習作の貯蔵庫としての

自分の楽しみのために書き散らかした愚作を保管しておくための自己満足的格納庫ですが、もし感想をいただけたら嬉しく存じます。

若き血に萌ゆる者

2014-03-13 20:24:13 | ノンセクション
  ♪澄みし青空 仰ぎ見て
   遥けき理想 結ばんと
   香れる桜花の 咲く丘に
   ああ 励みし友垣が 集う庭♪

 卒業シーズンにかこつけて、今日はこんなテーマ。

 校歌ははたして日本だけのものなのか。


 その気になって調べれば、たぶんすぐわかる話だが、ググる前に雑談しようか。

 はてさて、
 パリ大学の校歌、オックスフォード大学の校歌、ケンブリッジ大学の校歌、そんなのあるんだろうか(※1)。
 ハーバード大学の校歌、プリンストン大学の校歌、マサチューセッツ工科大学の校歌。そんなもんあるんだろうか。早稲田大学校歌(※2)、みたいなああいうのはあるんかいな(※3)。
 あるいは応援歌は。たとえば『紺碧の空』とか『若き血』みたいな。または寮歌でもいい。『ああ玉杯に花受けて』とか、『紅萌ゆる』とか(※4)。


 海外の学校の事情に私は詳しくないが、想像するに、日本のような校歌とか学校の応援歌というのはなさそうな気がする。たぶん。ああいう学校文化は、おそらく桜の下でみんなで泣く卒業式と同じく、日本独自の小笠原的な進化を遂げてきた文化だろう。海外では記念に先輩のボタンをもらって青い空に捨てたり、卒業式で泣かないと冷たい人と言われたりはしない、とされるように(※5)。
 あ、でも、たぶん日本の植民地だった朝鮮半島や台湾ならば、日本と同じような校歌・応援歌の学校文化があってもおかしくないだろうね。韓国なんて、日本統治時代のなごりで日本と同じような高校生の制服が男女ともあるもんね。ドラマで見かけるところでは(※6)。

 では欧米はどうなんだ。
 ヨーロッパや中南米のサッカーなんて、学校スポーツではなく地域のクラブチーム単位のスポーツかもしれないが(※7)、英国のラグビーなんかは、イートン校みたいなパブリックスクール同士の対抗戦ではぐくまれてきたスポーツ文化だよねえ(※8)。
 あるいはアメリカのアメフトは。
 アメリカの映画やドラマだと、学校のヒーローといえばアメフトのクオーターバックだし、学校のアイドルといえばチアリーダーだ。じゃ、チアリーダーたちがアメフトの応援をするときはどんな音楽に乗って踊るんだ。日本でも学校オリジナルの応援歌や応援マーチ(※9)ばかりではなく、『狙いうち』や『ルパン三世』のように既存曲を流用することはごく普通にあるわけだが(※10)、そのうち一歩すすんで、うちの学校専用のスポーツ応援のテーマソングを作ろうって自然とならないもんかねえ。


 いや、なんか校歌じゃなくスポーツ応援歌の話にいつのまにかなっちゃったけどさ。
 しかし、こういうミクロな学校文化の対外比較の話題ってのは当の学校教育の教授内容ではないし、意外とメジャーメディアでも取り上げられない話だから、疑問を持ち出すときりがないわけさ。機会があったら、海外の現地学校の卒業生にでもきいてみたいね。


 で、冒頭の話の結論は?

 まあ、それは、たぶんググればわかることだろうから、私が説明することもないでしょう。


(※1)
まあ、あちらの総合大学というのは一つの学校というよりはいくつもの大学の集合体みたいなものだから、われわれが思うような学校としての一体感はないのかもしれないが。


(※2)
早稲田大学の校歌のタイトルを『都の西北』だと思っている向きもあるかもしれないが、早稲田大学校歌は正式名称が『早稲田大学校歌』である。


(※3)
ちなみに東大は今も昔も校歌に該当するものはないんだよね。入学式や卒業式では何を歌うんだろう。何にも歌わないんだろうか。正式な校歌ではない『ああ玉杯』を今の世に歌いはしないだろうしなあ。今度、機会があったら東大卒の上司に聞いてみるか。
余談ながら、私の出た大学は、入学式でも卒業式でも校歌は歌っても『君が代』は歌わなかったし、壇上に日の丸もなかった。そのかわりにでっかい大学の旗と、創立者(I田D作先生ではないw)のでっかい肖像画を掲げていて、最初はけっこう驚いたものだったっけ。


