リッスン・トゥ・ハー

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羽兎

2007-03-31 | 若者的詩作
つまらない甘えやまだ届かない
背が伸びるのを待ってる暇はない
だから、シークレットブーツを履く
口紅を塗りたくる

体育座りの半ズボンからぬらりと伸びたふとももに恋をする

くだらない恰好して裸足じゃない
あたしまだ女じゃない
思い出すたびに吐き気がするわ

体育座りの半ズボンからぬらりと伸びたふとももに恋する
飽きたらず、雨を降らせる、その一重まぶたに月見草を添える

ああ、体育座りの体育教師はやがて羽根兎のように跳ねる
窓越し雨上がりの夕暮れが本当に綺麗だけど、すごく滲みそう

悪魔が語るユリネの記憶

2007-03-30 | 掌編~短編
「ユリネは頭の良い女の子だった。

学校の成績がいいとか、そういうことも含めて、なんというか、生きることに対して頭が良かった。ユリネは自分が活きるようにふるまい、自分を最大限に生かすことができた。立ち振る舞いや、会話など、すべてはユリネの魅力を高める為の道具みたいだった。ユリネと少しの時間過ごせば、きっと誰でも彼女に魅了されてしまいそうになる。それは男に限らず。よく異性には好かれるが、同性には嫌われる、という女や、その逆の女はいるが、両方から好かれる女の子というのは、珍しいと思う。ユリネはそういう上手さが生まれつき備わっていた。なんというか、中性的なんだ。今考えても僕等は不釣合いだと思う、何でユリネみたいな魅力的な女の子が僕に好意を持ってくれたのか、僕が一番分からないんだから。


僕がユリネに出会ったのは年末の押し迫った12月の最終週で、ちょうど雪が降りはじめた日。僕が住んでいたところは寒すぎず暑すぎずまあちょうどいい気候で、冬がくれば、いい頃合を見計らったように雪が降るところだった。
確か、ひどい殺人事件があって妻と子どもを殺された男を、世の中が同情していた。僕も世の中と変わりなく彼を同情していて、犯人が早く見つかればいいのに、と月並みな独り言をつぶやいていた。
僕は大学に通っていてひとり暮らしをしていた。すでに大学は休みだったけれど、実家に帰ることなく、ここでひとり年を越そうと考えていた。もともとひとりが好きなんだ。でもそれってただの強がりかもしれない。僕には友だちも少なかった。それを寂しいとは思わなかったけれど。ラジオを聞きながら、薄い珈琲を飲んで、それから、小説を読んでいた。確か、誰の作品だったか忘れてしまってけれど、映画に関する話で、その小説に出てきた映画を僕は見てみたいと思い、レンタルビデオ屋に向かおうとしたんだ。それぐらい、素敵な描写で書いてあった。きっと誰だってあの小説を読めばあの映画が見たくなることだと思う。とにかく、僕は簡単に着替えて、というよりは寝巻き用のジャージの上からコートを羽織って、ニット帽を被って、おしまい。外にでた。雪が降りだしていたから、とても寒い事は予想していた、でもその時僕は映画の事で頭がいっぱいになって、寒さなんて感じていなかった。とにかく一分でも早くあの映画を見るべきだと、それだけが僕の使命なんだとさえ思えた。幸いレンタルビデオ屋は僕のワンルームマンションの近くにあって、歩いていけば5分とかからない。僕は傘を差して歩いた。雪はそれでも薄く地面に引いてあるぐらい、積もっている。ただ、まだほんの少し雪化粧したぐらいだった。
ほどなくして、レンタルビデオ屋に着いたのだけれど、どうも様子がおかしい。人盛りができていて、何か黒い煙が立ち上っている。僕はゆっくりと近づいて、その人ごみに混ざる。どうやら火事らしい。レンタルビデオ屋は何者かによって、放火された。とはいえ、小火程度で済んだということだったが、当然営業はしていない。つい先ほど火も消されたようだった。
迷惑な話だ。僕はあの映画を見ることだけを楽しみに、少なくともこの30分は、それだけを楽しみに、していたのに、それはもう不可能になってしまった。レンタルビデオ屋は、当然その町にいくつかあるのだが、どの店もここからちょっとした距離にある。歩いていけないこともないが、それは春や秋の気候の良い季節なら、むしろ歓迎するが、今は冬で、しかも雪が降っている。まだ昼間ではあったが、空は薄暗くて、じめじめとしている。それに僕はコートこそ羽織っているが、ジャージ姿なわけで、靴だって近くだと想定したからただのスニーカーを履いている。
仕方なく僕は部屋に戻る事にしたが、せっかく外にでてきたのだし、そういえば食料品もそろそろなくなりつつあるし、食べるものだけでも買って帰ろう、と思い。やはりちかくにあるスーパーに向かった。

