相模野のトト

家計調査データを読む

家計調査データから販売戦略データを導き出せるだろうか

2013年12月31日 20時57分59秒 | 社会・経済

 総務省統計局の家計調査支出データ項目(商品)の多くには、100世帯当たり購入頻度、支出金額、購入数量、平均価格および10,000世帯当たりの購入世帯数が掲載されています。
 100世帯当たり購入頻度は、100世帯が1ヶ月当たり何回購入したかの購入回数を表しており、この値を100で割れば、1世帯1ヶ月当たりの購入頻度ということになります。
したがって、この1世帯1ヶ月当たりの購入頻度で、支出金額および購入数量を割れば、それぞれの1回当りの支出金額および購入数量となります。

また、これらの数値は、購入した世帯と購入しなかった世帯をあわせて1回当たりの支出金額および購入数量ということです。
一方、10,000世帯当たりの購入世帯数は、文字通り10,000世帯の内、何世帯がその項目のものを購入したかを表しており、百分比に置き換えることもできます。
すなわち、9,500世帯であれば95%の世帯、100世帯であれば10%の世帯が購入している(普及率)ということであり、これを先の100世帯当たりの購入頻度を10,000世帯の購入頻度と置き換えて、この数値を10,000世帯当たりの購入世帯数で割れば、購入した世帯のみの購入頻度(実購入頻度)を算出することができます。
以上のことから、この実購入頻度を用いて、支出金額および購入数量を割れば、実際に購入した世帯のみの1回当りの支出金額および購入数量を算出することができます。
お、平均価格は、原データの支出金額を購入数量で割っても、購入した世帯購入しなかった世帯をあわせて1回当りの支出金額を購入数量で割っても、また、実際に購入した世帯のみの1回当りの支出金額を購入数量で割っても、いずれの場合にも同じ平均価格になります。
このことから、実購入頻度、購入世帯のみの1回当りの支出金額、購入数量および平均価格ならびに普及率の推移を分析することで、ストレートに家計調査の支出データ項目の数値を分析するよりは、1世帯当たりの消費行動がわずかながら明らかになるのではないか、また、スーパー、小売店には多少でも販売戦略に役立つ情報になるのではないかなと思われます。

◇1世帯1ヵ月当たりの鶏卵購入頻度の推移


前述のように、100世帯当たりの購入頻度を10,000世帯の購入頻度と置き換えて、この数値を10,000世帯当たりの購入世帯数で割れば、購入した世帯のみの購入頻度(実購入頻度)が得られます。
分析期間における実購入頻度は、平均で1ヵ月当たり4.12回であり変動の範囲(偏差)は±0.13回であることから、ほぼ週1回弱の頻度と言えます(1年52週÷12月=4.33回)。
グラフでは変動が規則的に見えるのは、月の大小で1ヶ月に含まれる週が異なる(大の月は4.43週、小の月は4.20週、2月は4週(閏年は4.14週))事によるものです(季節変動、季節要因)。


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(上のグラフをクリックすると、拡大したグラフを見ることができます。以下も同じです。)

この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで-0.3%の減少、2013年4月から9月は年率ベースで-0.2%の減少で推移しています。


◇1世帯1回当たりの鶏卵支出金額の推移

前述のとおり、支出金額を上述の実購入頻度で割れば、購入した世帯のみの1回当りの支出金額が得られます。
分析期間における1回当りの支出金額は、182円±9円となっています。
グラフから読み取れるように、卸売価格の高騰時には190円を超えるような値を示しています。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで1.5%の増加、2013年4月から9月は年率ベースで3.9%のやや急増で推移しています。

◇1世帯1ヶ月当たりの鶏卵購入数量の推移

前述のとおり、購入数量を上述の実購入頻度で割れば、購入した世帯のみの1回当りの購入数量が得られます。
分析期間における1回当りの購入数量は、652g±20gとなっています。
スーパーなどで購入する鶏卵は、普通はL級10個入りパックまたはM級10個入りパックとおもいます。
農林水産省が定めた規格取引の基準では、L級の鶏卵1個の重量は、64g以上70g未満、M級は、58g以上64g未満ととなっています。
したがって、平均的には鶏卵1個あたり64gと考えられ、1パックは640g前後と思われます。
このことから、1世帯当たりの鶏卵購入は、おおよそ週1回1パックを購入していると言えます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで-1.5%の減少、2013年4月から9月は年率ベースで3.1%の増加で推移しています。