(※4)
これらも正式タイトルは『ああ玉杯』じゃなく、『第一高等学校第12回記念祭寮歌』、『紅萌ゆる』じゃなく『第三高等学校逍遙の歌』であるはずだ。
しかし、話はそれるが、昔、戦前の日本人は東大や京大の出身じゃなくても『ああ玉杯』や『紅萌ゆる』を歌えたというのは、今日の視点からすると不思議な気がする。早大や慶大の関係者じゃなくても早稲田ファンや慶応ファンで、野球の早慶戦に熱狂して、双方の応援歌をみんな知っていたというのも今から見れば不思議な感じがする(たとえば、女優の三田佳子は、慶応ファンだったから「三田」という芸名をつけたらしい)。
もっとも、そんなことを言ったら、戦後のわれわれだって、読売グループの関係者じゃなくたってジャイアンツを応援して『闘魂こめて』を歌うし、阪急阪神グループの関係者じゃなくたってタイガースを応援して『六甲おろし』を歌う。ジャニーズの一員じゃなくてもジャニーズの歌を愛唱するように。
自分と縁もゆかりも何にもなくても、池田高校を応援したりPL学園を応援したりしたことのある日本人はいっぱいいる。私なんて、自分の出た高校の校歌はろくに覚えていないくせに、「あ~あ~、PL~♪」と、PL学園の校歌を歌えたりする。それもどうかと思うが。
そんなことまで考えると、今よりは相対的に娯楽の少ない時代に、今よりずっとエリートだった旧制高校や大学の世界に一般市民が憧れて、今日のプロスポーツのように熱狂していたのも不思議なことではあるまい。


(※5)
『卒業式の歴史学』(有本真紀/講談社選書/2013)は読みやすくて楽しいので推奨である。


(※6)
台湾もそうなんだろうか。


(※7)
これについては、以前に別稿で触れたが、日本の野球なんかも将来的にはヨーロッパや中南米のサッカーのようにプロを頂点とする地域のクラブチームを活動単位とする形態になっていくのがよい、のかもしれない。
現状、日本では野球もサッカーも小中学生については地域のクラブチームが活動単位なのに、高校生になると、とくに野球は完全に学校の部活が活動単位になってしまう。考えてみれば奇妙なことである。
まあ、旧制の中等学校(中学校、高等女学校、実業学校、師範学校など)が戦後に新制中学と新制高校に分かれる際に、甲子園大会などを含めたスポーツ主体としての機能を新制の高校の側が継承し、新制中学のほうはしなかったから、というのが答えなんだろうが。
ともあれ、こんなに長い間、学校対抗の高校野球という運営形式がなされてきて、ステークホルダーの数も経済規模も膨大になってくると、他のマイナースポーツのように簡単には競技システムのあり方を変えることは難しいだろう。意図的に変えようとしたら、それこそ五十年や百年は要する改革事業だろうな。


(※8)
この違いは、英国においてサッカー(フットボール)が下層階級のスポーツで、ラグビーが上流階級のスポーツであるという現象とおそらく因果関係があるが、ここでは深入りしない。


(※9)
早大の「コンバットマーチ」、慶大の「ダッシュケイオウ」なんて、あまりにも有名な旋律すぎて、多くの日本人にとって、それぞれ早大と慶大の曲だという起源がかえって知られていない、というそんな曲だが、楽曲にとっては、それだけ「一人歩き」しているということで名誉なことなのかもしれない。


(※10)
ちなみに、応援団のブラバンが演奏する『ルパン』といえば、チャーリィ・コーセイーって誰なんだーの歌う「ルパン・ザ・サード、ダバダバダバダバ」のわけはなく、「ルパンルパンルパン、ルパンルパンルパン、ルパンルパンルパンルパンルパン」と、37回も「ルパン」と言う歌のわけもなく、もちろん大野雄二作曲の『ルパン三世のテーマ』である。
なお、『ルパン三世のテーマ』は、『ルパン』のテレビアニメ第二シリーズ(1977~80)のオープニングテーマであるが、この曲はインストバージョンだけでも3種類あって、そのうち最初のものが主旋律がブラス主体で応援団向けである。その後、シンセが主旋律を奏でるバージョン、ビブラフォンが主旋律を奏でるバージョンと変わっていって、どんどんカッコよくなっていくのだが、そっちは高校生ブラバンぐらいだとなかなか難しいかもしれない。
余談だが、大野雄二の劇伴音楽といえば、石立鉄男ドラマ『気になる嫁さん』(1971~2)のスキャットによるテーマ曲もA&Mテイストでなかなか秀逸だと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=QwC1RI6QTl8
コメント
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