宮崎民俗学会の旧ブログ

現在の公式ホームページは、https://mz1.mzfolklore.net/です。

宮崎県教育委員会刊行の報告書

2010年12月02日 01時22分19秒 | 文献
宮崎県教育委員会刊行の報告書

『宮崎県文化財調査報告書』
第一輯が昭和三十一年三月に刊行されている。
〈民俗資料〉に関しては、田中熊雄「椎葉山村の民俗資料」がある。田中熊雄の椎葉村調査は、昭和二十九年に尾向・十根川・不土野・松尾で行われた調査報告である。生産・狩猟・運搬・信仰関係の民具中心の調査であった。
また、日高正晴「東米良の民俗資料(狩猟用具)」は、昭和二十九年十一月十一日から十五日まで、そして十二月十八日、昭和三十年九、十月の三日間、昭和三十一年三月二日より三日間に行われた調査をまとめたものである。このほか、〈郷土芸能〉に関しては、「柚木野人形(上野村)」「俵踊(本庄町)」「バラ太鼓踊(八代村)」「神事(高原町)」「神楽(東米良村)」の報告がある。第一輯の内容は、民俗資料・郷土芸能・植物の項目であるが、今後の調査報告書は埋蔵文化財関連中心になっていく。

『日向の民俗芸能』
昭和三三年度から昭和三十五年度にわたって宮崎県教育委員会が行った初めての民俗調査をまとめた初めての刊行物である。当初より「今日の変転複雑な生活の中において、価値高い祖先からの文化遺産に接する機会を持つとともに、資料的には日本芸能史研究の一助とするため、本年度より三ヶ年計画で県内民俗芸能の詳細な記録に着手したものである。」と調査研究の重要性に理解を示している。全三輯の目次は次のようである。
  『日向の民俗芸能 第一輯』
   一、黒口の伝承ー棒術と臼太鼓ー(県文化財専門委員 柳宏吉)
   二、高千穂町三田井における伝承の一例ー棒術を中心としてー(同右)
   三、鴫野の棒踊(県文化財専門委員 安田尚義)
   四、俵踊(県立大淀高校教諭 吉野忠行)
   五、西都地方の臼太鼓踊(県文化財専門委員 日高正晴)
   六、カネオドリ(鉦踊)(県文化財専門委員 前田厚)
  『日向の民俗芸能 第二輯』
   一、高千穂の夜神楽(県文化財専門委員 柳宏吉)
   二、熊襲踊(県文化財専門委員 前田厚)
   三、バラ太鼓踊(県文化財専門委員 石川恒太郎)
   四、神楽(県文化財専門委員 安田尚義)
   五、東米良の夜神楽(県文化財専門委員 日高正晴)
  『日向の民俗芸能 第三輯』
   五カ瀬の源流をたずねてー五カ瀬町の太鼓踊り・棒術・神楽・荒踊りー(柳宏吉)
   泰平踊(石川恒太郎)

『民俗資料緊急調査報告書ー高千穂地方の民俗ー』(昭和四六年)
 国鉄高千穂線開通に伴い、高千穂地方の習俗、民間伝承、山村生活用具などの散逸・消滅が予想されたことから、国庫補助事業により、宮崎県教育委員会が昭和四十五年七月に行った調査報告書である。調査員には、祝宮静(名城大学教授)、田中熊雄(宮崎大学)、日高正晴(県文化財専門員)、沢武人(県総合文化施設準備事務局主任)、田中茂(県立博物館主事)に加え、県社会教育課職員、宮崎大学学生らが参加した。地元調査員としては、甲斐徳次郎・甲斐畩常・興梠弥寿彦・原慶二・西川功があたった。
 内容は、「第一編 総論」には、総観、衣・食・住、生産・生業、交通・運輸・通信、交易、社会生活、信仰、民俗知識、民俗芸能、人の一生、年中行事の項目があり、「第二編 各論」には、麻の生産習俗、麻の生産用具、田植に関する習俗、狩猟習俗、庚申信仰、神祭に関する習俗、誕生習俗、婚姻習俗、葬式習俗の項目があげられている。

『宮崎県民俗地図(宮崎県文化財調査報告書)』(昭和五三年)
 昭和五一年度(一〇〇か所)から五二年度(五〇か所)にかけて行われた聞き取り調査(国庫補助による「宮崎県緊急民俗文化財分布調査」)を元に作成された民俗地図である。この原資料は刊行されてはいないが、詳細な調査であるため、『宮崎県史 資料編 民俗1・2』では「民俗事象調査」として利用されている。原資料は現在宮崎県総合博物館は所蔵している。この調査は県下の民俗研究者・市町村文化財調査委員・小中学校教諭が当たり、話者には七〇歳以上の老人を二名以上選んで行われた。地図は沢武人(宮崎県総合博物館学芸課長)・泉房子(同学芸員)・立元久夫(文化課主事)が作成した。地図の内容は信仰・衣食住・農業・運搬・市・若者組・講・人生儀礼・年中行事など六一項目が取り上げられている。

