駆け込み需要が生じたかどうかについて、消費支出の項目(個別項目)単位に最近の支出金額の推移を見てきましたが、最後に交通・通信についてみてゆきたいと思います。
総務省統計局の家計調査の収支項目分類表では、交通・通信について「人の移動,物の運送,情報の伝達に必要な商品及びサービスへの支出」と説明されています。
◇交通・通信支出金額の推移
○交通・通信支出金額の推移について
分析期間における交通・通信支出金額は、リーマン・ショックの影響もあり2008年の48,500円前後から2011年8月の44,600円まで減少傾向で推移した後、増加傾向に転じ2014年6月では52,900円まで増加しています。
(グラフの上をクリックすると、拡大したグラフを見ることができます。以下も同じ。)
消費税率改正(5%→8%)前の2014年1月の支出金額の前年同月比は11.0%の増加、2月は-4.6%の減少、3月は15.0%の増加となっています。
○交通・通信支出金額の季節変動、不規則変動について
交通・通信支出金額の季節変動は、3月をピーク、5月をボトム(需要期;7月、8月、12月、不需要期;2月、11月)を周期とする変動となっています。
不規則変動は、2014年1月は1.03、2月は0.97、3月は1.14となっており、特に支出のピーク時でもある3月はプラスに大きく変動していることからみて、駆け込み需要が生じたものと思われます。
◇交通支出金額の推移について
交通について収支項目分類表では、「公共輸送機関,公共輸送施設の利用料金」と説明されており、個別項目(細目)には、鉄道運賃、鉄道通学定期代、鉄道通勤定期代、バス代、バス通学定期代、バス通勤定期代、タクシー代、航空運賃、有料道路料が挙げられ及び他の交通として、○ 船賃(遊覧船・観光船は除く。) 渡船代 渡橋料○ カーフェリー・フェリーボート代○ 貸切・見学バス代○ 寝台自動車代○ ロープウェイ・ケーブルカー(登山電車)代○ 駅入場料 空港施設使用料が例示さています。
分析期間における交通支出金額は、2008年1月の7,200円から2011年6月の6,100円まで若干の増減が含まれるものの減少傾向で推移し、その後2013年6月の7,000円まで増加傾向で推移しています。
最近は、緩やかな減少傾向での推移となっており、2014年6月では6,800円となっています。
消費税改訂直前の2014年3月の支出金額前年同月比は28.1%の増加、不規則変動は1.15と明らかに急増しており、支出内容から見て通勤通学の定期代で駆け込み需要が生じたものと思われます。
◇自動車等購入支出金額の推移について
収支項目分類表では自動車等購入については、「自動車,オートバイなどの輸送機器の購入金額」と説明されており、個別項目(細目)には自動車購入(中古を含む)及び自動車以外の輸送機器購入が挙げられ、輸送機器については、○ 自動車以外の原動機付きの乗り物 ○ オートバイ スクーター ○ クルーザーが例示されています。
分析期間における自動車等購入支出金額は、2008年の7,500円前後から2011年7月の4,800円まで若干の増減を含むもののはぼ減少傾向で推移した後、増加傾向に転じています。
2014年1月には10,800円まで増加しましたが、その後は緩やかな減少傾向となり、2014年6月には9.600円まで減少しています。
支出金額の「前年同月比は、2014年1月が66.6%の増加、2月が7.3%の増加、3月が18.7%の増加と大幅に増加しており駆け込み需要が生じたのは明らかと思われますが、その後の4月は26.4%の増加、5月の14.6%増加と増加基調が続いており、契約と納車、支払との関係でこのような現象になっているのか、他の統計等での確認が必要と思われます。
ちなみに、不規則変動は、1月が1.11、2月が0.98、3月が1.11であり、4月が0.98、5月が0.79となっています。
このことからも、駆け込み需要であることは明らかと思われます。
◇自転車購入支出金額の推移について
収支項目分類表では自転車購入については、「大人,子供用を問わない。中古車も含む」と説明されており、○ マウンテンバイク○ 電動アシスト自転車が例示されています。
