東方のあかり

東アジア(日、韓、中+その他)のまとまりを願ってこのタイトルにしました。韓国在住の日本人です。主に韓国発信の内容です。

人間を育てるのは人文学、読書だけ。

2024-04-06 10:10:15 | 韓国物
「人文学の危機」という言葉が出て久しい。大学で文学、歴史、哲学科は閉鎖し、
「文ソン」(文系で申し訳ありませんの意)という言葉にも慣れた。
しかし、本当に人文学は人生で全く役に立たないのだろうか。

自然科学は一つの質問から一つの答えを探し、社会科学は一つの質問から派生した
いくつかの答えのうち、妥当性の高い一つの答えを選ぶ。
しかし、人文学は一つの質問に皆が同じ答えを出してはいけない。人文学はすべて
の人の考えがすべて違うという多様性に基づいている。

こんな観点から東亜日報が、人文学が生活を豊かにし、社会問題を克服するのに
どのような役割を果たすのかをさぐり、人文学の底力を示そうという試みから企画
されたプロジェクトがありこの回は1920年4月23日生まれの金亨錫(キム・ヒョンソク)
さんの考えを紹介している。



     1920年平安南道生まれの103歳の学者・キム・ヒョンソクさん

価値は数字で測定され、効率が最高とされる時代だ。
人文学が居場所を失っているという診断も出ている。延世大学の金亨錫名誉教授(103)
は、ソウル鍾路区(チョンノグ)の東亜メディアセンターで行ったインタビューで、
「『人文学の危機』という言葉に同意しない」と強調した。
「『人生の目的』を問う人文学の価値は消えない」ということだ。

金教授は、「人文学がすべての学問のルーツだ」とし、「最近、人文学の重要性がさらに
高まっている」と強調した。倫理的、理性的判断力を育てる人文学の土台の上に、
社会科学、自然科学が花開いたという。

彼は「個人のすべての活動はひたすら全体のために存在するという全体主義が氾濫すれ
ばするほど人文学が重要になる」と話した。
続けて「ロシアとウクライナの戦争、イスラエルとパレスチナ武装団体ハマス間の戦争
など葛藤が尖鋭だ」として「時代を和解させるために必ず必要なのが人文学」と付け加えた。
金教授は「人文学の伝道師」だ。全国を回りながら人文学講演を開き、専攻である哲学を
基盤に文学、歴史学を混ぜ合わせた人文学的思考を解きほぐす。

エッセイ『永遠と愛の対話』(1961年・キムヨン社)、『百年を生きてみると』(2016年・デン
ストーリー)など60年余りの間に多数のベストセラーを出し、依然として現役コラムニスト
として旺盛に活動する秘訣だ。

彼は「企業でも部長や役員など管理者が人文学的基盤がなければ多様な構成員の考えを理解
しにくい」と指摘した。
「三星(サムソン)など多くの大企業で講義したが、特に役員たちが人文学の価値を認めて
いました。それぞれ異なる考えを持った構成員を率いるリーダーシップを育てる方法は、
ひたすら人文学、読書です。」

金教授が人文学に魅了されたのは中学生の時だ。
彼は平壌・崇実(スンシル)中学校3年生の時、試練を受けた。帝国日本が神社参拝を
強要し、これを拒否すれば学校に通えなくなった。後に詩人になった同級生の尹東柱
(ユン・ドンジュ、1917~1945)にどうするのかと聞くと、「神社参拝はできない」
という答えが返ってきた。彼も尹東柱の後を追って退学した。

キム教授は「図書館に行って毎日午前9時から午後5時まで本を読みながら学業の代わり
をした」として「この時、文学、歴史、哲学の本を数え切れないほど多く読んだ。
読書が人文学への道だった」と振り返った。

陶山・安昌浩(1878~1938)先生の演説も彼を人文学の道に導いた。
当時、西大門刑務所に収監中だったドゥサン(陶山)が療養のため仮釈放されたが、
キム・ヒョンソク少年の住む平安南道大同郡松山里に来て演説をしたのだ。
キム教授は「幼い頃にはキリスト教的見解で世の中を眺めながら神学者を夢見たが、
陶山の演説を聞いた後、さらに広い見解を持った人文学者になることを決心した」と
話した。陶山・安昌浩(アン・チャンホは韓国独立の英雄の一人)。
「卵を割って出てきたひよこのように、世の中が再び見えました。
陶山の演説とその時に読んだ本が人生の肥やしになりました。」

キム教授は「生涯哲学を勉強したが、ロシアの大文豪フョードル・ドストエフスキー
の『罪と罰』を通じて人間について知ることになった。エドワード・カーの
『歴史とは何か』で判断力を学んだ」と話した。

生成型人工知能(AI)「チャットGPT」が登場して1年になった。
次第にAIが人間の労働を代替するようになれば、人文学の色が消えるのではないか。
彼は笑いながら、「とんでもない」と首を横に振った。
「AIができないことが一つあります。ヒューマニズムですね。ヒューマニズムがなけれ
ば、大人は弱い子供を相手に戦い、悪を悪で返します。AIが人間のために、人間が人間
らしく存在するためには、ヒューマニズムを育て生かし立てる人文学が消えることはあ
りえません。」 (東亜日報ベース)
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