失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「あの日にかえりたい」 荒井由実 1975年、「スカイレストラン」 伊東真由美 1990年

2014-08-11 | ユーミンみゆき
荒井由実の6thシングル。

1989年に8㎝化された「YUMING SINGLES」シリーズの一枚。

①あの日にかえりたい
作詞・作曲:荒井由実、編曲:松任谷正隆
イントロの山本潤子のスキャットで勝負あり。明らかに自分より上手いシンガーをコーラスで使っちゃうユーミンの勇敢さに惚れる。鈴木茂はエレキ、ガットギターは細野晴臣。タイトルどおりうしろ向きノスタルジーが結晶化した、ボサノバ歌謡の最高峰。しかしかえる目「あの寺へ帰りたい」を聴いて以来、「♪『いのーいのー』(関西弁で帰りたいの意味)」が浮かんできてしまう。見事すぎるパスティーシュ。

②少しだけ片想い
作詞・作曲:荒井由実、編曲:松任谷正隆
アルバム『COBALT HOUR』(1975)収録曲をシングルカット。①とは対照的に元気で若さあふれるユーミン。林立夫のキレのいいドラム、吉田美奈子&シュガー・ベイブによる超豪華コーラス隊に耳を奪われる。間奏は吉田美奈子のスキャット。結局ユーミンの大物っぷりが際立つのだ。

定価937円、レンタル落ち21円。
驚いたことに、タイトルの表記を思いっきり間違えてる!ジャケの3カ所、CD盤面とも「あの日に帰りたい」の漢字表記で統一。誰も気が付かなかったんだろうか?気付かなかったんだねえ。当ブログではもちろん正解の「かえりたい」に修正。


伊東真由美の何枚目か分からないシングル。

①スカイレストラン
作詞:荒井由実、作曲:村井邦彦、編曲:HERO
オリジナルはハイ・ファイ・セット、1975年のシングル。この曲の歌詞は、もともとは「あの日にかえりたい」のために用意されていた。「あの日に~」がドラマ主題歌に決まり、イメージが合わないとの判断で歌詞が書きかえられた。そのボツ歌詞をこの「スカイレストラン」に流用。ハイ・ファイ・セットの山本潤子が「あの日に~」にコーラスで参加したり、ユーミンの生みの親と言っていい村井邦彦が曲をつけていたりと、この2曲の運命は複雑に絡み合っている。で、その歌詞は「なつかしい電話の声に 出がけには髪を洗った この店でさよならすること わかっていたのに」なんてアダルトムード。ここを「シャワーを浴びた」ではなく「髪を洗った」と微妙に婉曲表現にしたところがユーミンの上品さ。しばらく放置されていた主人公が、男の電話に呼び出されてほいほい食事に出かける。もうふたりの関係は終わりと分かってるのに何かを期待してしまう女の悲哀。「あの日に~」の清純派路線とは異なる、男女の生々しい駆け引きが描かれている。男声コーラスの気だるいイントロから、歌い出す伊東真由美の迫ってくるようなアンニュイに気おされる。山本潤子の抑えた色気とは対照的。アルバムタイトルに『美人声』というのがあるのだけど、正に言い得て妙だな。この詞にはこっちの曲が正解、と思わせる説得力を持ったメロディをあとから書いた村井邦彦の力技も素晴らしい。

「あの日に~」のメロディで「スカイレストラン」の歌詞を乗せた素人カヴァーがYouTubeにあがっている。当然サイズはぴったりだけど、思った以上に違和感ありあり。それはもう歴史がそうだからってのもあるが、男性(おそらく中年)が歌っているのが主因だろう。

②白い渚
作詞:三浦徳子、作曲:笠井紀美子、編曲:HERO
カップリングはデジタルなダンスビートで突っ走る。伊東さんはリズムもパンチもなかなかで、アンニュイだけではないことを教えてくれる。ジャズシンガー笠井紀美子の書き下ろし作品のようだ。

定価937円、中古で100円。
挑発的に左肩を露わにする真由美さん。声だけでなくルックスも美人。



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