母親は今となっちゃそこらへんのおばあちゃんと変わりない姿をしていて、ちょっと性質的にはクセがかなり強いと思われる人物だが、そんな母には母親の前に一人の人としての人生のドラマがあった。
綺麗な叔母さんの家にいたときだった。
タンスの整理をしているおばあちゃんに呼ばれた。
おばあちゃん 「叔母さんの昔若かった時の写真があるけど、みる?」
ぶっちゃけ、叔母さんの過去の写真に私はそれほど興味がなかった。でも、進めてるおばあちゃんの目元がなんだかちょっとあったかい感じがしたので、その雰囲気を壊さず写真を見ることにした。
叔母さん達がみんな20代前後だったりの写真で、なんだか不思議な感じがした。
顔はそれほど変わらないが、皺がなかったり、着ている服が古かったり、笑っている姿がすごく無邪気のような感じだったりしていて、なんだか叔母さんの秘密の時間を除いてるようでワクワクした。もしかしたら、母親の写真もあるかもって思って数枚の写真をみるんだけど、母親の顔らしきものが見当たらない。
私 「おばあちゃん!ママの写真はないの?」
おばあちゃん 「少ないけど、あるはずだよ。」
私 「どれ?」
おばあちゃんは私が渡した写真をパラパラとめくり、一枚目の写真を渡してきた。
うわっ!よくみたら確かにそれは母親の顔だったのだ。
私がいっつもお母さんはおデブおデブと思っていた母とは大違いで、写真の中の母は栄養失調なんじゃないかっていうくらい細身だった。へぇ~昔はガリガリだったんだ・・・なんであんなに太ったんだろう・・・普段の母親の大きく子供のようにキラキラ光ってる目が写真の中にはなかった。その目にはひどく疲れてるような怒ってるような悲しいようなそんな感じがして私はなんだか今の姿の母親に出会えてよかったと思った。
私 「昔、ママってガリガリだったんだね~てっきり今と同じおデブかと思ってた。もう大丈夫。また自分で探すから。」
と言って私はまた写真をおばあちゃんから渡してもらった。
ガリガリの母親の昔の写真を見ながら、なんだか私は変な気持だった。
私 「ママって随分と変わったんだねー」
おばあちゃん 「そうだね。でも、昔のママは本当に綺麗だったのよ。」
へ?あの母親が綺麗?ないない!あり得ない!
そもそも、誰もいまだに母親の顔を綺麗と褒めたのをきいたことがなくてその慣れない言葉にかなりびっくりした。
私 「おばあちゃん。私のことよく可愛いって言ってくれるよねぇ。ママは私と同じ年のときは私より可愛かったの?」
おばあちゃん 「そうだねー」
ショック!!!ってか、おばあちゃんは私がかわいんじゃないのか!!!
ゆっくり母親の顔を探しながら見てる写真の中にあまりにも綺麗な人が映っている写真が一枚出てきて私は思わず母親の顔をさがす手をとめた。すげー綺麗ーすごくおしとやかで上品で静かな雰囲気が写真の中からぷんぷん漂うのだ。私から見てそれは20代半ばの女の人で上品に髪をまとめ、唇を閉じていて、カメラのレンズをとても静かに眺めてる様子だった。
私 「おばあちゃん!この人ちょー綺麗!!!これって綺麗な叔母さん????・・・似てないよね?誰????」
おばあちゃん 「あんたのママだよ。(笑)」
ええええええええええええええええ???
どこが?どこが?何一つ母親の顔のパーツの名残がないっ!!!
おばあちゃん見間違えてるんじゃないのか!
