旅限無(りょげむ)

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甘い甘い年金検証会議

2005-09-20 20:02:36 | 社会問題・事件
■年金積立金の無駄遣いに関する調査報告が出ました。やっぱり総選挙の後です。選挙の追い風になるのなら、さっさと公表されていたに違いないのですから、注意深く読まねばならないなあ、と思ったら案の定、入り口から小細工していましたぞ。

年金検証会議:「ムダ遣い」指摘の報告書 厚労相に提出

 保険料で建設した年金福祉施設など、ムダ遣いが指摘された「年金福祉還元事業」の検証会議(座長、森田朗・東大公共政策大学院院長)は20日、各事業について「年金財政の厳しさを考慮せずに展開され、拡大を制御する仕組みが行政内部になかった」などと指摘した報告書をまとめ、尾辻秀久厚生労働相に提出した。今後保険料充当額など情報公開の徹底、数値目標を導入し事業の見直し基準を明確化することや、評価に関して保険料を負担する人の意見を聞く「恒常的な場」の設置を求めている。
 保険料が年金給付以外に使われ、「ムダ遣い」を指摘された事業は▽13のグリーンピア(大規模年金保養基地)施設▽年金住宅融資▽厚生年金会館など265の施設--の三つ。これまで年金保険料から累計で約3.2兆円が投入されているが、昨年の年金改正法案審議の過程で批判が噴出し、原則全廃・売却が決まっている。
 
■おいおい、この「三本柱」は酷いぞ!素人のくせに株に放り込んで焦げ付かせた6兆円は、「ちょっと運が悪かった。あれは大蔵省の責任です」とでも言う心算なのでしょうか?それに、無駄遣いの巣窟となっている「事務費」とマッサージ機やらゴルフ・ボールで有名になった、使い放題の「福利厚生費」の積算もお目こぼし?使いもしない自動車と暇そうにしている専用の運転手さん達の人件費、塵も積もれば山となるのに、これでは余りに大雑把ですなあ。
「余り細かい事を言うな」と誤魔化すのなら、月々積み立て金を支払っている側にも、値切ったり誤魔化したり踏み倒したりする者が出ますぞ!この大甘の調査でさえも3兆円!元々、弁償する気などお役人さん達の心の中にはぜんぜん無いのですから、痛くも痒くもないでしょう。穴埋めしろ!と強要しても、歴代退職者を身包み剥いで、現職の人達をタダ働きさせたところで、とても埋めきれないような大穴ですから、笑ってしまうしかないです。悔しいですなあ。

■半世紀に亘った国家規模の無駄遣いですから、簡単に全貌が分かるはずもないのですが、自分の選挙区で山奥の土地を転がしてグリーンピアを誘致した歴代の厚生大臣の所業やら、それに群がったブローカーや建設業者からもキック・バック献金も封印されたままです。大蔵省の魔手を逃れて、年金の支払いには始めから当てないと決めて溜め込んでいる秘密の積立金。ファミリー企業同然の各種系列会社や天下り専用の仕事の無い各種団体。まだまだ暴き立てなければ気が済まない伏魔殿が無数にぶら下っているのですが、今回の調査ではとても解明は無理なのでしょうなあ。こうしている間にも、毎月積み立てられるお金が、笊(ざる)から水が漏れるように当たり前のように奇怪な団体職員の給与として流出しているのです。

■時あたかもNHKの不祥事が明らかとなって怒りの受信料支払い拒否運動が起こっているのですが、残念ながら、後々給付を受けねばならない民の弱い立場では、簡単に支払い拒否には出られません。NHKが一向に支持を回復できないのは、皆様から集めた受信料を無駄遣いした馬鹿者が、例のプロデューサー一人だったと今も言い張っているからです。本当はこんなに無駄遣いしてました、と洗いざらい不心得者を獄門台に乗せない限り、受信料を払わされた側の怒りは収まらないでしょう。それでも、NHKは3兆円だの10兆円だのという巨額の無駄遣いは出来なかったでしょうから、本当は社保庁と厚労省に対する国民の怒りは、NHKに対する感情の数百倍になっているに違いないのです。

