「札幌五輪」招致の機運、2026年に照準?
読売新聞
10月6日(日)17時32分配信
1972年に開かれた冬季五輪を再び札幌に招致しようと動きが出てきた。
札幌市の上田文雄市長は
「来年度中に開催地として手を挙げるかどうか判断する」と表明、
札幌市議や経済人の間には招致に向けた連携が芽生えている。
市民の幅広い支持が得られるかどうか、動向が注目される。
◆思い一度「封印」
「五輪開催という夢が、実現可能か判断したい」
上田市長は9月30日の記者会見で招致に意欲を示した。
市長はこれまで「市民の議論が熟すのを見極める」と
慎重な姿勢を示してきたが、同25日の市議会答弁で
「来年度予算に調査費を計上する」と踏み込んだ。
市議の間では「急に前のめりになった」との声があるが、
市幹部は「市長には元々、五輪に強い意欲があった」と解説する。
上田市長が五輪への思いを「封印」したのは、
2017年冬季アジア大会の開催を決めた11年1月だった。
同大会の開催地に名乗り出る都市がなく、
開催を危ぶむアジア・オリンピック評議会(OCA)の意向を受けた
日本オリンピック委員会(JOC)が札幌市に開催を打診。
札幌は過去に2度、冬季アジア大会を開いており、
市議会から「資金を投じて催す割にメリットは小さい」と否定的な声が上がったが、
上田市長はアジア大会を引き受けた。
この時、市役所を訪れたJOC役員に、上田市長は
冬季五輪開催への意欲を伝えた。だが、
役員は「まずは五輪の東京招致に全力を挙げる。
手順を踏んでほしい」と自重を求めた。
そして東京開催が決まった。
市には「JOCに貸しがある。招致競争で有利に働くはず」
(幹部)との思惑がある。
◆市民の支持必要
振り返ると、72年の五輪開催で
「札幌」は世界に知れ渡るようになった。
開会式が行われた真駒内地区には屋内外のスケートリンクと
地下鉄が整備された。真駒内駅前の選手村は
五輪後、公営住宅に衣替えされ、同地区の人口も増えた。
だが、現在はピーク時より1万人近く人口が減り、
住宅の入居者も減っている。
今後のまちづくりや経済活性化に向け、
自民党札幌市支部連合会(札連)と札幌商工会議所(札商)は
会合を重ね「五輪開催は欠かせない」との認識で一致した。
札連の幹部は「50年先を見据えると五輪は重要な足掛かりとなる」と語り、
札商も「35年度に予定されている
北海道新幹線の札幌延伸を前倒しできる」(幹部)と期待、
連携して札幌市に招致を働きかけていく。
ただ、競技場を新設すると、100億円単位の投資負担となり、
市民合意は五輪開催に欠かせないステップとなる。
市は来年度、調査費を使って五輪開催の経済効果を調べる。
「費用対効果」を数値化して公表し、
アンケートで市民の覚悟を見極めるとみられる。
◇
今後の五輪を展望すると、冬季は2014年にロシア・ソチで、
18年には韓国・平昌(ピョンチャン)で開かれる。
夏季は16年のブラジル・リオデジャネイロに続き、
9月8日早朝(日本時間)に20年の東京開催が決まった。
五輪憲章では開催地の決定は7年前に決めることが規定されている。
札連や札商は「アジアでの開催が2回続くことになる22年冬季は
実現可能性がない」として、最速でも
26年冬季の五輪招致を念頭に置いている。
国内では東日本大震災からの復興を目指す東北地方や、
開催実績のある長野がライバルとなるとの観測が流れている。
(野島正徳)
最終更新:10月6日(日)17時32分読売新聞
読売新聞
10月6日(日)17時32分配信
1972年に開かれた冬季五輪を再び札幌に招致しようと動きが出てきた。
札幌市の上田文雄市長は
「来年度中に開催地として手を挙げるかどうか判断する」と表明、
札幌市議や経済人の間には招致に向けた連携が芽生えている。
市民の幅広い支持が得られるかどうか、動向が注目される。
◆思い一度「封印」
「五輪開催という夢が、実現可能か判断したい」
上田市長は9月30日の記者会見で招致に意欲を示した。
市長はこれまで「市民の議論が熟すのを見極める」と
慎重な姿勢を示してきたが、同25日の市議会答弁で
「来年度予算に調査費を計上する」と踏み込んだ。
市議の間では「急に前のめりになった」との声があるが、
市幹部は「市長には元々、五輪に強い意欲があった」と解説する。
上田市長が五輪への思いを「封印」したのは、
2017年冬季アジア大会の開催を決めた11年1月だった。
同大会の開催地に名乗り出る都市がなく、
開催を危ぶむアジア・オリンピック評議会(OCA)の意向を受けた
日本オリンピック委員会(JOC)が札幌市に開催を打診。
札幌は過去に2度、冬季アジア大会を開いており、
市議会から「資金を投じて催す割にメリットは小さい」と否定的な声が上がったが、
上田市長はアジア大会を引き受けた。
この時、市役所を訪れたJOC役員に、上田市長は
冬季五輪開催への意欲を伝えた。だが、
役員は「まずは五輪の東京招致に全力を挙げる。
手順を踏んでほしい」と自重を求めた。
そして東京開催が決まった。
市には「JOCに貸しがある。招致競争で有利に働くはず」
(幹部)との思惑がある。
◆市民の支持必要
振り返ると、72年の五輪開催で
「札幌」は世界に知れ渡るようになった。
開会式が行われた真駒内地区には屋内外のスケートリンクと
地下鉄が整備された。真駒内駅前の選手村は
五輪後、公営住宅に衣替えされ、同地区の人口も増えた。
だが、現在はピーク時より1万人近く人口が減り、
住宅の入居者も減っている。
今後のまちづくりや経済活性化に向け、
自民党札幌市支部連合会(札連)と札幌商工会議所(札商)は
会合を重ね「五輪開催は欠かせない」との認識で一致した。
札連の幹部は「50年先を見据えると五輪は重要な足掛かりとなる」と語り、
札商も「35年度に予定されている
北海道新幹線の札幌延伸を前倒しできる」(幹部)と期待、
連携して札幌市に招致を働きかけていく。
ただ、競技場を新設すると、100億円単位の投資負担となり、
市民合意は五輪開催に欠かせないステップとなる。
市は来年度、調査費を使って五輪開催の経済効果を調べる。
「費用対効果」を数値化して公表し、
アンケートで市民の覚悟を見極めるとみられる。
◇
今後の五輪を展望すると、冬季は2014年にロシア・ソチで、
18年には韓国・平昌(ピョンチャン)で開かれる。
夏季は16年のブラジル・リオデジャネイロに続き、
9月8日早朝(日本時間)に20年の東京開催が決まった。
五輪憲章では開催地の決定は7年前に決めることが規定されている。
札連や札商は「アジアでの開催が2回続くことになる22年冬季は
実現可能性がない」として、最速でも
26年冬季の五輪招致を念頭に置いている。
国内では東日本大震災からの復興を目指す東北地方や、
開催実績のある長野がライバルとなるとの観測が流れている。
(野島正徳)
最終更新:10月6日(日)17時32分読売新聞