私は写真をじーっとじーーーーーーーーーーーーーーっと眺めた。なにか一つでもいい。今の母との共通点探しだ。今の母親はまるでピエロっぽいイメージだったし、なんだか下品だったし、女性らしさとは無縁だったし、なのに写真の中の女の人はとても物静かそうだし、すごく上品そうなのだ。よくよく見ると薄い唇が・・・・よくよく見ると目の艶はまったく違うが目の形が母親に似ていた。ああぁ・・・ママの若いときの顔だ・・・・
多分、その写真が母親であることを確認したときの私の口は空いていたと思う・・・あまりの驚きとあまりの発見に。
私 「ママ、綺麗だね。綺麗な叔母さんよりも本当綺麗・・・」
おばあちゃん 「兄弟の中でもあなたのママが一番綺麗だったのよ。」
顔が綺麗とかよりも、とにかく雰囲気のある美しい母親の姿だった。
ちなみに私は綺麗なときの母親にも、その後の母親にも似ていない。
あと、私は子供のまるまるさをかわいいと言ってくれてる言葉を容姿の可愛さの意味としてとらえ間違えてたナルシスト子供だった。
サーカス叔母さんに写真をみたことをこっそり夜寝る前に話した。
私 「私ね、叔母さん達の昔の写真みたことがあるよ。」
サーカス叔母さん 「そう。どうだった?私、昔はもっと綺麗だったでしょ!?」
私 「・・・いや、叔母さんは昔っから化粧が濃いんだねーすぐわかった。」
サーカス叔母さん 「あははは」
私 「でね、一番びっくりしたのがママの写真なんだよね。全然今と違うの。」
サーカス叔母さん 「ママ、綺麗だったでしょ?」
私 「うんうん。びっくりした。ねね、叔母さん昔のママってどんな感じだったの?すごいガリガリのときの写真もあったんだよね。」
サーカス叔母さん 「聞きたい?」
私 「うんうん。」
横になっていたサーカス叔母さんがムクっと起き上がり、悪戯の計画を立てようとしてる子供のような目をしてニンマリと私の顔をみていた。サーカス叔母さんは母親と同じキムの家計で母親と同じ父親なのだ。そのせいもあってか、叔母さん達の中で一番顔のパーツが母に似ていて特にギラギラ子供みたく光っているような目の艶感は母親の眼差しなんじゃないかとクラっと子供ながら錯覚に陥る事が時々あるくらいだった。ただ、サーカス叔母さんの目の方がまっすぐで怖いくらいとても力強い。メイクのせいかもしれないけど・・・
サーカス叔母さんは懐かしそうに昔の話をしだした。
学生の頃の母はサーカス叔母さんからみたら、つかみ所のないくらい無口で謎の人物だったらしい。サーカス叔母さんは当時男の学生と遊ぶのがブームで社交的過ぎるくらい社交的で夜中に親の目を盗んでは男友達と遊びに出掛けては親に叱られてばかりだったらしい。そんなある日、学校の先生がサーカス叔母さんに詩を書いてくるように宿題を出す。タイトルはなんでもいいから自分で詩を書いてきなさいと。サーカスの叔母さんは文章が苦手だったらしく、宿題をどうこなすか思い悩むのである。悩みつつ、しっかり遊んではいたので、宿題の提出日は近づき、日に日に焦り出すのである。そこでサーカス叔母さんは勝手に母親の部屋に入って行き母親の日記帳をめくる。実は好奇心旺盛なサーカス叔母さんは母親の許可なしに母親の日記帳を読む常連客だったのだ。母親の文章の才能はすごかったらしい。で、たまたま母親の日記帳に書かれた(間違ってるかもしれないが)「秋」というタイトルの詩を見つけて、サーカス叔母さんは良心を痛めつつその詩をノートに書きうつして学校の先生に提出するのである。で、サーカス叔母さんが母親の日記から無断で書き写して提出したその「秋」という詩は学校で非常に評価が高く学校の新聞に載ってしまうわけなのだ。サーカス叔母さんと同じ学校に通っていた母親は学校新聞に自分が密かに日記に書きこんだ詩が妹の名前で乗った事にかなり怒るのだ。サーカス叔母さんはかなり母親に謝るんだけど、母親は怒って泣きわけきながら、自分の日記をサーカス叔母さんの前でビリビリに破って捨てることになるのだ。
