今年は、グリム童話初版が出版されて、ちょうど200年です。
そこでグリム童話を話題にしたブログを時々載せます。
その初回は昨年12月5日のブログでした。そこではグリム童話の初版の成立事情を話しました。
今回は、その出版の前のグリム兄弟の民話調査、フィールド・ワークのエピソードを話しましょう!
なんとグリム兄弟が聴き書きしたお話のメモが今も残っているのですよ!
それを先ず、載せましょう!
この聞き書きメモは、1808年にグリム兄弟の弟ヴィルヘルムが、カッセルの「太陽薬局」を経営するヴィルト家の
次女グレーチヒェンから聴いて書き留めたものです。
当時ヴィルヘルムは22歳、グレーチヒェンは21歳でした。
聴いたお話は、「ねことねずみについて」です。
グリム童話では2番目に入っている「猫と鼠のとも暮らし」にあたります。
もう一度、メモをよく見てください。
初めにそのタイトル Vom Ka"tzchen und Ma"uschen が下線を引いて書かれています。
よく見ると、かろうじて読めますよね。
それでは、お話を拙訳で掲げましょう!
猫と鼠がいっしょに所帯を持って暮らしていました。
そしてふたりは冬に備えて脂(あぶら)の入った小さな壺を買いました。
そして、教会の祭壇の下に置いておきました。
その後まもなく猫は鼠に「洗礼に立ち会って名付け親にならなければならないから、
行かせてくれないか。」と言いました。
そこで鼠は「いいわよ」と言いました。
ところが猫は教会に行くと、脂の壺の上皮をぺろりとなめてしまいました。
猫が家に帰ってきたとき、鼠は「子どもはなんて名前になったの?」と尋ねました。
「うわかわぺろり」と、猫は答えました。
それからまもなく、猫は「また名付け親にならなければならないのだ。」と言いました。
そしてまた教会に行き、脂の壺の半分まで食べてしまいました。
そして鼠が「子どもはなんて名前になったの?」と尋ねたとき、
猫は「はんぶんぺろり」と答えました。
最後にもう一度、猫は名付け親になるため教会に行くことになったのですが、
鼠は猫を行かせたくなくて、とても思案して
「うわかわぺろり、はんぶんぺろり、いづれも奇妙な名前ね。」と言いました。
ところで猫は脂の壺をすっかりなめつくして、家に帰ると、
「子どもは、ぜんぶぺろりという名前になったよ」と言いました。
すると鼠は頭を強く振りながら「ぜんぶぺろり、まあ、それは意味ありげな名前ね」と言いました。
まもなく冬が来て、ふたりは教会の祭壇の下に隠しておいた脂の壺のところに行ってみると、
壺は空っぽでした。そこで鼠は「あんたがぺろりとやったのね。名付け親になると言って出かけたのに。」と
言いました。そこで猫は「黙れ! でないと、お前を食べてしまうぞ!」と言いました。
そして、鼠がまさに口を開いたとたんに、猫は鼠にとびかかり、呑み込んでしまいました。
― 口伝えによる ―
以上がヴィルヘルム・グリムの聴き書きメモです。
彼自らが最後に「口伝えによる」と書いていますが、
グレーチヒェンから聴いたメモだけあって、素朴な荒削りな文体です。
それが、4年後にグリム童話初版として文字で読むテキストになると
文体が整えられ、読みやすくなっています。
初版(1812年)テキストは、日本語訳も出ていますので、実際に読み比べてみてくださいね。
★グリム童話ミニ講座第2回★はこれでおしまい! 次回もお楽しみに!
そこでグリム童話を話題にしたブログを時々載せます。
その初回は昨年12月5日のブログでした。そこではグリム童話の初版の成立事情を話しました。
今回は、その出版の前のグリム兄弟の民話調査、フィールド・ワークのエピソードを話しましょう!
なんとグリム兄弟が聴き書きしたお話のメモが今も残っているのですよ!
それを先ず、載せましょう!
この聞き書きメモは、1808年にグリム兄弟の弟ヴィルヘルムが、カッセルの「太陽薬局」を経営するヴィルト家の
次女グレーチヒェンから聴いて書き留めたものです。
当時ヴィルヘルムは22歳、グレーチヒェンは21歳でした。
聴いたお話は、「ねことねずみについて」です。
グリム童話では2番目に入っている「猫と鼠のとも暮らし」にあたります。
もう一度、メモをよく見てください。
初めにそのタイトル Vom Ka"tzchen und Ma"uschen が下線を引いて書かれています。
よく見ると、かろうじて読めますよね。
それでは、お話を拙訳で掲げましょう!
猫と鼠がいっしょに所帯を持って暮らしていました。
そしてふたりは冬に備えて脂(あぶら)の入った小さな壺を買いました。
そして、教会の祭壇の下に置いておきました。
その後まもなく猫は鼠に「洗礼に立ち会って名付け親にならなければならないから、
行かせてくれないか。」と言いました。
そこで鼠は「いいわよ」と言いました。
ところが猫は教会に行くと、脂の壺の上皮をぺろりとなめてしまいました。
猫が家に帰ってきたとき、鼠は「子どもはなんて名前になったの?」と尋ねました。
「うわかわぺろり」と、猫は答えました。
それからまもなく、猫は「また名付け親にならなければならないのだ。」と言いました。
そしてまた教会に行き、脂の壺の半分まで食べてしまいました。
そして鼠が「子どもはなんて名前になったの?」と尋ねたとき、
猫は「はんぶんぺろり」と答えました。
最後にもう一度、猫は名付け親になるため教会に行くことになったのですが、
鼠は猫を行かせたくなくて、とても思案して
「うわかわぺろり、はんぶんぺろり、いづれも奇妙な名前ね。」と言いました。
ところで猫は脂の壺をすっかりなめつくして、家に帰ると、
「子どもは、ぜんぶぺろりという名前になったよ」と言いました。
すると鼠は頭を強く振りながら「ぜんぶぺろり、まあ、それは意味ありげな名前ね」と言いました。
まもなく冬が来て、ふたりは教会の祭壇の下に隠しておいた脂の壺のところに行ってみると、
壺は空っぽでした。そこで鼠は「あんたがぺろりとやったのね。名付け親になると言って出かけたのに。」と
言いました。そこで猫は「黙れ! でないと、お前を食べてしまうぞ!」と言いました。
そして、鼠がまさに口を開いたとたんに、猫は鼠にとびかかり、呑み込んでしまいました。
― 口伝えによる ―
以上がヴィルヘルム・グリムの聴き書きメモです。
彼自らが最後に「口伝えによる」と書いていますが、
グレーチヒェンから聴いたメモだけあって、素朴な荒削りな文体です。
それが、4年後にグリム童話初版として文字で読むテキストになると
文体が整えられ、読みやすくなっています。
初版(1812年)テキストは、日本語訳も出ていますので、実際に読み比べてみてくださいね。
★グリム童話ミニ講座第2回★はこれでおしまい! 次回もお楽しみに!
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