『宮崎県の民謡』(昭和五六年)
 昭和五十四・五十五年度にかけて行われた民謡調査の報告書である。調査委員には、石川恒太郎(県文化財保護審議会委員)・片山謙二(都城泉ヶ丘高等学校教諭)・高橋政秋(北郷小学校教諭)・鳥集忠男(都城市文化財調査委員)・原田解(日向民謡保存会顧問)・有川綱彦(教育研修センター研修主事)・正入木久男(県教育庁指導主事)・奈須稔(宮崎県民謡会会長)・松永建(宮崎大学教育学部助教授)・柳田昭(大宮小学校教諭)・垣内幸夫(宮崎大学教育学部講師)・川添益男(県教育庁指導主事)があたり、現地調査員としてのべ六三名が参加している。
  Ⅰ「民謡調査の概要」
  Ⅱ石川恒太郎「民謡の背景」
  Ⅲ片山謙二・原田解「宮崎県民謡の概観」
  Ⅳ「本県の民謡」
  Ⅴ「民謡に関する文献」
 また、この報告書には『宮崎県の民謡(文献集)』も同時刊行されている。
   片山謙二「諸塚の民謡」
   鳥集忠男「南九州の歌謡」
   鳥集忠男「ふるさとの歌」
   原田解「五つの川の唄」

『宮崎県の諸職』(昭和六三年)
 昭和六十一・六十二年度に文化庁の指導と補助金を元に作成された報告書である。「宮崎県内各地に伝承されてきた様々な生活用具やその他の用具・用品等を製作・加工する伝統的技術は、地域に根ざした無形の民俗文化財としてまた、優れた工芸技術の基盤として価値の高いものであり、それに使用されてきた用具類には注目すべきものが少なくない。ところが、これらの用具類も、近時の新しい素材や技術の実態及び変遷について調査・記録し、関係資料の収集・保存・活用あるいは伝統的工芸技術の保存に資することを目的とする。」とある。調査件数は、昭和六十一年度が一二〇件、六十二年度が六〇件の合計一八〇件の内、一六五件を収録した。さらにその中から一〇人の諸職について細かく記載されている。その項目は、かるいづくり(飯干五男・日之影町)、木地師(小椋幸四郎・五ヶ瀬町)、碁石づくり(黒木芳文・日向市)、和紙づくり(山崎弘・西都市)、薬づくり(深田一子・川南町)、手揉茶づくり(大石久次・都城市)、弓づくり(坂元秀明・都城市)、石工(久島修・日南市)、はつり師(福山栄・日南市)、船大工(中村正二・串間市)である。
 調査事務局には宮崎県教育委員会文化課があたり、調査委員には、山口保明(県史編さん室主幹)・鳥集忠男(司法書士)・中武雅周(西米良村教育委員長)・山下正明(県史編さん室主幹)・矢口裕康(宮崎女子短期大学助教授)が、このほか二九名の調査員が調査に当たった。

『宮崎県の民俗芸能』(平成六年)
 平成四、五年度に行われた調査を元に作成された報告書である。調査者には片山謙二・黒木亜美子・興梠敏夫・高橋政秋・中武雅周・原田解・矢口裕康・山口保明・渡辺一弘に加え、県文化課の前田博仁・那賀教史があたった。
 宮崎県の民俗芸能の概要のほか、詳細調査として次の民俗芸能が取り上げられている。
 下北方六月踊り(宮崎市)・生目神楽(宮崎市)・青島臼太鼓踊り(宮崎市)・船引神楽(清武町)・田野雨太鼓(田野町)
 ・巨田神楽(佐土原町)・城攻め踊り(高岡町)・ヨイマカ太鼓台(国富町)・唐人踊り(綾町)・曽我兄弟踊り(綾町)
 ・田ノ上八幡の獅子舞(日南市)・風田の盆踊り(日南市)・広野のメゴスリ(串間市)・潮嶽神楽(北郷町)
 ・谷之口てひ踊り(南郷町)・高木のベブドン(都城市)・新馬場の棒踊り(三股町)・中原太郎踊り(山之口町)
 ・あげんま(高城町)・谷川の俵踊り(高崎町)・地頭踊り(高崎町)・山田バラ踊り(山田町)・細野の輪太鼓踊り(小林市)
 ・西長江浦の大太鼓踊り(えびの市)・香取神社の打ち植え(えびの市)・狭野神楽(高原町)・東麓の兵児踊り(野尻町)
 ・夏木の棒踊り(須木村)・石野田の臼太鼓踊り(西都市)・蚊口のじろま踊り(高鍋町)・新田神社のいぶくろ(新富町)
 ・狭上神楽(西米良村)・お里まわり(木城町)・通浜の三尺棒踊り(川南町)・寺迫の奴踊り(都農町)
 ・伊形の花笠踊り(延岡市)・永田のひょっとこ踊り(日向市)・門川神楽(門川町)・羽坂神楽(東郷町)
 ・鬼神野のいだごろ踊り(南郷村)・島戸神楽(西郷村)・小原練り(北郷村)・上鹿川神楽(北方町)
 ・家田の盆踊り・音頭(北川町)・市振神楽(北浦町)・釜の前チョイガマカ(諸塚村)・小崎の山法師踊り(椎葉村)
 ・上田原の楽踊り(高千穂町)・大人歌舞伎(日之影町)・古戸野神楽(五ヶ瀬町)。
 ちなみにこの巻末には宮崎県内の民俗芸能の一覧表が掲載されている。

(文責 渡辺一弘『宮崎県史 別編 民俗』草稿)

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
優秀な町内会・自治会 (阿部洋次郎)
2011-06-11 04:36:23
 私は長崎県の島原市で町内会長を務めていますが、この度、先進的な取り組みを進めている町内会・自治会を探しています。貴県にその様な会が無いものかお尋ねします。どうぞよろしくお願いします。
 尚、その会を訪れて研修をさせて頂ければ幸いです。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。