私 「・・・叔母さんあんまりだよ・・・」
サーカス叔母さん 「当時はまさか詩が評価されて学校新聞に載るなんて考えてもなかったよ。あなたのお母さんも今まで書きこんだ日記まで捨てるとは思わなかったし、私も悪いけどお姉さんもやり過ぎだと思って理解できなかったの。今考えてみれば、あんなデリケートな時期に無神経過ぎたんだよねー私が。でも、本当素晴らしい文章ばかりだったのよ。今のあんたのお母さんじゃ考えられないだろうけど、昔は自尊心が高くてロマンチストの塊だったのよ。怒ると嫌な性格だったけど。」
また、意外な母親を見つけるのである。自尊心高く文才豊かで怒ると自暴自棄になっちゃう母親の青春を。
ふと、私に日記を書かせる習性を叔母さん達が教育したのは母親のようなロマンチックな文章が私が書けると思って期待してからだったのかなと今でもよぎる。
20代半ばになって母親と話をしていた。
私 「ママも今まで生きてきてるうちに恋愛くらいしたでしょ?」
母 「恋愛ねぇ」
私 「若いときはどんな人と付き合ったの?今でも心に実は残ってる人とかいる?」
母 「異性と初めて付き合ったのは20前半だったの。で、すごくエリートの人でハンサムで仕事も出来てとってもいい人だったの。あとから別れる原因になったけど、妻子持ちの人だったの。」
私 「え?だまされてたの?」
母 「だまされてるというか、付き合おうって言われて相手が妻子を持ってるなんてまったく考えなかったのね。今、考えてみれば私はその人の家もどこか知らなかったし、連絡先も知らなかったんだよね。常に連絡は相手からでね。」
私 「年上が好きだったの?」
母 「そうね、同じ年齢の人とかがどうも幼児っぽくてまったく恋愛対象にならなかったの。」
私 「今じゃ十分ママも幼児的なのに。。。」
母 「昔は男の人は大人っぽい雰囲気が好きだったの。」
私 「へぇ~モテた?」
母 「モテたわよ。」
私 「想像つかない・・」
母 「一回ね、ある若い男に線路に連れ込まれて、俺のこと愛してると言わないなら、ここでお前と死ぬって言われてすごい怖い思いをしたことがあったの。」
すげーストーカ付きのモテっぷりか・・・・
私 「で、言ったの?」
母 「言ったよ。じゃないと自分が危ないんだもん。」
私 「言ってどうしたの?」
母 「男の人が手を離した隙に死ぬ気で走って逃げたの。」
私 「こわっ・・・。なんかまともな恋愛してないの?相思相愛というかそんな感じの。」
母 「軍隊にいたときに可愛がってくれてた軍のちょっとエライ人がいたんだけど、その人がとても好きだったの。」
私 「好きだったなら、なんでその人と結婚しなかったの?片思い?」
母 「いや、その人には病気で先の長くない寝たきりの奥さんがいてね。その奥さんがなくなったら、正式に結婚もしようと言われたけど、なんだか奥さんが早く死ぬのを待っているような自分の立場が嫌で仕事を突然辞めてその人から離れたの。」
なんだか、切ないような悪趣味のような母親によってたかる妻子持ちの男といい、そんな人に事情を知らないだろうがなんだろうが心を惹かれる母親といい私には理解できない世界だった。
母 「今考えてみれば、奥さんの事で悩んでないで結婚しちゃえばよかったわ(笑)その人ね、あとからきいたらものすごく偉くなっていて金持ちになったんだよねぇ~」
私 「本当だよ。もったいない。」
母 「昔の私の写真みたことある?昔はみんなにすごく目が寂しそうって言われてたのよ。想像できないだろうけど。」
私 「あぁ、あるよ。綺麗だった。私がママの昔の容姿だったらすげー男と遊びまくっていっぱい金づるの男掴んでたよ。」
母 「あなたはあなたでかわいいわよ。」
