーグA組を1位通過できる状況でした。
一方、1日先に日程を終えたB組は、1位が中国、2位が豪州の順で予選を通過。順位だけで判断すると開催国の中国が強そうに見えますが、実際のところはこの組は豪州が好調です。豪州はターンオーバー制を有効に駆使し、2戦目の韓国戦では3-1で完勝。その為、中国との最終戦は主力を温存して負けたので、ダメージは大して残りませんでした。対照的に中国は、初戦の韓国戦は分の悪い内容で辛うじてスコアレスドロー。この結果が響き、豪州戦では主力を投入せざるを得ない状況に陥り、1-0の勝利と引き換えに疲労を残しました。
なので、日本としては、直接W杯の出場権を賭けた準決勝では中国と対戦するのが望ましいと思われてました。通算対戦成績では28戦6勝16敗6分と大幅に負け越してますが、最近5年間は日本の方が上回り、比較的に相性のよい相手でした。2月の東アジア選手権でも2-0と勝利してますし、敵地においても一昨年の東アジア選手権(○3-0)と北京五輪(○2-0)でスコア以上に完勝を収めてます。豪州(通算対戦成績16戦6勝4敗6分)には最近4連勝してますが、体格がとても優れた白人のチームよりかは中国の方が組し易いと思われました。
このような状況下で行われた今回の北朝鮮との一戦。過去の通算対戦成績が14戦3勝9敗2分(PK戦は引き分け扱い)の北朝鮮は、日本にとって文字通りの天敵です。ただ、今回の北朝鮮は、澤穂希とアジア最優秀選手の座を毎年争うリ・クムスクが不在など、大幅に若返っておりました。それどころか、今大会には規定より2人少ない21人で参加するなど、どこかチグハグなメンバー構成でした。ただし、北朝鮮は若い世代は世界的な強豪国です。U-20W杯では4年前に優勝し、一昨年は準優勝。U-17W杯でも一昨年に優勝してます。潜在能力を秘めていたチームなので、決して侮れない相手でした。
しかし、日本はディフェンディングチャンピオンを相手に2-1で勝利。後半に押されて失点を喰らったのは課題でしたが、試合は全体的に日本のペースでした。ただ、結果以上に驚いたのが、その戦い方です。北朝鮮も主力を温存しましたが、日本もエースの澤をはじめ主力を何人か休ませ、残った主力と控え選手を組み合わせて戦いました。さらに、代表チームに合流して間もない海外組の安藤梢と永里優季を慣らし運転させてます。しかも、2人とも得点まで挙げてます。やはり、海外組が入ると戦力が著しくアップします。これは日本協会の肝いりで創設した「海外強化指定制度」のメリットが早くも現れたのでしょうか。日本はダメージを極力残さずに、選手のテストとライバルの戦力の把握も出来たので、意義のある勝利となりました。
今回のなでしこジャパンの状況を例えるなら、昨年2009年3月に米国で行われた野球のWBCの2次ラウンド1位決定戦の日韓戦と似たような感じでした(→詳細はこちら)。あの一戦も消化試合でしたけど、先の戦いを見据えて準備をしながらの戦いでした。選手の体調を考慮して主力を温存し、まるで「控え選手のコンテスト」の様相を呈してました。また、準決勝の対戦相手を決める一戦でもありました。そういえば、「準決勝では、米国を避けてベネズエラと戦いたいから、韓国はワザと日本に負けてやった」と韓国人は負け惜しみを言ってましたね(苦笑)。
今回のなでしこジャパンも、W杯出場権を念頭に置けば2位通過の方がよかったのかもしれません。ただ、長期的な視点に立てば、日本女子は「世界の頂点を制する」ことを目標に掲げているので、絶対にアジア王者に君臨する必要があります。なので、あからさまにワザと負けるような真似をしたら、さすがにチームの士気はガタ落ちしたでしょう。チームを預かる佐々木則夫監督にとっては難しい選択でしたが、先の戦いを見据えて準備をしながら、選手の能力に賭けたのでしょう。
