娯楽映画としての評判は上々のようだが、大鹿村のファンの1人として、いくつか不満な点がある。
大鹿村騒動記 - goo 映画
この村は私のお気に入りのスポット。長年かけて秋葉街道を走破する過程で、15年前から6、7回訪ねている。村の隅々まで車で走ったが、「日本で最も美しい村」と自称するだけあって、風景や伝統、人情の美しさは格別。春祭りに神社の境内で行われていた宴では、大変なもてなしを受けて感銘した。
村人たちの郷土愛の強さには並々ならぬものがある。その理由は、山奥にひっそりとたたずむ別天地(ヒマラヤの青いケシが咲く)であることを筆頭に、地歌舞伎、南アルプスの近景や中央アルプス・北アルプスの遠景、南北朝伝説や天領の史跡、中央構造線、2つの豊富な温泉、鹿肉(大昔、増えすぎた奈良の鹿を運んで来たとか)など魅力満載の風土だろう。
そんなこともあって、この土地への思い入れが強いため、都会(東京)目線のドタバタ喜劇は風景と乖離するばかり。
原田はなかなかいい味を出しているが、とても土着の人には見えない。この村には都会から移住してくる人も多いので、そのような設定なら納得だが・・・。
さらに、彼は女遊びゆえに、親友と妻に駆け落ちされたが、18年間も独身を通し、そんな妻を待つような男性とは思えないほど魅力的だ。
彼を初め村人は純朴で人情も厚いが、村を棄てて逃げた不倫関係の2人をこんなにも簡単に受け入れるだろうか?
歌舞伎の演目で原田の演じる景清は、源氏の世となる未来を見たくないから眼をくりぬいたのではなかったのか?
認知症になった妻をしっかり見届け、介護するつもりだとしたら、演目とは真逆のファンタジーになってしまう。
妻が代役で夫と共演することになる背景(台風による出演者の怪我など)もご都合主義でしらける。
役場の事務員の恋人は、東京へ働きに出て行ったが、名古屋に出る人のほうが多いのでは?
都会から来た性同一性障害の若者の件も付け足しのよう。
リニア新幹線の話も出てくるが、いずれもいまどきの話題を出すだけで中途半端。詰め込み過ぎの感がある。
地歌舞伎に焦点を絞るのはいいとしても、もっとリアリティのあるストーリー展開(例えば、原田夫婦がやむを得ず共演したとしても、元のさやには収まらずに、来た道を不倫の相手と戻って行くしかない・・・)であったら、と思う。
映画関係者の仲間内で楽しんでいるような印象だ。この村でなくては、という何かが感じられない。地歌舞伎の盛んな村であれば、どこでもよかったのかも?
大鹿村は信州で2番目に山深い土地。厳しい環境なので、村落共同体の絆は深く、そこから逸脱した人は生きにくいのでは?
村人たちは 優しさと同時に厳しさを持つはず・・・。あり得ないような甘い設定では共感できない。
坂本監督の前作「行きずりの街」でも、物語の破たんが気になった。
南アルプス赤石岳の懐に包まれたスケールの大きい景色や、貴重な史跡などの素材を生かし、「阿弥陀堂だより」のような美しい映像にしてほしかった。
★★★(★5つで満点)
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大鹿村騒動記 - goo 映画
この村は私のお気に入りのスポット。長年かけて秋葉街道を走破する過程で、15年前から6、7回訪ねている。村の隅々まで車で走ったが、「日本で最も美しい村」と自称するだけあって、風景や伝統、人情の美しさは格別。春祭りに神社の境内で行われていた宴では、大変なもてなしを受けて感銘した。
村人たちの郷土愛の強さには並々ならぬものがある。その理由は、山奥にひっそりとたたずむ別天地(ヒマラヤの青いケシが咲く)であることを筆頭に、地歌舞伎、南アルプスの近景や中央アルプス・北アルプスの遠景、南北朝伝説や天領の史跡、中央構造線、2つの豊富な温泉、鹿肉(大昔、増えすぎた奈良の鹿を運んで来たとか)など魅力満載の風土だろう。
そんなこともあって、この土地への思い入れが強いため、都会(東京)目線のドタバタ喜劇は風景と乖離するばかり。
原田はなかなかいい味を出しているが、とても土着の人には見えない。この村には都会から移住してくる人も多いので、そのような設定なら納得だが・・・。
さらに、彼は女遊びゆえに、親友と妻に駆け落ちされたが、18年間も独身を通し、そんな妻を待つような男性とは思えないほど魅力的だ。
彼を初め村人は純朴で人情も厚いが、村を棄てて逃げた不倫関係の2人をこんなにも簡単に受け入れるだろうか?
歌舞伎の演目で原田の演じる景清は、源氏の世となる未来を見たくないから眼をくりぬいたのではなかったのか?
認知症になった妻をしっかり見届け、介護するつもりだとしたら、演目とは真逆のファンタジーになってしまう。
妻が代役で夫と共演することになる背景(台風による出演者の怪我など)もご都合主義でしらける。
役場の事務員の恋人は、東京へ働きに出て行ったが、名古屋に出る人のほうが多いのでは?
都会から来た性同一性障害の若者の件も付け足しのよう。
リニア新幹線の話も出てくるが、いずれもいまどきの話題を出すだけで中途半端。詰め込み過ぎの感がある。
地歌舞伎に焦点を絞るのはいいとしても、もっとリアリティのあるストーリー展開(例えば、原田夫婦がやむを得ず共演したとしても、元のさやには収まらずに、来た道を不倫の相手と戻って行くしかない・・・)であったら、と思う。
映画関係者の仲間内で楽しんでいるような印象だ。この村でなくては、という何かが感じられない。地歌舞伎の盛んな村であれば、どこでもよかったのかも?
大鹿村は信州で2番目に山深い土地。厳しい環境なので、村落共同体の絆は深く、そこから逸脱した人は生きにくいのでは?
村人たちは 優しさと同時に厳しさを持つはず・・・。あり得ないような甘い設定では共感できない。
坂本監督の前作「行きずりの街」でも、物語の破たんが気になった。
南アルプス赤石岳の懐に包まれたスケールの大きい景色や、貴重な史跡などの素材を生かし、「阿弥陀堂だより」のような美しい映像にしてほしかった。
★★★(★5つで満点)
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