私 「はぁ~韓国のコトワザあるでしょ。ハリネズミも自分の子供の毛はサラサラで柔らかいって言う。(どんな親も自分の子供が一番優れていると思いこむ親馬鹿っぷりを表現したコトワザ)ママのその褒め言葉にどれだけ私が勘違いばかりした幼少時代を送ったものか。。。
もう、オヤジもいないんだし、愛を確かめるついでに玉の輿でも狙ってその軍の時代の偉い人にもう一回アタックしてみたら?金持ちの義理の父親大歓迎だよ!」
母 「できる訳ないでしょ!昔とはこんなに変わったのに。向こうがたまげるわ。つまらないこと言ってないでとっとと寝なさい。」
母親は今さらどうでもいいとか、もうはるか昔の事だからとか、そんなことを言わなかった。
昔の姿と変わった自分をみられる事を恥ずかしがってるように感じた。
「あぁ~切ないババァ~」と私は思った。
綺麗な叔母さんの家にいたときだった。
タンスの整理をしているおばあちゃんに呼ばれた。
おばあちゃん 「叔母さんの昔若かった時の写真があるけど、みる?」
ぶっちゃけ、叔母さんの過去の写真に私はそれほど興味がなかった。でも、進めてるおばあちゃんの目元がなんだかちょっとあったかい感じがしたので、その雰囲気を壊さず写真を見ることにした。
叔母さん達がみんな20代前後だったりの写真で、なんだか不思議な感じがした。
顔はそれほど変わらないが、皺がなかったり、着ている服が古かったり、笑っている姿がすごく無邪気のような感じだったりしていて、なんだか叔母さんの秘密の時間を除いてるようでワクワクした。もしかしたら、母親の写真もあるかもって思って数枚の写真をみるんだけど、母親の顔らしきものが見当たらない。
私 「おばあちゃん!ママの写真はないの?」
おばあちゃん 「少ないけど、あるはずだよ。」
私 「どれ?」
おばあちゃんは私が渡した写真をパラパラとめくり、一枚目の写真を渡してきた。
うわっ!よくみたら確かにそれは母親の顔だったのだ。
私がいっつもお母さんはおデブおデブと思っていた母とは大違いで、写真の中の母は栄養失調なんじゃないかっていうくらい細身だった。へぇ~昔はガリガリだったんだ・・・なんであんなに太ったんだろう・・・普段の母親の大きく子供のようにキラキラ光ってる目が写真の中にはなかった。その目にはひどく疲れてるような怒ってるような悲しいようなそんな感じがして私はなんだか今の姿の母親に出会えてよかったと思った。
私 「昔、ママってガリガリだったんだね~てっきり今と同じおデブかと思ってた。もう大丈夫。また自分で探すから。」
と言って私はまた写真をおばあちゃんから渡してもらった。
ガリガリの母親の昔の写真を見ながら、なんだか私は変な気持だった。
私 「ママって随分と変わったんだねー」
おばあちゃん 「そうだね。でも、昔のママは本当に綺麗だったのよ。」
へ?あの母親が綺麗?ないない!あり得ない!
そもそも、誰もいまだに母親の顔を綺麗と褒めたのをきいたことがなくてその慣れない言葉にかなりびっくりした。
私 「おばあちゃん。私のことよく可愛いって言ってくれるよねぇ。ママは私と同じ年のときは私より可愛かったの?」
おばあちゃん 「そうだねー」
ショック!!!ってか、おばあちゃんは私がかわいんじゃないのか!!!
ゆっくり母親の顔を探しながら見てる写真の中にあまりにも綺麗な人が映っている写真が一枚出てきて私は思わず母親の顔をさがす手をとめた。すげー綺麗ーすごくおしとやかで上品で静かな雰囲気が写真の中からぷんぷん漂うのだ。私から見てそれは20代半ばの女の人で上品に髪をまとめ、唇を閉じていて、カメラのレンズをとても静かに眺めてる様子だった。
私 「おばあちゃん!この人ちょー綺麗!!!これって綺麗な叔母さん????・・・似てないよね?誰????」
おばあちゃん 「あんたのママだよ。(笑)」
ええええええええええええええええ???
どこが?どこが?何一つ母親の顔のパーツの名残がないっ!!!
おばあちゃん見間違えてるんじゃないのか!