「マチルダス」の愛称を持つ豪州には、日本は因縁があります。4年前の2006年7月に行われた前々回のアジア杯では、日本は中国に9年ぶりの勝利を収めたのをはじめ、1次リーグを3戦全勝で1位通過しました。しかし、準決勝では、体格とフィジカルに勝る開催国の豪州に0-2で完敗を喫します(ちなみに、この試合の会場は、2000年シドニー五輪の準々決勝で日本男子が米国にPK戦で敗れたハインドマーシュ・スタジアム)。その後、日本は北朝鮮との3位決定戦でも2-3で敗れてしまい、この大会でW杯出場権を得られず、翌2007年3月のメキシコとの大陸間プレーオフに回ることを余儀なくされた苦い経験があります。
それだけに、4年前と似たような状況となった今回は、是非とも豪州にあの時のリベンジを果たしたいところです。ただ、6大会連続のW杯出場権獲得は、今の日本にとっては最低限のノルマに過ぎないです。ターンオーバー制を用いて力を抑えて戦ったのは、言うまでも無くアジア初制覇を成し遂げる為です。だからこそ、重要な関門である準決勝は絶対に落とす訳にはいきません。それだけに、本当の修羅場となる今後の戦いに注目が集まります。
世界の高みを目指すなでしこジャパンには頑張ってほしいです。
とても情けない男子の分も含めて(苦笑)。
☆日本vs北朝鮮の前半のダイジェスト(2010年5月24日 @中国・成都)
☆日本vs北朝鮮の後半のダイジェスト(2010年5月24日 @中国・成都)
☆日本が準決勝で戦う豪州の対中国戦のダイジェスト(2010年5月23日 @中国・成都)
日本は前半にFW安藤(デュイスブルク)がPKで先制し、FW永里(ポツダム)が追加した。相手の反撃を後半の1点に抑えて逃げ切った。
大会は参加8チームが2組に分かれて1次リーグを戦い、各組上位2チームが準決勝に進出。3位までがW杯出場権を獲得する。
もう1試合は、ともに2敗のミャンマーとタイが対戦した。
〔共同通信 2010年5月24日の記事より〕
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今大会の日本女子代表23名(日本サッカー協会のHPより)
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4年前の借りを返す時が来た!!
FIFAランキングがともに5位に位置する日本と北朝鮮。お互いに1次リーグを2連勝した為、直接対決となった最終戦を待たずに、既に準決勝進出を決めてました。ただ、今回は消化試合だったとはいえ、準決勝の対戦カードを決める重要な一戦でした。得失点差で上回る日本が、引き分け以上で1次リーグA組を1位通過できる状況でした。
一方、1日先に日程を終えたB組は、1位が中国、2位が豪州の順で予選を通過。順位だけで判断すると開催国の中国が強そうに見えますが、実際のところはこの組は豪州が好調です。豪州はターンオーバー制を有効に駆使し、2戦目の韓国戦では3-1で完勝。その為、中国との最終戦は主力を温存して負けたので、ダメージは大して残りませんでした。対照的に中国は、初戦の韓国戦は分の悪い内容で辛うじてスコアレスドロー。この結果が響き、豪州戦では主力を投入せざるを得ない状況に陥り、1-0の勝利と引き換えに疲労を残しました。
なので、日本としては、直接W杯の出場権を賭けた準決勝では中国と対戦するのが望ましいと思われてました。通算対戦成績では28戦6勝16敗6分と大幅に負け越してますが、最近5年間は日本の方が上回り、比較的に相性のよい相手でした。2月の東アジア選手権でも2-0と勝利してますし、敵地においても一昨年の東アジア選手権(○3-0)と北京五輪(○2-0)でスコア以上に完勝を収めてます。豪州(通算対戦成績16戦6勝4敗6分)には最近4連勝してますが、体格がとても優れた白人のチームよりかは中国の方が組し易いと思われました。
