理研の知財によるとオープンソースによる開発を認めるというのは困難ということであった。
ただこれは外部資金などの方針とは矛盾する。外部資金からは外部資金をとってくるのは推奨されており、最近のファンドはオープンソースで公開しろとなっているものもあるからだ。
で、知財は研究者が知財を無視し(迂回し)オープンソースで開発して公開するということを止めることはできないということだった。
外部資金以前に、外部の研究者と共同で開発しているものだとオープンソースにせざるを得ないものがあるのは事実である。ある一人の研究者が大学でオープンソースで開発したソフトの継続を理研で行うことも考えられるし、ほかの大きなオープンソースプロジェクトに参加するということも考えられる。さらに外部資金の中には成果をpublic domainにせよというのもある(MS CORE; 契約の一部all results derived from the project must, as soon as they are generated, be readily put in the public domain, freely and without restrictions
)。
結局、研究者としては問題はない。所属長が認めたら、とりあえずオープンソースにする際には知財に報告しなければよい。また報告義務もないし、守らないことによるペナルティもない(afaik)。
知財は研究者が研究をしやすいように環境を整えたいということであった。ということで
少し考えてみて、おそらく知財がやって意味があると思われることは...
* オープンソースで公開することを推奨する(それは社会的な財産となる)。
* 理研の研究者が関わったオープンソースのプロジェクトを列挙する
* リストは無保証で、問い合わせベースでアップデートできる、
* オープンソースにする場合はFSFやOSDが定めたライセンスを選択することを推奨する
* そのほかのライセンスを適用する場合は要相談。
* ソースレポジトリ, MLなどは外部サイトなどを使ってもよい。
という感じだろう。
いくつか予想される質問とその答えについて私の考えを述べてみる。
Q. 著作権を理研が主張したい。
A. ライセンスの変更が難しくなる。研究者が理研に在籍する間に開発し、外部に転出した場合、ライセンスを変更しようと思ったら理研がホストする必要がある。開発者が存在しなくなり当事者がいなくなった場合、誰が説明責任を果たすべきか明確ではなく、下手すれば開発した部分を削除し新たに外部の人間が書き直さなくてはいけなくなるかもしれない。
Q. 理研は研究者の書いたソフトのライセンスを規定したい。
A. FSFで定めるフリーソフトウェアのライセンスすべてが互換ではない。つまり例えばGPLと混ぜることのできないライセンスも存在する。そうすると例えばGPLな外部プロジェクトには参加できない。
Q. 理研で開発したなど、論文を引用せよというクレジット挿入義務をライセンスにいれたい。
A. これはGPLなどと矛盾する。BSDライセンスにはこれを厳密にした方法の一つである宣伝条項を含むものが存在してたが、GPLなどと矛盾するため最近はこれはさけられている。それを廃止したライセンスは一般的に修正BSDライセンスと呼ばれており、これを採用するオープンソースなソフトウェアは多い。論文などでは引用するのは研究者コミュニティでのコンセンサスであり、明文化しなくとも引用してもらえるはずである(マナーの悪い人はこれをライセンスに入れても引用しないだろう)。
Q. オープンソースのライセンスはFSFかOSDIでそう認められているもののを「推奨」する理由を教えてほしい。
A. プロジェクトごとに事情がありライセンス条項に文言をわずかに変更するべきときもある(classpath例外条項など)ので義務とはしない。また独自ライセンスを書いてオープンソースになっているかどうかを判定するコストを払うのは建設的でもないので、「推奨」。
ということから考えると、上記のことくらいがだいたいできることであると思われる。
知財の問題とすれば、オープンソースは商用に使えるということであろう。外部の商用プロジェクトに組み込むこともできるし、そもそもそれを目的としているものもある。ただ、商用といえどもソースが無料で公開されているものをわざわざ外から高額で購入するだろうか。たとえばLinuxの商用distributionを理研で作ったとしても値段は低くなるだろうし、ほとんど開発コストは回収できないだろう(Cent OSなどは開発者研究者だし実質一人だ)。また流通しやすくするためやサポートをするために値段を付けるというのはあるだろう。数々のオープンソースプロジェクトが金銭的に不安を抱えている現在(例えばMozillaでさえ、Googleからの資金がなくなれば消滅するだろう)、オープンソースは商用利用可能ではあるが、知財が理研の財産として積極的に権利を主張するメリットはないと考えられる。