「昼飯はここにするか。」
たまたま通りがかったうどん屋に車を停めた。
さて何にしよう。
ペラペラとメニューをめくり、あれこれと思い悩む。
鴨せいろね。
これにしよっと。
「鴨せいろです。あ、うどんおまけしときましたから。」
「え?」
確かに兄ちゃんの言うとおりだ。
白く艶やかなうどんの麺が、蒸籠の端っこに胡座をかいている。
それにしても、この異物感はどうだ。
蕎麦にうどんを混ぜられて、私が喜ぶとでも?
そもそも、何でおまけ?
断っておくが、私はこの店の常連客でも何でも無い。
ただの行きずりにすぎない。
仕方ない。
こんな些細な事で、つむじを曲げるほど、私の懐は狭くない。
先にこの異物を取り除けばすむことだ。
ズズズー
うんうん。
つけ汁、ちゃんと旨いやん。
すると、
目の前を同じ鴨せいろが通り過ぎて行く。
それは、斜め向かいのテーブルに置かれた。
無論、凝視した。
!
うどん、おまけしとらんじゃん。
ははーん。
さては、何かやらかしたな。
は!
もしかしたらと、つけ汁の中を探ってみた。
鴨肉は2枚。
少なすぎやしないだろうか。
さっきの鴨せいろに、俺の分まで入れてしまったと?
それで罪滅ぼしにと、そこらにあったうどんをおまけしたと?
まさか、鴨肉の正規の枚数を兄ちゃんに問い詰める訳にも行かず、
かと言って、おまけにも納得出来ず、
「食べた気がせんやろ。」(家内)
「うーーん。モグモグ。」(私)