私は写真をじーっとじーーーーーーーーーーーーーーっと眺めた。なにか一つでもいい。今の母との共通点探しだ。今の母親はまるでピエロっぽいイメージだったし、なんだか下品だったし、女性らしさとは無縁だったし、なのに写真の中の女の人はとても物静かそうだし、すごく上品そうなのだ。よくよく見ると薄い唇が・・・・よくよく見ると目の艶はまったく違うが目の形が母親に似ていた。ああぁ・・・ママの若いときの顔だ・・・・
多分、その写真が母親であることを確認したときの私の口は空いていたと思う・・・あまりの驚きとあまりの発見に。
私 「ママ、綺麗だね。綺麗な叔母さんよりも本当綺麗・・・」
おばあちゃん 「兄弟の中でもあなたのママが一番綺麗だったのよ。」
顔が綺麗とかよりも、とにかく雰囲気のある美しい母親の姿だった。
ちなみに私は綺麗なときの母親にも、その後の母親にも似ていない。
あと、私は子供のまるまるさをかわいいと言ってくれてる言葉を容姿の可愛さの意味としてとらえ間違えてたナルシスト子供だった。
サーカス叔母さんに写真をみたことをこっそり夜寝る前に話した。
私 「私ね、叔母さん達の昔の写真みたことがあるよ。」
サーカス叔母さん 「そう。どうだった?私、昔はもっと綺麗だったでしょ!?」
私 「・・・いや、叔母さんは昔っから化粧が濃いんだねーすぐわかった。」
サーカス叔母さん 「あははは」
私 「でね、一番びっくりしたのがママの写真なんだよね。全然今と違うの。」
サーカス叔母さん 「ママ、綺麗だったでしょ?」
私 「うんうん。びっくりした。ねね、叔母さん昔のママってどんな感じだったの?すごいガリガリのときの写真もあったんだよね。」
サーカス叔母さん 「聞きたい?」
私 「うんうん。」
横になっていたサーカス叔母さんがムクっと起き上がり、悪戯の計画を立てようとしてる子供のような目をしてニンマリと私の顔をみていた。サーカス叔母さんは母親と同じキムの家計で母親と同じ父親なのだ。そのせいもあってか、叔母さん達の中で一番顔のパーツが母に似ていて特にギラギラ子供みたく光っているような目の艶感は母親の眼差しなんじゃないかとクラっと子供ながら錯覚に陥る事が時々あるくらいだった。ただ、サーカス叔母さんの目の方がまっすぐで怖いくらいとても力強い。メイクのせいかもしれないけど・・・
サーカス叔母さんは懐かしそうに昔の話をしだした。
学生の頃の母はサーカス叔母さんからみたら、つかみ所のないくらい無口で謎の人物だったらしい。サーカス叔母さんは当時男の学生と遊ぶのがブームで社交的過ぎるくらい社交的で夜中に親の目を盗んでは男友達と遊びに出掛けては親に叱られてばかりだったらしい。そんなある日、学校の先生がサーカス叔母さんに詩を書いてくるように宿題を出す。タイトルはなんでもいいから自分で詩を書いてきなさいと。サーカスの叔母さんは文章が苦手だったらしく、宿題をどうこなすか思い悩むのである。悩みつつ、しっかり遊んではいたので、宿題の提出日は近づき、日に日に焦り出すのである。そこでサーカス叔母さんは勝手に母親の部屋に入って行き母親の日記帳をめくる。実は好奇心旺盛なサーカス叔母さんは母親の許可なしに母親の日記帳を読む常連客だったのだ。母親の文章の才能はすごかったらしい。で、たまたま母親の日記帳に書かれた(間違ってるかもしれないが)「秋」というタイトルの詩を見つけて、サーカス叔母さんは良心を痛めつつその詩をノートに書きうつして学校の先生に提出するのである。で、サーカス叔母さんが母親の日記から無断で書き写して提出したその「秋」という詩は学校で非常に評価が高く学校の新聞に載ってしまうわけなのだ。サーカス叔母さんと同じ学校に通っていた母親は学校新聞に自分が密かに日記に書きこんだ詩が妹の名前で乗った事にかなり怒るのだ。サーカス叔母さんはかなり母親に謝るんだけど、母親は怒って泣きわけきながら、自分の日記をサーカス叔母さんの前でビリビリに破って捨てることになるのだ。
私 「・・・叔母さんあんまりだよ・・・」