このような状況下で行われた今回の北朝鮮との一戦。過去の通算対戦成績が14戦3勝9敗2分(PK戦は引き分け扱い)の北朝鮮は、日本にとって文字通りの天敵です。ただ、今回の北朝鮮は、澤穂希とアジア最優秀選手の座を毎年争うリ・クムスクが不在など、大幅に若返っておりました。それどころか、今大会には規定より2人少ない21人で参加するなど、どこかチグハグなメンバー構成でした。ただし、北朝鮮は若い世代は世界的な強豪国です。U-20W杯では4年前に優勝し、一昨年は準優勝。U-17W杯でも一昨年に優勝してます。潜在能力を秘めていたチームなので、決して侮れない相手でした。
しかし、日本はディフェンディングチャンピオンを相手に2-1で勝利。後半に押されて失点を喰らったのは課題でしたが、試合は全体的に日本のペースでした。ただ、結果以上に驚いたのが、その戦い方です。北朝鮮も主力を温存しましたが、日本もエースの澤をはじめ主力を何人か休ませ、残った主力と控え選手を組み合わせて戦いました。さらに、代表チームに合流して間もない海外組の安藤梢と永里優季を慣らし運転させてます。しかも、2人とも得点まで挙げてます。やはり、海外組が入ると戦力が著しくアップします。これは日本協会の肝いりで創設した「海外強化指定制度」のメリットが早くも現れたのでしょうか。日本はダメージを極力残さずに、選手のテストとライバルの戦力の把握も出来たので、意義のある勝利となりました。
今回のなでしこジャパンの状況を例えるなら、昨年2009年3月に米国で行われた野球のWBCの2次ラウンド1位決定戦の日韓戦と似たような感じでした(→詳細はこちら)。あの一戦も消化試合でしたけど、先の戦いを見据えて準備をしながらの戦いでした。選手の体調を考慮して主力を温存し、まるで「控え選手のコンテスト」の様相を呈してました。また、準決勝の対戦相手を決める一戦でもありました。そういえば、「準決勝では、米国を避けてベネズエラと戦いたいから、韓国はワザと日本に負けてやった」と韓国人は負け惜しみを言ってましたね(苦笑)。
今回のなでしこジャパンも、W杯出場権を念頭に置けば2位通過の方がよかったのかもしれません。ただ、長期的な視点に立てば、日本女子は「世界の頂点を制する」ことを目標に掲げているので、絶対にアジア王者に君臨する必要があります。なので、あからさまにワザと負けるような真似をしたら、さすがにチームの士気はガタ落ちしたでしょう。チームを預かる佐々木則夫監督にとっては難しい選択でしたが、先の戦いを見据えて準備をしながら、選手の能力に賭けたのでしょう。
「マチルダス」の愛称を持つ豪州には、日本は因縁があります。4年前の2006年7月に行われた前々回のアジア杯では、日本は中国に9年ぶりの勝利を収めたのをはじめ、1次リーグを3戦全勝で1位通過しました。しかし、準決勝では、体格とフィジカルに勝る開催国の豪州に0-2で完敗を喫します(ちなみに、この試合の会場は、2000年シドニー五輪の準々決勝で日本男子が米国にPK戦で敗れたハインドマーシュ・スタジアム)。その後、日本は北朝鮮との3位決定戦でも2-3で敗れてしまい、この大会でW杯出場権を得られず、翌2007年3月のメキシコとの大陸間プレーオフに回ることを余儀なくされた苦い経験があります。
それだけに、4年前と似たような状況となった今回は、是非とも豪州にあの時のリベンジを果たしたいところです。ただ、6大会連続のW杯出場権獲得は、今の日本にとっては最低限のノルマに過ぎないです。ターンオーバー制を用いて力を抑えて戦ったのは、言うまでも無くアジア初制覇を成し遂げる為です。だからこそ、重要な関門である準決勝は絶対に落とす訳にはいきません。それだけに、本当の修羅場となる今後の戦いに注目が集まります。
世界の高みを目指すなでしこジャパンには頑張ってほしいです。
とても情けない男子の分も含めて(苦笑)。
☆日本vs北朝鮮の前半のダイジェスト(2010年5月24日 @中国・成都)
☆日本vs北朝鮮の後半のダイジェスト(2010年5月24日 @中国・成都)
☆日本が準決勝で戦う豪州の対中国戦のダイジェスト(2010年5月23日 @中国・成都)