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ミズワラビの育て方

2007-05-26 00:07:23 | 育て方 (湿地植物など)

今回は ミズワラビ(水蕨) の水槽内での育て方について書いてみようと思います。ミズワラビは見かけがワラビ(蕨)に似ているのでこの名前がついています。日本では本州中部以南に分布し熱帯から亜熱帯に広く分布する水生のシダ植物なんですが熱帯魚を飼っておられる方には(日本産の)ウォータースプライトと言ったほうがイメージしやすいですね。でも帰化植物ではありません。以前は水田の雑草の一つだったそうですが除草剤が使われるようになってから姿を消し今では絶滅が危惧される植物になっています。
数年前 稲刈りの手伝いをしていた時に田んぼの中で他の雑草に混じって生えているのを見つけ(私にとっては以前からずっと探していた思い入れのある植物で自然に生えているミズワラビをこの時初めて見ました)コンバインで踏んでしまう前に株を持ち帰ってきたのですが 水草水槽に入れるだけで育つ…とはいかなかったんです。

 中央のがミズワラビです 栄養葉がかろうじて残っているのを探して撮りました

 中央の少し下で地面に張り付いているグリーンのY字型の集まりはリシアですね。こちらは結構普通に田んぼに生えてます。

何とか水槽内で育てることに成功はしたのですが辿り着くまでにいろいろと試行錯誤をしてしまったので記録を兼ねて水槽内育成までの過程を書いてみることにしました。

今回は教科書でしか見かけないような言葉がそこらじゅうに出てくるうえ相変わらず文章力もないのでいつも以上に内容が難解かも知れません。
私の見つけたミズワラビは畦(あぜ)や田の中に雑草として生えていました。コンバインで踏んでしまう場所に生えていたものを数十株ほど確保して持ち帰ったのですが ほとんどが5cmにも満たない葉っぱが数枚だけの小苗でそのうえ葉が針状の胞子葉のみだったのでウォータースプライトとは別の植物にしか見えない状態でした。
初めは水槽に浮かべるだけでそのうち育つか無性芽(むせいが)が葉の分かれ目あたりから出るだろうと思っていたのですが水草水槽に浮かべたり水中に植えたりしただけのものは溶けるように消えてしまいました。
屋外の日のあたる場所で田土+ひたひたの水で育てたものはそれなりに大きくはなりましたが一度胞子葉が出てしまった株は新しい葉が出てきても胞子葉ばかりで栄養(体)葉は出てきませんでした。見つけたのが秋だったのですぐに冬になり枯れてしまいました(日本では冬になると枯れるので一年草扱いです)無性芽も出なかったのでこの方法も失敗に終わりました。温室があれば枯れないので話は違ってくるのでしょうが仕方がありません。
簡単に無性芽が出るものでは無さそうなので冬場を乗り切るためにミズゴケを敷いたものと土を入れたものの2種類のプラケースを用意してその中にミズワラビを植え水槽に浮かべて温度と湿度を確保しました。
ミズゴケ植えのものは肥料が含まれていないので新しい葉っぱは出るものの成長速度が遅く株もあまり大きくなりませんが枯れはしないので冬は越すことができます。
もう一方の土で植えたプラケースについて詳しく説明すると 土は田土では無くたまたま手元にあった籾まき用の培養土(稲の苗を育てるための専用土で見かけは水草水槽で使うソイル状ですが簡単につぶれて土に戻ります)を使いました。理由は殺菌されているので病気の心配が無いことと雑草の種が混じっていないので管理が楽なのと稲の初期発育に必要な肥料が含まれているからです。





その土にひたひたになるところまで水を入れミズワラビをピンセットでそっと植えてあります。ミズワラビは蛍光灯の光でも新芽を出しますがやはりここでも細長い胞子葉しか出てきません。ミズワラビは環境が悪いと若い株でも種の保存のためか胞子葉を出し始め一度胞子葉を出すとその後は環境が変わっても栄養葉(春菊の葉のような先が丸い方の葉ですね)は出てこないようです。株が大きくなっても水上葉は無性芽をつけないようなので他の方法を考えてみました。1つは胞子葉の葉の裏が巻き込んできて葉が棒状になり内側が黒くなって胞子が熟してきたようなので前葉体から新しい芽を発芽させる方法です。葉の裏側が黒くなっている胞子葉を切り取ってプラケースの中の土の上(水はひたひた状態です)に適当に並べておくとうまくいけば数週間で小さい芽が重なるように出始めます。芽の出方からみて無性芽ではなさそうです。前葉体(ぜんようたい)を探してみると株の根元にそれらしい少し濃いめのグリーンの3mmから5mmの小さい葉っぱのようなものがあるのでそれが前葉体かもしれません(前葉体は一般的なシダでは1cmぐらいでハート型をしています)