サーカス叔母さん 「当時はまさか詩が評価されて学校新聞に載るなんて考えてもなかったよ。あなたのお母さんも今まで書きこんだ日記まで捨てるとは思わなかったし、私も悪いけどお姉さんもやり過ぎだと思って理解できなかったの。今考えてみれば、あんなデリケートな時期に無神経過ぎたんだよねー私が。でも、本当素晴らしい文章ばかりだったのよ。今のあんたのお母さんじゃ考えられないだろうけど、昔は自尊心が高くてロマンチストの塊だったのよ。怒ると嫌な性格だったけど。」
また、意外な母親を見つけるのである。自尊心高く文才豊かで怒ると自暴自棄になっちゃう母親の青春を。
ふと、私に日記を書かせる習性を叔母さん達が教育したのは母親のようなロマンチックな文章が私が書けると思って期待してからだったのかなと今でもよぎる。
20代半ばになって母親と話をしていた。
私 「ママも今まで生きてきてるうちに恋愛くらいしたでしょ?」
母 「恋愛ねぇ」
私 「若いときはどんな人と付き合ったの?今でも心に実は残ってる人とかいる?」
母 「異性と初めて付き合ったのは20前半だったの。で、すごくエリートの人でハンサムで仕事も出来てとってもいい人だったの。あとから別れる原因になったけど、妻子持ちの人だったの。」
私 「え?だまされてたの?」
母 「だまされてるというか、付き合おうって言われて相手が妻子を持ってるなんてまったく考えなかったのね。今、考えてみれば私はその人の家もどこか知らなかったし、連絡先も知らなかったんだよね。常に連絡は相手からでね。」
私 「年上が好きだったの?」
母 「そうね、同じ年齢の人とかがどうも幼児っぽくてまったく恋愛対象にならなかったの。」
私 「今じゃ十分ママも幼児的なのに。。。」
母 「昔は男の人は大人っぽい雰囲気が好きだったの。」
私 「へぇ~モテた?」
母 「モテたわよ。」
私 「想像つかない・・」
母 「一回ね、ある若い男に線路に連れ込まれて、俺のこと愛してると言わないなら、ここでお前と死ぬって言われてすごい怖い思いをしたことがあったの。」
すげーストーカ付きのモテっぷりか・・・・
私 「で、言ったの?」
母 「言ったよ。じゃないと自分が危ないんだもん。」
私 「言ってどうしたの?」
母 「男の人が手を離した隙に死ぬ気で走って逃げたの。」
私 「こわっ・・・。なんかまともな恋愛してないの?相思相愛というかそんな感じの。」
母 「軍隊にいたときに可愛がってくれてた軍のちょっとエライ人がいたんだけど、その人がとても好きだったの。」
私 「好きだったなら、なんでその人と結婚しなかったの?片思い?」
母 「いや、その人には病気で先の長くない寝たきりの奥さんがいてね。その奥さんがなくなったら、正式に結婚もしようと言われたけど、なんだか奥さんが早く死ぬのを待っているような自分の立場が嫌で仕事を突然辞めてその人から離れたの。」
なんだか、切ないような悪趣味のような母親によってたかる妻子持ちの男といい、そんな人に事情を知らないだろうがなんだろうが心を惹かれる母親といい私には理解できない世界だった。
母 「今考えてみれば、奥さんの事で悩んでないで結婚しちゃえばよかったわ(笑)その人ね、あとからきいたらものすごく偉くなっていて金持ちになったんだよねぇ~」
私 「本当だよ。もったいない。」
母 「昔の私の写真みたことある?昔はみんなにすごく目が寂しそうって言われてたのよ。想像できないだろうけど。」
私 「あぁ、あるよ。綺麗だった。私がママの昔の容姿だったらすげー男と遊びまくっていっぱい金づるの男掴んでたよ。」
母 「あなたはあなたでかわいいわよ。」
私 「はぁ~韓国のコトワザあるでしょ。ハリネズミも自分の子供の毛はサラサラで柔らかいって言う。(どんな親も自分の子供が一番優れていると思いこむ親馬鹿っぷりを表現したコトワザ)ママのその褒め言葉にどれだけ私が勘違いばかりした幼少時代を送ったものか。。。
もう、オヤジもいないんだし、愛を確かめるついでに玉の輿でも狙ってその軍の時代の偉い人にもう一回アタックしてみたら?金持ちの義理の父親大歓迎だよ!」
母 「できる訳ないでしょ!昔とはこんなに変わったのに。向こうがたまげるわ。つまらないこと言ってないでとっとと寝なさい。」
母親は今さらどうでもいいとか、もうはるか昔の事だからとか、そんなことを言わなかった。
昔の姿と変わった自分をみられる事を恥ずかしがってるように感じた。
「あぁ~切ないババァ~」と私は思った。