■先日、日本生命本社に自動車で突入して燃え上がった人がいましたが、イラク名物の自爆テロを真似た攻撃が責任官庁に向って仕掛けられても文句は言えないような立場なのですが、日本はまだまだ平和なので、お役人さん達は何の心配もなく鉄道駅のホームの端も歩けるでしょうし、勤めている役所の入り口に武装警察も頑丈なブロックも置かずに日々、「遅れず、休まず、働かず」の有意義な生活を続けておられるのでしょうなあ。でも、積立金をちょろまかす方法を考えるのには労力を惜しまない所先輩達が築き上げた巨大な組織は、シロアリの蟻塚さながらの規模と頑強さを誇っているようですから、大学の先生がちょっと調べたくらでは、びくともしないのでしょうなあ。
 

 事業に投入した保険料を厚生年金保険料率(年収の14.288%)に換算すると、昭和30~40年代は0.1%未満だったが、78年に0.107%となり、85年に0.38%とピークに達した。その後は0.2%未満で推移してきた。
 報告書はこの点を踏まえ、「直ちに年金給付に影響を与えるものではない、との認識が厚労省、社会保険庁内部にあったことは想像に難くない」と指摘。昭和50年代を、年金の給付削減が始まったにもかかわらず投入額が0.1%を超えたことで「潮目」と位置づけ、「潮目の変化を判断する仕組みがなく、厚労省と社保庁の意思疎通もなかった」と断じた。毎日新聞 2005年9月20日
 
■こまごました数字が律儀に並びましたが、元が巨額なだけに、0.1%でも莫大な金額になるのが恐ろしいのか、金額では表示していません。将来の備えに国民が積み立て金で「事業」をしようと考えた神経が分かりませんが、そういう時代だったのでしょうなあ。これとまったく同じ構図が「特別会計」という国会の審議では一切振れられない怪物予算を産み育てて来たのです。あまりに巨大なので、どこから手を着けたら良いのか誰にも分かりません。こんな%をずらずらと並べられてすっきりと事態の深刻さを理解する国民ばかりなら、サラ金やら闇金で馬鹿な借金なんかしませんよ。一説には、日本国内で流通している資金の7割以上が、何らかの形で公金から出ているといわれる社会主義経済を維持しているのが日本だそうです。そのややこしい資金の源泉の一つが年金積立金です。

■落ち着いて考えてみれば、「積立金」というのは犯罪的な騙しの名前です。これは貯金ではなくて正式には「保険料」と呼ばれているので、一種の博打の掛け金です。保険は胴元が破産したら一切の払い戻しがなくなるのはどこの世界も同じです。支払いを受ける権利を与えられているだけで、その権利が本当に行使できるかどうかは、分からないのが「保険」です。何でも国がやってくれた経験しか無い日本人は、保険が破綻する!などと言われてても事情が良く飲み込めません。そろそろ、保険と貯金と投資と博打を整理して考えた方が良いでしょうなあ。年金は保険なのですから、「このままだと破綻するぞ!」と脅迫されたら、積立金は増額されて支給金額は削られても文句は言えないのです。懐かしい田中角栄さんや三木武夫さんが総理大臣だった頃、積み立て金はそのままで、大盤振る舞いの給付金の上積み競争などをしていたのです。良い時代でしたなあ。でも、との裏に回ってお役人さん達は、総理大臣に負けない大盤振る舞いを本格的に始めて大きな穴を開けていたという訳です。嗚呼。


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2 コメント

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小泉総理の科白は (なかまた)
2005-09-20 21:04:39
今回の選挙 民間で出来ることは民間で。

その理屈で言えば,社会保険庁の仕事こそ公務員でなければできないのでしょうか!!

小泉さんは郵便局の公務員を減らせば数の上では 膨大な数の公務員が削減されたと 統計上の操作はできるでしょうが,そんなことでいつまでも国民を欺き続けることができると思っているのでしょうかね。
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なかまたさんへ (旅限無)
2005-09-20 21:48:13
ちょっと久しぶりですね。仰る通り、本当にざっくりぐっさり減らさなければならない変な組織が山ほど有るんでよね。でも、そこにはお役人さんたちの「逆鱗」が隠されているので、変人総理でもそんな所に手を突っ込んだらどんな「国策操作」が仕掛けられるか分かったものではありません。郵便局を生贄にして大勢が生き残る事が決まっているんでしょうなあ。そうでなければ、お役人がのんびりしていられる筈は無いのですから…
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