ミズカタヒデヤの「外部脳」

Hideya Mizukata's "OUTBRAIN"

一光/甲子園口/ラーメン/6点

2008年12月30日 | 飲食店
料理人さんっぽい人の写真を飾った店構えは気に入りませんが、味はなかなか。看板の塩ラーメンは魚系のダシであっさりすっきり。そこに超コッテリとしたチャーシューがドカンと盛り付けられ、何とも不思議な感覚です。どっちやねん?というよりも、どっちも楽しめる、ということでしょうか。

カギロイ/青山/5点

2008年12月11日 | 物販店
オーダーメイドの古材家具店です。前から行ってみたくて何度も探し、見つからずに路頭に迷っていたのですが、今回ついに発見。うれしかったのですが、店内は期待外れでした。

いや、商品は一つ一ついいモノだし、ワタクシ個人的にとても好みなのですが、店内がインテリアショップとしてはあまりに狭く、うまく陳列できていないんです。和を意識した家具が多く、ソファなど低い座面なので、狭い店内を土足で歩くとどうにも小汚い印象ばかりが先に立ってしまう。これはちょっと別の場所でもいいからもっとゆったりした見せ方をせねば、と思っていたら、横浜のアクタスに出店したそうです。今度そっち行ってみよう。
http://www.orientalspace.com/

イータリー/代官山/3点

2008年12月11日 | 物販店
イタリア食材店。本邦初の本格派を標榜するだけあって、パスタの種類は尋常じゃない。けど、1000円とかするのはいかがなものか。原価に輸送量を上乗せしただけの値段じゃあない。品揃えのためにこの値段を払うヒトはいません。明らかにブランド料です。食材店とは思えぬインテリアや陳列は、きっとブティックを意識してのことでしょう。毎日の食生活で相場からかけ離れた値段を払う商売が成立するのは、東京の一部だけではないか、と。ワタクシはカルディかコストコで十分です。

代官山ヒルサイドテラス/槙文彦/9点

2008年12月11日 | 複合施設
建築的にも商業的にも街づくり的にも大成功を収め、かつ、現役で活躍する掛け値なしに素晴らしい建物です。この全く収益性の乏しい建物が代官山の資産価値を大いに高め、東京西部エリア、あるいは全国各地に街並み形成型の複合開発のフォロワーを生み出しました。1階を店舗で路面に開放し、2階にオフィス、3階に住居、の構成は日本における普遍的な都心部のビルディングタイプです。

特筆すべきは、30数年に渡る段階開発であることでしょう。古い建物が新しい建物が混じることで、ソフトの多様性や許容性が内包され、クリエイティビティが刺激される。それは近年の大規模複合開発が逆立ちしても真似のできないことなのです。
http://www.hillsideterrace.com/

サルガク/代官山/5点

2008年12月11日 | 複合施設
地下1階地上2階の小さな建物が6棟ほど中庭に面して並んでいるという、いかにも代官山らしい空間構成のファッションビルです。裏路地を人工的につくろうとした戦略には拍手したいところなのですが、ファサードが明る過ぎて猥雑感がないこと、同じような空間ばかりで目的性に乏しいこと、袋小路ばかりで回遊がないこと等の明らかな難点があります。そのためか、金曜日の昼下がりなのに全くの閑古鳥。建築としてはいいのかも知れませんが、商業としては失敗かも。http://www.sarugaku.ne.jp/

ジャンパー/ダグ・リーマン/3点

2008年12月07日 | 映画
テレポーテーション能力を持った青年と彼の命を狙う謎の組織、の追いかけっこの話です。最近こういう漫画っぽい作品が増えてきたのは、きっとCGの影響が大きいのでしょう。この作品も、筋書きとか世界観とかほとんど覚えてないけど、世界中の色んなところに主人公がぐわん!と空間を揺らして登場するシーンだけが強烈に印象に残っています。それだけで十分、な映画なのでしょう。

デジャ・ヴ/トニー・スコット/7点

2008年12月07日 | 映画
テロ事件に巻き込まれて殺された女性を救うためにタイムスリップを敢行する刑事さんの話です。殺伐とした現実を描く社会派っぽいサスペンスが、いきなりSF的非現実の世界に飛び込むもんだから、途中かなりトンデモないことになっちゃったんですが、ラストの話の纏め方が素晴らしかったので、中々の作品に仕上がっています。

「正確に4日前であればどこでも覗けるマシン」っていう、いかにもご都合主義的な機械が登場するのですが、それを捜査に使っているうちに刑事が「テロを未然に防ぎ、女性を助けよう」と考えてしまう、ここまではよくある話です。しかし、実際に過去に行って女性を救うと、現在死んでいる女性がいなくなってしまうわけで、そもそもその刑事が過去に行く動機がなくなってしまうんですね。

その矛盾を解決するのがパラレルワールドの概念なのですが、実はそうすると「矛盾ではないがもっと厄介なあること」が発生してしまう。その厄介事を解決するために、この作品では一つの鮮やかな解決策が提示されます。観る者に思わず膝を打たせるその解決策が提示され、あっさりエンディング。きれいで心憎い演出です。

ユージニア/恩田陸/8点

2008年12月05日 | 小説
怖い話です。恩田先生の気味悪い世界が行間から立ち上る久々の傑作です。かつて古都の旧家で起こった壮絶な大量毒殺事件。ショックと疑念を抱えて後の人生を過ごす関係者に次々と取材を試みていくルポライターの目線で物語は構成されています。

すぐに自殺した犯人が見つかり、事件の経緯は明らかになったものの、関係者はいずれも完全に腑に落ちておらず、気の休まらない年月を過ごしてきた。真相は別のところにあるのではないか、もしかしたら、おぞましい真犯人がいるのではないか。その疑惑の中で、真犯人の怪物じみた怖さや、その裏側にある更に恐ろしい背景、また、事件に加担した、あるいは見過ごした人たち懊悩が、関係者の話の断片にチラリ、またチラリと現れていく様が、実に実に、怖いんです。

怖さの本質は、実体にあるのではなく、伝達媒体の虚像の方にある、っていうことを思い知らせてくれます。ちなみに、主犯、実行犯、動機等、どことなく何となく提示されますが、絶対的な真実は明示されません。確かに、もうどうでもいいこと、という気もしてきます。

後、インタビュー先の一人に、かつて事件に巻き込まれたルポライターのキャラクターを持たせているために、読み手もまた「この読書を通じて事件に関与してしまう」のではないか、という妙な恐怖感を漂わせることに成功しています。それもまた怖くって。