日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

花見の旅in信州 2013三日目

2013-04-13 07:33:59 | 甲信越
出発します。昨晩世話になったのは「あいや旅館」でした。その名の通りビジネスホテルではなく、商人宿とも違う、純然たる旅館といえばよいのでしょうか。最も近いのが正月に奈良で泊まった「ホテル美松」で、ややくたびれていながらも家庭的な雰囲気がよく似ています。
八畳の和室は一人旅には十分すぎる広さで、石造りの風呂も寒い夜にはことのほかありがたく感じられました。そして、何よりよかったのが朝食です。焼鮭、厚焼き玉子、おひたし、お新香、焼海苔にご飯と味噌汁というのがその内容で、文字にすれば特にどうというほどのものではありません。しかし、宿の朝食といえばビジネスホテルの貧相な朝食サービス以外ほとんど知らない者にとっては、一品ずつ皿と小鉢と茶碗を使って出される朝食に、作り手の愛情というものが感じられます。味噌汁に使われたふきのとうの苦みが春らしく、おかわりを勧めてくれる女将のもてなしも、割り切ったビジネスホテルでは考えられません。こぢんまりした食堂の外には、これまたささやかながらも庭が造られ、大きな窓から朝日が差し込んできます。高級旅館のもてなしとはあくまで別物ながら、満足できるのはどちらも一緒で、たとえていうなら高級割烹に対する居酒屋のごとき居心地のよさがこの宿にはありました。
花見の最盛期に伊那市街の宿を押さえるのは至難の業で、ここも平日だったからこそ飛び込めた宿だけに、再訪の可能性が低いのは残念です。しかし、一期一会に感謝したくなる、心から満足できるよい宿でした。最後は三つ指ついた若女将に見送られて立ち去ります。

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