スーパーはチープな音楽を流しながら年末忙しさの中にあった。
ユリネがいたのはそのスーパーの自転車置き場だ。最初、その肌の白い女の子を見て、僕は恐怖すら感じた。たまたま、スーパーにやってきていた人も少なかったし、ぼうとしていて、なんというか存在が薄かった。でもとても綺麗で、怖くてドキドキしているのか、綺麗でドキドキしているのか、判断が難しいところだった。
ユリネは買い物を終えて、とめていた自転車の鍵を小さいバックの中から取り出そうとしていた。そして、なかなか見つからないのか、少し頬を赤らめて、うっとうしそうな表情でバックの中をまさぐっていた。
普段だったら、そういう女の子がいたな、ぐらいで終わるはずの風景だった。
ユリネは僕を見て、話し掛けてきた。
どうして僕に話し掛けてきたのか分からない。それはいろいろ理由があったのだと思うけど、僕はその後も聞いていないし、これからも永遠に聞く機会を失ってしまったわけだし、まあ、正直それはどうでもよいことだから。
僕たちは、出会って、ほんの数時間で互いになくてはならない存在であると気付いた。理由も何も特別何かが起こったということはないけど、そう確信していた。やったことといえば、ユリネが僕の買い物に付き合ってくれて、それで僕は、いつもより少しだけ長く買い物をして、いつもより少しだけ様々な物を買って店を出る。雪が強くなっている。そして、僕等はきっとまた会う事を確信して別れた。ユリネもこの近くに住んでいて、このスーパーをよく利用するという物理的にも会えるし、何より会うに違いないと、ふたりとも予感していた。
そして、ユリネに二度目に会ったのも同じスーパーでだった。
やはりユリネは自転車置き場で、一度目と同じように鍵を探していて、僕が近づくと、少しはにかんで笑ってこう言った。
「やっぱりね」
ユリネは、前よりもずっと存在は確かなものになっていたけれど、白く、風景に溶け込んでしまいそうだった。
「なんとなくそんな気がしてたんだ」
「僕に会うって?」
「いいや、何か起こりそうって」
「それは喜んでいいのかな」
「いいんじゃない」
「では、素直に喜んでおきます」
「そうしてください」

それから前と同じように僕等は一緒に買い物をした。
前と違っていた事は、そこで別れずにユリネが僕の部屋に住みはじめたということだった。ユリネは当たり前のように僕の部屋に住み始めた。なんのためらいもなく、僕はうれしかったが、そのためらいのなさがどうも納得がいかず、ユリネにそのことを何度か効いた事があったが、ユリネはだって好きなんだから住むのは当たり前でしょう、とだけいい、僕ももちろんすきだし、ユリネは魅力的だから、ふたりで街を歩いていても視線を感じるし、いい気分ではあったけれど、どうしてもやっぱり何かしっくりこない感じが離れなかった。もしかすると、それが僕が悪魔になった理由なのかもしれない。いや、その可能性はかなり高いように思う。

欲望251~260(ロマンスの王子様)

