うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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やっぱり・・・ 0-43でイングランドに大敗!

2009年06月06日 | 団体球技(屋外)
「U-20世界ラグビー選手権、イングランド43-0日本」(5日、秩父宮)
開幕戦8試合が行われ、1次リーグB組は日本が前回準優勝のイングランドに6トライを許し、0-43と完封負けを喫した。サモアは終了間際にSOウイルソンの劇的DGでスコットランドを17-14で下した。A組は前回優勝のニュージーランドがウルグアイを75-0で退け、D組ではオーストラリアがカナダを86-0で圧倒。C組は今年のU-20の6カ国対抗覇者フランスが43-13でイタリアに快勝した。

〔スポーツナビ 2009年6月6日より抜粋〕


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これぞまさに、プロとアマの差です。

全選手がプロフェッショナルのイングランド代表に対して、全員が学生の日本代表。当然勝負になるはずがありません。予想どおりの大敗だったので、全くショックは無いですけど、せめてPGで3点ぐらいは取ってほしかったです。体格差はもちろんの事ながら、個々の力量差は歴然。健闘できたのは、低く速いタックルが機能した前半10分過ぎまで。それ以降は、終始分厚い攻撃を仕掛けるイングランドペース。日本もチャンスは無かった訳ではありませんが、相手の激しいプレッシャーに対して、肝心のところでミスを連発して自滅する姿は、まさに日頃の試合経験の無さの表れです。おそらくこの日出場した選手は、自身のキャリアで最強の相手と戦ったはずです。だけど、この経験を活かして学ぶ機会すら十分に無いのが、現在の日本のラグビー界の悲しい現実です。

日本の団体球技の中で、社会人チーム主体による全国規模のリーグの設立年が最も遅いのは、おそらくラグビーだと思います。それまでは、トーナメントが主体でした。2003年になって、ようやく社会人の強豪が集まったトップリーグが設立されて、念願の全国リーグが発足しました。それ以前の社会人は、各地域のリーグ戦を行った後に全国社会人選手権を経て、大学日本一のチームと日本選手権を戦う形式でした。日本のスポーツの当たり前の現象なのですが、段々と時が経つに連れて社会人のレベルアップに伴って、大学との実力格差が年々開きつつありました。だが、人気の上では大学の方が社会人より圧倒している事が、結果的にラグビー界の改革を遅らせました。結果が見えているのに、日本選手権の形式を長年変更しないで放置していたのは、学生の人気に胡坐を掻いていた証拠です。

トーナメントだと大会が盛り上がり、興行的にも旨みはあります。だが、1回でも負ければ、そのチームはシーズンが終わるので、チームとして十分な試合数を積む事が出来ません。ましてや、目先の結果に囚われがちになるので、多様な戦術を駆使する事が出来ず、主力選手は試合過多になりがちです。逆に控え選手は、試合の出場すら十分にこなせないです。リーグ戦なら、各チームとも一定数の同じ数の試合をこなすので、主力だけではシーズンを乗り切れないので、控えの選手にも経験を積ませる必要があります。また、チームの戦術を全ての選手に浸透させる必要があり、あらゆる事態を想定した訓練をするので、練習の質も必然と高くなります。そして、リーグ戦の最大のメリットは、国内の強豪チーム同士の対戦が、定期的に出来る事です。強豪同士が対戦することによって鎬を削り、お互いが高めあう事により、結果的にチームも選手個人も強化されます。トーナメントだと、1度でも負けると対戦する機会が無いですから。

日本の社会人は、トップリーグが出来てようやく当たり前の環境が出来ました。かつて海外の代表クラスだった名選手も参戦してます。ただ、基本的に1回戦総当りなので、試合数が十分に多いとはいえません。せめて2回戦総当りにして、国内の強豪同士の対戦回数を増やして、質の高い試合を追及してレベルアップを図って欲しいです。だが、大学リーグとなると、今も昔もシステムは大して変わらない様な気がします。基本的に、各地域でリーグ戦を行った後に、上位が全国大学選手権に進出して日本一を決定します。大学なので、全国リーグの設立は選手の学業や日程や会場の確保や費用面などで、さすがに無理です。しかし、問題なのは全国大学選手権をトーナメント方式で行っているので、全国の強豪同士が対戦する回数が少ない事が、著しく若手選手の強化を妨げてます。

基本的に、16チームのトーナメント方式で対戦しますが、これだと決勝進出チームでさえ4試合しか戦えません。そして、必ずしも強豪同士が対戦するとは限らないので、レベルアップを図ることも容易ではないです。大学ラグビーを改革する為、2003年度の大会だけ、試合方式を一部変更した事があります。16チームによるトーナメント方式による1回戦の勝ち上がり8チームが、2組×4チームずつに分かれて総当りの2次リーグ戦(プール戦)を実施。両組の上位2チームずつがタスキ掛けで決勝トーナメントを実施したことがありました。これだと2次リーグ戦に進出した8チームは、最低でも全国の強豪と4試合戦う事が出来ます。だが、大学の授業の日程やセンター試験などの学業上の理由との絡みなどもあって、この年限りで元に戻されました。

大学リーグの形式も、かつての関東の対抗戦グループのような、伝統校を極端に優遇した歪なシステムではありませんが、現在の関東大学対抗戦グループは、早慶明&帝京の4強とそれ以外の4弱の状態です。チーム間の実力の強弱がハッキリしているので、4強同士以外のチームとの対戦だと、決して有効な強化になるとは言えないでしょう。そして大学1・2年生だと、実力や体格面もあって上級生を押しのけてレギュラーを張るような選手はごく稀です。かといって学年別のリーグ戦もありませんので、試合経験の不足は目に見えてます。日本で最も高いレベルといわれる大学リーグ戦でさえ、この有様です。なので、日本のU-20世代は、チーム全体の試合数の少なさやリーグ戦の質だけでなく、選手の出場機会の少なさも育成の伸び悩みに追い討ちを掛けてます。

今回のU-20世界選手権で、ラグビーの母国でいち早くプロ化したイングランドを相手に、無得点43失点の無残な結果はある意味当然の結果です。だが、体格や力量差だけでなく両国の競技環境を考慮すれば、43失点で抑えたのはむしろ健闘したと言えるのかもしれません(苦笑)。ただ、9120人の観客が雨の中、せっかく応援に来ていたのだから、せめて意地を見せて欲しかったです。今大会で予選プールで最下位になると、来年から地域予選に陥落して、U-20世界選手権の下部大会であるジュニ・ワールド・トロフィーを目指して戦わなくてはいけません。今大会で惨敗したら、2015年or2019年W杯で世界を相手に戦えない事を意味します。ただでさえ、時期尚早と批判が根強いW杯開催の招致にも、確実に悪い影響を与えると思いますし、開催の招致を名乗り上げる事自体が、世界中から嘲笑されます。

薫田監督は「結果は残念だが、低さを十二分に発揮して戦ってくれた」と語ってました。結果は想定の範囲内だったせいか、落胆はしてませんでしたけど、淡々としているのが心配だ・・・

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