小さくても栄養葉の葉が出たらしばらく様子を見て胞子葉が出る前にそっと引き抜いて水槽に浮かべると成長を始めます。ここまで来たらあとはウォータースプライトを育てるのと同じです。
違う方法としてプラケースで育てた元気の良さそうな株を根の泥を落してから株が溶けて無くなるまでに無性芽が出ることを祈りながら水槽に浮かべます。リスクはありますが葉が枯れてしまうまでにうまくいけば何株かの無性芽を得ることができます。こちらの方法だと無性芽は水槽の環境になじんだ水中葉なので後はそれほど気を使わなくても成長してくれます。
水槽の中で水中化してしまえばあとはウォータースプライトと同じ扱い方で増やすことができます。
水中化したミズワラビはウォータースプライトと全く区別がつきません。私にはどう見ても同じものにしか見えません。育成中の苗を水草水槽で育てる場合 水槽にヤマトヌマエビが入っているといつの間にかヤマトヌマエビのランチになってしまうので要注意です。
ミズワラビは一旦水槽になじんでしまうとそれほど強い光でなくても水に浮かべているだけで育ちます。もちろん肥料分は必要です。やはり魚は何匹かでも入っていた方が窒素分の補給になりミズワラビも元気に育ちます。ミズワラビが水面を覆いだすと水槽の中は光が届きにくくコケも出にくい環境になるので私は園芸用の液肥を使っています。ほんのちょっとでよく効き何といっても安上がりです。肥料によってはエビや魚に良くないものもあるようなので使う時はよ~く観察しながら微量から始めて下さい。


今回のおまけ

うちには何本かの「ほったらかし水槽」があります。中の住人が死なない程度にそっと水を抜いてそっと足しているだけです。水槽は45cm規格水槽でフィルターはニューブリラントフィルターです。フィルターも月1回程度軽く飼育水の中ででくちゅくちゅっと数回握るだけです。ガラス面の掃除は石巻貝にまかせっきりです。

 ほったらかしアメリカンスプライト水槽です。おひたしに出来そうでしょ!

 こっちはほったらかしリシア水槽です。もう盛り上がってしまっています。水槽の中はミクロソリウムの林になっていますが暗すぎて写真が撮れません。



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4 コメント

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こんばんわ。 (coryvirus)
2007-05-29 01:12:44
こんばんわ。
ご無沙汰しておりました。

mizuwarabiさんと同じ名前の水蕨ですね。
ミズワラビも含めて、雑草はすべて飼育が容易だと思っていましたが、なかなか人の手で育てようとすると難しいんですね。

こうした飼育方法は、大変貴重な資料として生きていきそうですね。
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簡単に考えていたのですが (mizuwarabi)
2007-05-29 19:01:11
coryvirusさん こちらこそご無沙汰です。
そうですね この植物から名前をいただきました。
水槽に順応してしまえば簡単に増えるのですがそれまでの過程が本当に試行錯誤でした。ミズワラビを見つけるコツは収穫期(水を抜いてしばらくしてから)に田んぼのあぜにしゃがんで目を凝らして覗きこむ・・です。水草水槽で人気のホシクサも田んぼの雑草扱いだったそうですがこっちは出会うのがもっと難しそうですね。
返信する
今回の記事は・・・ (ossyan)
2007-05-30 01:11:55
HNの元となった水草だけあって、力が入っていますね。それに田んぼの写真から育成中の写真もあり、記事作成に時間を費やして丁寧に作成されていてとても楽しめました。

ミズワラビを田んぼから取ってきて育てる話、面白いですね。
子供のときはザリガニを取りに田んぼに行って遊びましたが、もちろんそのときは水草なんかには目もくれなかったので、水草があったか覚えていません。でも結構深い下水にアナカリスのようなものが生えていたような記憶があります(なぜ水中に草が生えているんだろうと思ってた)。

今は田んぼに行く機会はないのですが、注意深く観察すれば水草を発見できるかもしれないと思うと、ちょっと足を運びたい気がしてきました。

ところでミズワラビって、水中化するまでは気難しいようなので、ツンデレ系水草って分類・・・な訳ないか。
ちょっとすべったコメントで申し訳なく。
返信する
2年越し (mizuwarabi)
2007-05-30 13:03:49
ossyanさん
長文の記事にお付き合いいただきありがとうございます。全ての水槽のウォータースプライトをミズワラビに置き換えるのに2年かかってしまいました。
ウォータースプライトを見たらミズワラビも思い出して下さいね。私は田んぼや水路を観察するのが大好きです。同じ場所でも季節によって変化があります。ビオトープの素材になりそうな植物はそこらじゅうに生えていますよ。
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