萬蔵庵―“知的アスリート”を目指すも挫折多き日々―

野球、自転車の旅、山、酒、健康法などを徒然に記載

インドを走る!part2 第29話「ラジギール」

2009年08月05日 | 自転車の旅「インドを走る!」
1980年4月22日(火)晴れ

パトナのホテルを朝六時ごろ出る。まずはガヤへ行くつもりで、ガヤ、ガヤとしきりに叫んで道を確認しながら街を抜けたのだが、ついにガヤへの道はわからず、ビハールへ行くことになってしまう。私の理解力不足の所為なのか、インド人たちのいい加減さの所為なのか。ガンガ(=ガンジス川)沿いの道で気分のいいコースであったのがせめてもの救いであった。

結局、当初予定していたガヤ⇒ブッダガヤ⇒ラジギールのコースが、ラジギール⇒ブッダガヤ⇒ガヤという逆周りになる。距離的には同じなので、まあいいか。10時過ぎには休んだ。ドライブインのオヤジさんは日本語を話す。結構うまい。この辺、余程沢山の日本人が来るようだ。10時~15時ぐらいまではすざましい猛暑なので、ここの大木の木陰にある麻で編んだ簡易ベッドに15時まで転がって休んでいた。

いくらか涼しくなった15時過ぎに出発。舗装の照り返しはまだまだ強い。イヤイヤ走る。時々、サイケレ(=自転車に乗ったインド人)が私に競争を挑んでくる。ある程度スピードを出し、相手が必死になってついてくる時間を多めに取り、相手の疲れを見てとって一気にブッ千切る。これで大体サイケレは見えなくなる。

ようやく涼しくなったころビハールの街に着く。ビハールではナーランダホテルに泊まる。食事がインド料理しかなく、ほとんど食えず。オムレツとかトーストがあればいいのであるが、大きな街でないとそれは無理だ。インドカリーを朝昼晩食べて、腹を壊した経験から、どうしてもカリーを敬遠してしまうが、これではいかん。体力がつかん。と思いつつ、ベッドに横たわる。

明日はいよいよラジギール、頑張るぞ。


1980年4月23日(水)晴れ

ラジギールへは十時半ごろ着く。ビハールから22キロの道のりであったが、向かい風の上、食わず嫌いでインド食を食わなかった為か、えらくしんどく感じた。とにかく暑い。風も強く、その風が熱風ときているからたまらん。ここはインドでは珍しく山(丘と言った方がいいかもしれぬ。)があって、景色に起伏のあるところだ。これが、せめてもの慰めか。

ラジギールへ着いて、まずは、日本寺へ行ってみる。加藤上人という人が出てきて、ここに泊まれるかどうかを訊ねたが、今はお寺ではツーリストを世話できないとのこと。残念。それでも、日本製の即席ラーメンをご馳走してくれた。ありがたし。

しかたないので、近くのツーリスト・バンガロールNO2というところに宿をとった。一泊素泊まり4RS(120円)である。食事は近くのマルケット(市場)でとる。インド料理しかない。インドカリーは食いたくない、などという贅沢はもう言ってられない。これを喰わねば、私はこの地で倒れ、ハゲタカのエサになってしまうのだ。

半分、どうにもしかたない気持ちでベジタブルカリーとチャパティをオーダーし、食べてみる。ところが、腹の減っている所為かこれが旨い。くそ暑いこの気候、この大地にはやはり、土地の食べ物が一番なのだ、今まで敬遠していた私が愚かだったのだ。

夜は寝苦しかった。如何せん、ベッドが夜になっても熱いままである。昼間は出なかったシャワーの水が出るようになったので浴びる。気持ちよし。近くに温泉がある、と聞いたが、疲れていて行けず。明日にでも行こうと思い寝る。宿に沢山の子供がおり、ものをねだりに、部屋に入ってくる。追っ払って、ドアを閉めても、外からドアをノックしてなんとか、取り入ろうとする。まったく。いつものことながら腹の立つことである。


1980年4月24日(木)晴れ

今日も晴れ。乾季のインドで晴れは当たり前のようだ。月日を書いた後に、いちいち「晴れ」と記すのが馬鹿馬鹿しいことに気づいた。晴れ以外の天気だったら記すことにする。もっと早く気づくべきことであった。

朝、目覚めて汗ばんだ身体をシャワーで流す。気持ちよし。それから、マルケットへ行き食事をしてからサンティストウパや温泉のある方へ自転車で散歩に行く。こちらの方が開けているというか、観光地ズレしているというか。とにかく、垢抜けてはいた。

しかし、食べ物は高くてまずいし、コーラもぬるい。店の主人は私がマルケットの方で食事をしていてると言うと、あそこは良くないとけなす。しかしながら、実際問題としてこっちの方がよくない。向こうは観光地化されておらず、地元のインド人たちの為の市場である。観光客から儲けてやろうという魂胆が微塵もないので落ち着けるのだ。生活に即した場所であるから、観光シーズンオフになっても、冷たいコーラを置いておく。こちらのようにシーズンオフになればどうでもいいという考えがない。

それから暑くなって来たので宿に戻る。少し休んだ後、山の上にあるサンティストーパへ行こうと思って行ってみるが、門は閉まっていて誰も居そうもない。しかたなく、温泉の傍の垢抜けただけの店へ行って暇を潰してから、宿へ戻ってベッドに横たわる。ゆっくりしたいのだが、ドアを開けておいたら、ガキどもが勝ってに入ってきて、物をねだる。特に日記をつけているこの三色ボールペンが欲しいらしい。まったくうるさい奴等だ。そうかといってドアを閉めると風が入らぬ。まことに居心地悪し。

シャワーを浴びて涼もうかと思ったが、今日は水が出ない。夜になってから、温泉に行ってみる。洞窟のような暗い所に深めの温泉がある。地元の人は服を着たまま入っている。私もスッポンポンだと何か言われそうなので、パンツだけはいて、こわごわと月明かりを頼りに温泉に浸かった。湯加減は丁度よく思ったより気持ちよし。但し、ガキどもが、プールの如くに使用してハシャギまわっているので落ち着かない。まったく、インドである。

帰りに、例の店で涼んでいると日本語を話すインド人のニイサンが来て、カメラを盗まれ、使い道の無くなった私のフィルムを売ってくれという。明日朝、この場所に持ってきてくれという。また、山の上のサンティストーパ(日本寺)はぜひ見るべきだと熱心にすすめるので、もう一日、ラジギールに居て、観に行こうと決心した。

(つづく)

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