2007-03-30 | リッスン・トゥ・ハー
・思っていたよりも、食い下がる

・屋台をはしご

・バイキングで限界を感じない

・王将のメニュー制覇

・野に咲く花を、健気だと感じる

・誕生日に歳の数だけ、ばらの花をもらう

・君の瞳に乾杯、と言われる

・君の瞳に乾杯、と言う

・虹を追いかける

・踊り喰う

・出す

無花果味のガム噛んで3

2007-03-28 | リッスン・トゥ・ハー
客は来ず、それは僕が全く無愛想だから寄ってこないからで、やはり、僕は何も出来ない。と途方に暮れている。女の子がよってきて、千円札を差し出し、苺、とつぶやいた。僕は、苺でいいんですね?と聞き返して彼女がうんとうなづいてから、機械を回して、氷を削り、細かい氷の塊をプラスチックの陽気に盛り、そこに苺のシロップをとろりとろりとかけてやった。その間女の子は、じっとこちらの様子を、カキ氷ができていく様子を見つめている。弟の手を引いて、じっと見ている。何にも言わずに、しゃりしゃりという音を立てて削られる氷を、とろとろのシロップを見ていた。僕は少し、というかかなりおまけして、そのことは何も言わなかったけれど、きっと彼女はわかってくれたと思う。それから、はいどーぞ、とありったけの笑顔でカキ氷とおつりを手渡した。彼女は、ありがと、と小さい声で言い、やはり弟の手を引いて、人ごみに紛れた。僕は、何か大きな仕事をし終えたように、大きく伸びをした。花火の音が耳を突き刺す、僕はそれを、無花果味のガム膨らませて、やり過ごす。

飴色の魚

2007-03-25 | 若者的詩作
傷みのないところへ僕は急ぎますが、何分かけっこが遅いもので、熱帯魚はどんどん迫ってくるのです。どんどん。気づいたら肩を、僕のこの恐ろしいぐらいのなで肩を、ぐいつと掴んで、握りつぶそうとします。握りつぶした僕の肩は、ぐちゃぐちゃになって別の熱帯魚の餌となり、それを喰うと鱗から皮膚が生まれ、その皮膚は飴色をしていてとても綺麗で、そうです、とても綺麗なわけです。その皮膚を君にも見せてあげたいけれど、僕はまだ、肩を握りつぶされるわけにはいかず、なぜなら、僕の肩には、羽を休めるべき渡り鳥がとまるのだから。突然羽を休める場所がなくなっていたら途方に暮れてしまう。その衝撃を、君も想像できるでしょう?

(飴色の熱帯魚は嘘つきだ)

ところで、渡り鳥は名を虹といいます。虹は、だいたい春先にやってきます。またすぐに、とんでいってしまうのだけれど、そのほんの少しの間僕たちは話をします。とりとめもないことで、内容は何も覚えていません。だけど、だけどそれは僕にとって、とても幸福な時間であり、重要な時間です。僕はその短い会話のために一日を過ごし、一ヶ月を過ごし、一年を過ごしているような気がします。気がするだけではなく実際そうなのです。虹はおそらく僕の名前すら知らないでしょう。そういうことに興味がないのです。だけどこの恐ろしいぐらいのなで肩を必要としてくれる。

(飴色の熱帯魚は臆病だ)

僕は、君がそのとってつけたような相づちをやめるまで、永遠にしゃべりつづけるし。
ところで飴色の魚は見えましたか?

欲望231~240(滝登り)