分析期間における支出金額は、2008年から2012年までは平均的には310円±20円で横ばいで推移した後、2013年に入ると増加傾向に転じ、最近は380円前後まで増加しています。
支出金額の前年同月比は、1月が171.1%の増加、2月が-31.2%の減少、3月が73.6%の増加となっており、不規則変動は、1月が2.09、2月が0.78、3月が1.34となっており、駆け込み需要の発生は明らかと思われます。
◇自動車等維持支出金額の推移について
収支項目分類表では自動車等維持については、「輸送機器の維持,使用のために必要な商品及びサービスに関するもの」と説明されており、個別項目(細目)では、ガソリン、自動車等部品(○ タイヤ プラグ バックミラー バッテリー エンジン関係の部品 ○ ワイパー ○ 自動車の電球(ルームライト テールランプなど ○ オートバイ,スクーター,自転車などの部品)、自動車等関連用品(○ チェーン ナンバープレート ○ カーステレオ カーナビゲーション ○ ボディカバー シートカバー ○ ボディカバー シートカバー ○ ボディカバー シートカバー ○ 自転車の付属品(子供用のいす,籠,荷物用のゴムベルトなど) ○ バイク用ヘルメット ○ ETC車載器)、自動車整備費(○ ETC車載器 ○ グリスアップ チューンナップ ○ 車の修理代)、自動車以外の輸送機器整備費(○ 定期点検料 車検のための整備費(250cc以上の自動二輪車) ○ パンク修理代、年・月極め駐車場借料、他の駐車場借料、レンタカー料金及び他の自動車等関連サービス(○ 車の登録料(登録替依頼手数料) ○ 運転免許試験手数料 免許証交付手数料(仮免許証,免許証更新料を含む。) ○ 代行車料 ○ バッテリー充電代 ○ 洗車代○ 自転車の預け賃 ○ JAFの会費)、自動車保険料(自賠責)、自動車保険料(任意)及び自動車保険料以外の輸送機器保険料が挙げられています。
分析期間における支出金額は、2008年の19,500円前後からリーマンショック後大幅に減少し、2009年1月の17,000円から増加基調に転じ、その後は若干の増減を含みながら2013年10月の20,700円まで増加しています。
最近では減少傾向に転じており、2014年6月では20,300円まで減少しています。
支出金額の前年同月比は、1月が7.3%の増加、2月が-10.8%の減少、3月が11.0%の増加となっており、不規則変動は1月が1.01、2月が0.93、3月が1.11となっており、僅かながら駆け込み需要が生じたものと思われます。
◇通信支出金額の推移について
収支項目分類表では通信については、「物の運送,情報の伝達のために必要な商品及びサービスに関するもの」と説明されており、個別項目(細目)には、郵便料、固定電話通信料、移動電話通信料、運送料、移動電話及び他の通信機器(○ 電話機 コードレスホン ○ ファクシミリ ○ 無線装置 無線機)が挙げられています。
分析期間における支出金額は、2008年1月の14,000円から1012年12月の15,700円までほぼ一貫して増加基調で推移した後、最近は減少傾向に転じ2014年6月の15,000円まで減少しています。
2012年までの一貫した増加は、携帯電話、スマートフォンの普及による通信料の増加が主因と思われます。
支出金額の前年同月比は、消費税改定(5%→8%)直前の3月は、10.6%の増加、不規則変動は1.05とプラスに変動しており、若干の駆け込み需要が生じたものと思われます。
今まで見てきたように、多様な品目について駆け込み需要が生じたことは明らかと思われ、今後は駆け込み需要の反動、消費税増税の影響がどの程度の買い控えとなって家計に表れてくるか、注目してゆく必要があります。
ところで、明日から10月、もうすっかり秋ですね。
そろそろ、コスモスも見ごろを迎えようとしています。
見慣れた光景も、少し位置を変えて逆光の中で見るのも、また別の美しさを発見できるものです。
少しずつ柔らかくなってきた秋の日差しの中のコスモスをとらえてみました。