◇1回当りの鶏卵購入平均価格の推移

平均価格は、前述のどの段階の数値を用いても、平均価格=支出金額÷購入数量で表すことができますので、変わりない数値が得られます。
したがって、1パックでは173円±6円
と思われます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで3.2%の増加、2013年4月から9月は年率ベースで-1.8%の減少で推移しています。

◇鶏卵の購入世帯割合の推移

購入世帯割合は、10,000世帯当たりの購入世帯数を単に百分比に置き換えたものです。
分析期間における購入世帯割合はは、94.7%±0.5%となっています。
鶏卵は、家計における必須の食品といえ、価格が比較的安価で安定していることから、「物価の優等生」と言われる所以と思われます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで0.3%の増加、2013年4月から9月は年率ベースで-0.1%の減少で推移しています。

本年最後に、新たな分析の試みをお届けすることができました。
それでは、良いお年をお迎えください。


「たまご」の卸売価格と小売価格の関係および都市別消費

2013年12月28日 17時43分14秒 | 社会・経済

「たまご(鶏卵)」の最近の動向について、総務省統計部の「家計調査」のデータから離れて、他の統計からその動向を見てゆくこととします。

◇鶏卵卸売価格の推移

鶏卵の卸売価格につきましては、JA全農たまご株式会社がHP(URL:http://www.jz-tamago.co.jp/)に「相場」として公表している、東京のM級の加重平均から得られたものを利用しました。
近年(2005年以降)の推移は、価格の高騰時と低迷時が交互に現れていますが、おおよそ185円±18円/Kg、範囲で表せば±10%前後であり、農産物としての変動幅は大きいものの一つとなっています。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで-7.5%の減少、2013年4月から9月は年率ベースで28.3%の急騰で推移しています。

◇鶏卵小売価格の推移

鶏卵の小売価格につきましては、総務省統計部の「小売物価統計調査」の東京都区部の1パック(鶏卵10個入り)」の価格を使用しました。
近年(2005年以降)の推移は、卸売価格と同様に価格の高騰時と低迷時が交互に現れていますが、おおよそ218円±10円/1パック、範囲で表せば±5%前後であり、卸売価格より変動が少ないように思われますが、1パック(鶏卵10個入り)はおおよそ650g前後であることから、Kg換算すると336円±16円ということになり,流通経費を含んでいるとしてもかなり差があることから、その範囲内で卸売価格の変動は吸収されるものと思われます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで0.7%の増加、2013年4月から9月は年率ベースで6.7%の増加で推移しています。

◇卸売価格と小売価格の関係

上記の卸売価格と小売価格について、どの程度の関連性があるか相関分析を行なってみました。
価格差は相当程度ありますが、変動については相関分析の決定係数(R2乗)は0.8126であることから小売価格は卸売価格の変動にほぼ一致して変動していると言えます。

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◇小売価格(東京・1パック(10個入り)と購入平均価格(全国・100g当たり)との関係

では、小売物価統計調査の価格の動きが、同じ総務省統計部の家計調査の鶏卵の(購入)平均価格とどの程度関連しているかを、相関分析を行なってみました。
それぞれの単位価格は小売価格は1パック(10個入り)と購入平均価格は100g当たりと異なっていますが、決定係数(R2乗)は0.7004と若干関連性は薄くなっています。
これは、東京都区部と全国という、対象の異なる価格比較により生じたものと思われますが、卸売価格、小売価格および購入平均価格は、ほぼ同じ推移を示していると見ることができるものと思われます。

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◇都道府県庁所在都市別の鶏卵消費

鶏卵の地域別消費の違いを、総務省統計局の「品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキンク(平成22~24年平均)」で見てみたいと思います。
なお、グラフに表示してあるものは、都道府県庁所在都市のみとしました。
また、グラフでは単価差を明らかにするため、平均単価より高い場合は青で、安いい場合は白で表し、平均単価より乖離が大きくなれば「丸印」も大きくなるように表示してあります。
したがって、消費量の一番多い鳥取市と一番少ない東京都区部では、購入数量で12,972g、支出金額で471円の差ですが、平均価格では鳥取市の場合は平均に比べ4.37円/100g安く、東京都区部の場合は平均に比べ5.44円/100g高くなっていますので、鳥取市の場合は白の丸印が比較的大きく、東京都区部は青の丸印が比較的大きく表されています。
グラフから見ると、鶏卵消費は、他の食品に比べ地域差が大きく、また購入平均価格の地域差も大きいようです。