2007-03-25 | リッスン・トゥ・ハー
・滝を登る

・昇ってきた鮭を生け捕り

・そのまま踊り食う

・背後にひぐまの気配も、間一髪で逃れる

・武勇伝が新聞に載る

・武勇伝がテレビで放送

・ティッシュペーパーを一気に十枚引き抜く

・おびただしい数のティッシュペーパーに包まる

・ティッシュペーパーの向うに虹

・花粉症を根絶

オレンジ、かじりかけ

2007-03-24 | リッスン・トゥ・ハー
オレンジ皮ごと、齧りかけでみいちゃんは、僕の背中の少し上ををじいいっと見つめ続けているから僕は怖くなった。みいちゃん何見てるの?と聞いてもみいちゃんは何にも言わずに齧りかけのオレンジを握り締めたまま動かずに、石みたいに動かずにいた。みいちゃん、どうしたの、具合でも悪いの、と僕はますます怖くなってみいちゃんに聞くのだけれど、やはりみいちゃんは一点を見つめたまま動こうとしない。僕はみいちゃんの大好きなアニメの人形を持ってきて、ほらみいちゃん、みいちゃんの好きな『T33476803タイプ6088ターボ標準装備PLLORD』だよー、と呼びかける。いつもだったら、わあーT33476803、今日はいつもより、遠くに飛ぶー、とか言ってはしゃぐのに、今は、何にも言わないで同じところをじいいっと。そして、齧りかけたオレンジを、空間に向かって差し出した。「T33476803、ほら、お食べ」

きてんねや、T33476803が。

招かざる猫

2007-03-24 | 若者的詩作
俺は猫だぜそこのけそこのけ猫様だぜ
親父の頭でナイター中継が見えねえ
巨人が勝ったか負けたかだけでも見せてくれ

俺は猫だぜそこのけそこのけ猫様だぜ
女房のネグリジェ透け透けなので
たるんだ腹がゆれるのが手にとるよう

俺は猫だぜそこのけそこのけ招き猫だぜ
不良になった茶髪の息子を憐れみ
金属バットで壊される

欲望221~230(無重力のシャワーがじゅわー)

2007-03-24 | リッスン・トゥ・ハー
・一目置かれる

・「無重力」を正確に説明できる

・地球は青かった、とうっとりしながら語る

・宇宙酔いにかかる

・防衛庁の重要情報へハッキング

・振り向けば、いつもいる

・レースクイーンになって、カメラ小僧を興奮させる

・ラスト一周の旗を振る

・勝利のシャンパンを浴びる

・凧を肉眼で見えないぐらい高く上げる

神なき1㌦硬貨 文字が欠落、米で発行

2007-03-22 | リッスン・トゥ・ハー
その硬貨に神はいない。だから、何か違うというのか。何も違いはない。使えばいい。なんら変わることなく使えばいい。だけど、その硬貨は神に守られていない。神に守られていない硬貨で何かを購入しても、それはやっぱり神に守られていないわけで、守られていないものってのは少しだけ、何かが足りない気がするんだ。気のせいだ。とあなたは言うけれどほらあの、硬貨で購入したレモンが、ダンプカーに轢かれてくしゃりとつぶれた酸味がはじけて、さわやか三組。

葡萄摘み

2007-03-22 | 若者的詩作
野葡萄摘みに出かけましょう
そろそろ熟れたころではないですか
命綱を外して、ろうそくも吹き消して
ただいま、甘い飲み物をおくれ
傷めた羽をたたんだ夕暮れ
赤く染まったら眠ろう

あなたが得意な口笛のうたです、
僕はそれをなんとか真似てみます
涙が少しだけこぼれて
この記憶がなくなってしまう前に
僕はそれを夜空へ隠します

枯れない音だろう、音かな、嘘だろう
嘘かな、あなたはどこだろう
(裂いて、なんか僕らがいる)
離れないで、忘れないで
僕らは同じ街、過ちはなんだっけ?
まあいいや、ってやりすごそう
おぼえてないですか?深みにはまり
わすれてしまいますか?言葉も全部
(野葡萄摘みに出かけましょう)

すぐ変わる天気や昨日の出来事で
僕らはすぐに離れてしまう

欲望210~220(中村くんの声)

2007-03-21 | リッスン・トゥ・ハー
・中村一義くんとねぎま鍋を食いにいく約束をする

・割れない、といわれたガラスを割る

・盗めない、といわれたダイヤモンドを盗む

・あるのかないのか分からないぐらい綺麗にガラスを磨く

・思い立ったらすぐかかる

・掃除が趣味、と言う

・掃除をしてたら、指輪がでてくる

・古いアルバムを見て、あの恋を思い出す

・写っている場所に、もういちど行ってみる

・桜の花びらを手の平で受け止める