(1)
万葉集の番組で、もう一つ、「遣唐使の母の歌」をUPします。
「旅人の宿りせむ野に霜降らば我が子羽ぐくめ天の鶴群(たずむら)」
旅人が野宿している野原に、霜が降ったならば、どうかわが子を
その暖かい羽で包んで、暖めてやって下さい、空を飛ぶ鶴の群れよ、
と歌っています。
昔は、野宿が普通です。
冬の旅は、こごえながら、一夜をあかさねばなりません。
凍死の危険も、大きいです。
霜だけでなく、そこへ氷雨が降る日もありましょう。
昔の旅は、命懸けです。
ましてや、その時代に、海を渡って、唐の国迄、旅する訳ですから、
霜どころのさわぎではありません。
空を飛ぶ鶴の群れに思いを託す、母の切ない祈りが伝わって来ます。
(2)
実は、私は、この歌の「羽ぐくめ」に、興味を持ちました。
そうか、育む(はぐくむ)と言う言葉は、元々のやまとことばでは、
「は(羽)+くくむ」と言うことばだったのではないか?
それは、羽にくるむ意味なのではないか?
…とすると、多分「くるむ」の古語が、「くくむ」なのに違い無い。
ネットで「古語くくむ」を検索してみると、「包む」とありました。
やはり思ったとおりでした。
やまとことばでは、育てることは、羽で包むことだったのですね。
漢字が入って来てから(漢字は意味を持っているので)、意味を
取って、「はぐくむ」を「育む」と書かれる様になったのですね。
考えてみれば、こんな例は、数え切れない程、…と言うか、大半の
熟語に言えることでしょうね。
でも、育てることが、「羽でくくむ(くるむ)」ことだと言う大和
言葉は、本当に素晴らしいと思ったことでした。
(後日:追記)
「はぐくむ」についての、私の推察は当っていました。
カリフォルニアのハワードさんから、私の掲示板へ書き込みがあり
ました。
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興味深い話です。語源辞典を引きました。
「まことに仰る通りでございます」...I think. (^_^)
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とのことです。^^
下をご覧下さい。↓
[2009.02.20 ハワードさんの「語源辞典」より」