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鶏卵の消費量の多いのは、鳥取市(購入数量:38,182g 支出金額:8,684円 平均価格:22.77円/100g)、松山市(34,922g 8,493円 24.32円/100g)、奈良市(34,873g 9.509円 27.27円/100g)、青森市(34,732g 7,669円 22.08円/100g)および山口市(34,588g  8,276円 23.93円)となっており、逆に少ないのは、東京都区部(購入数量:25,210g 支出金額:8,213円 平均価格:32.58円/100g)、徳島市(25,847g 6,233円 24.11円/100g)、 甲府市(26,180g 8,355円 31.91円/100g)、前橋市(26,455g 7,564円 28.59円/100g)およびさいたま市(26,503g 8,483円 32.01円/100g)の順となっています。

 


物価の優等生(鶏卵)が高騰している

2013年12月12日 16時59分22秒 | 社会・経済

このところクリスマス用のケーキやお節に使われる伊達巻の原料の一つであり、物価の優等生である「たまご(鶏卵)」の卸売価格が高騰し、各方面に影響が出だしているとTVをはじめとしたメディアをにぎわしています。

◇鶏卵の入荷量・卸売の動向

下図は、鶏卵の入荷量・卸売価格の動向について、農林水産省のHPに掲載されているものを転載したものです。

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それによれば、最近の卸売価格は、11月上旬には250円/Kg(前年同旬比15.7%増)、中旬279円/Kg(24.6%増)、下旬298円/Kg(24.7%増)と大幅な値上がりをしています。
値上がりの原因は、価格安定対策である鶏卵生産者経営安定対策事業の成鶏更新・空舎延長事業により採卵鶏が減少したことと、夏の猛暑により採卵鶏が大量に死亡したことにより、鶏卵の生産量が大幅に減少していることによるものと言われています。
その影響は、今後徐々に家計に表れてくると思われますので、家計における近年の鶏卵の推移を明らかにしておきたいと思います。
方法は、総務省統計局の家計調査の勤労者世帯の「鶏卵」データを米国センサス局の季節調整法X-13により分析を行ったものです。

◇鶏卵購入頻度の推移

分析期間における100世帯当たりの鶏卵購入頻度は、1ヵ月当たり約390回前後で横ばい状態から、最近は2009年3月をピークとして若干の増減はあるものの減少傾向で推移しています。
このような傾向から、分析期間を通しては若干の減少傾向となっています。
具体的頻度は、1世帯当たり週に1回弱程度の購入頻度といえます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで0.2%の増加、2013年4月から9月は年率ベースで0.0%推移しています。

◇鶏卵支出金額の推移

分析期間における鶏卵支出金額は、2005年、2008年から2009年および2010年から2011年にかけての3回、後に説明する鶏卵の平均価格(鶏卵の卸売価格)が高騰した時に支出金額は増加しましたが、それ以外はほぼ減少傾向で推移しているといえます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで0.0%の横這い、2013年4月から9月は年率ベースで2.3%の増加傾向推移しています。

◇鶏卵購入数量の推移

分析期間における鶏卵購入数量は、購入時に平均価格が高騰する時期があったにもかかわらず、若干の減少傾向で推移しています。
鶏卵は、家計では最もポピュラーな食材の一つで、ケース(鶏卵10個入り)単位での購入が普通であり、価格が高くなったから数量を減らすということには直接つながらないもの思われます。
2,700g前後の購入数量から、このことからも週に1ケース(10個入り)程度の購入と推測出来ます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで1.4%の減少、2013年4月から9月は年率ベースで1.5%の増加傾向推移しています。

◇鶏卵平均価格の推移

分析期間における鶏卵平均価格は、鶏卵の卸売価格が高騰した時(2005年、2008年から2009年および2010年から2011年)に大幅な値上がりをみていますが、それ以外の時期は若干の値下がり傾向にあるものの、比較的安定した推移となっています。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで3.1%の値上がり、2013年4月から9月は年率ベースで1.7%の値下がり傾向推移しています。

◇鶏卵購入世帯数の推移

分析期間における1万世帯当たりの鶏卵購入世帯数は、若干の減少傾向にありますが、下のグラフでは大きな変動のように見えますが9,470±20世帯の変動幅にあり、購入世帯数は安定的に推移しているものと思われます。

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この1年間では、2012年10月から2013年3月までは年率ベースで0.3%の増加、2013年4月から9月は年率ベースで0.0%で推移しています。