グーグーだって猫である

大島弓子原作を映画化。ポスターには40代になってもかわいいキョンキョンとグーグーという名のかわいい猫が映っていて、猫好きには必見かな～と思いました。魅力的な街・吉祥寺もフューチャーされ、最近伸び盛りの上野樹里ちゃんも気になります。

2008年　日本　ヒューマンドラマ
2008年9月17日　マイカルシネマ・新百合ヶ丘
監督　犬童一心（ジョゼと虎と魚たち）
原作　大島弓子
出演　小泉今日子（センセイの鞄ほか）、上野樹里（ラスト・フレンズ、ジョゼと虎と魚たちほか）、加瀬亮（それでもボクはやってない、硫黄島からの手紙）
（出演作品などは私が観たものに限る）

吉祥寺に住む売れっ子漫画家小島麻子先生（小泉今日子）は、アシスタントが４人いて、締め切りに追われながらも頑張っています。しかし、猫のサバは腎臓を悪くして15歳で死んでしまいます。すっかり気落ちして作品がかけなくなってしまった麻子先生。しかし、吸い込まれるように入ったペットショップで出会ったアメリカン・ショートヘアのグーグーを飼い始め、また元気を取り戻し始めました。不思議な青年青自（加瀬亮）との淡い恋があり、アシスタントたちと新作に向けて準備を始めるのですが・・・。

キョンキョンは髪型、服装だけでなくしゃべり方、雰囲気がすべてふわ～っとしていて、した大島弓子の漫画に出てくる人みたいでしたね。40歳を過ぎて年相応の落ち着きがありながらも、キュートでまるで妖精みたいなキョンキョンはキャスティングに大成功。猫を飼っている漫画家にぴったりでした。森三中の3人とナオミ（上野樹里）のアシスタント4人は息が合っていてまるで森四中って感じ。メンチカツをおいしそうに食べ、カフェでお茶を飲み、ハモニカ横丁でお酒を飲み、井の頭公園で憩い、吉祥寺ライフを満喫している夢多きアシスタントたちは仕事仲間でありながら友人でもあります。この感じ、よく出ていました。ロックの野外ライブが何気に行われている井の頭公園や古い家具の山本家具店などはいかにも吉祥寺らしく、足が地に着いていました。

井の頭公園の自然の中、自由に歩きまわるグーグーをどうやって撮ったのかと不思議なくらいですが、無理な撮影はしていないとのことなので、何か特別の工夫があったのでしょうか？何匹もグーグーを用意して撮影したのでしょうが、キョンキョンに良く懐いて、かわいいしぐさをたくさん見せてくれました。猫好きにはたまらないシーンが満載です。
麻子は病気をしたりして独身女性の心細さを感じさせます。才能があって好きな仕事で成功し、淡い恋もして・・・。でも、人生はそんなに簡単にうまくいかないのですね。そんな時に傍らにいてくれるグーグー。しんみりとさせられました。

一方、原作は未見ですが、どうも脚本が面白くありません。麻子先生が倒れる直前のドタバタ追いかけ劇は取って付けたようで浮いているし、加瀬君は魅力が感じられませんでした。彼を生かしきれなかったか、キャスティングミスか？大島弓子ファンには原稿を描くシーンなど見所満載だったかもしれませんが、私には全体に薄く、軽い感じがしました。

例えば、グーグーに出会って一目ぼれしてペットショップから買って帰るのは分かりますが、「二匹目の猫は特ですね。前の猫の分も可愛がってもらえます」というような、簡単なものではないように思うのですが、2匹目の猫を飼ったことのあるみなさんは、どう思われたか聞いてみたいものです。私は前の猫をやはり腎臓病で16歳で亡くしましたが、持病のあるおばあさん猫を飼っていたわけで、1年後に無邪気で元気な仔猫を迎えたときに、あまりのギャップに着いていけない自分がいました。可愛いのに、新しい猫を受け入れられない自分がいたのです。飼いたかった猫は、あくまで前の死んでしまった1匹目の猫だと痛感しました。最終的には受け入れられ、今ではかけがえのない存在になっていますが、可愛がっていたサバとの別れは簡単ではなかったと思います。麻子先生には、こういう葛藤がなかったのでしょうか？全体に本来もっと、深く染み入る物語にしたかったではないかしら？