みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

浦和 × 磐田

2006年12月25日 | サッカー: 国内その他
第86回 天皇杯 全日本サッカー選手権大会 準々決勝: 浦和レッズ 3-3(PK 10-9) ジュビロ磐田
(2006/12/23)

■ 天皇杯では不振の続く浦和と磐田
2006年度も早いもので、あと1週間で1年の終わりを迎えます。国内では年末でおなじみの天皇杯が開催されていて、この日はその準々決勝が行われました。
今回はその中で、念願のリーグ制覇を成し遂げたJ1チャンピオンの浦和と、なんだかんだ言って最終的に5位にまで順位を上げた磐田との対戦を取り上げてレポートしたいと思います。

退任の決定した浦和のブッフバルト監督にとっては、これが日本での最後の大会となります。就任以来、毎年タイトルをもたらしてくれたこの指揮官に、国内二冠および天皇杯連覇という有終の美で花道を飾らせてあげたい浦和は、4回戦から登場しました。
そこで静岡FCを5-0と問題なく下したのはいいのですが、その後が少し不安です。続く5回戦、J1終了後に行われた福岡戦では3-0と勝利したものの、前後半90分はまるで精彩を欠いて0-0で延長にもつれ込んだという有様でした。明らかにリーグ初優勝へと突き進んでいた時期よりトーンダウンしています。
さらに得点王のFWワシントン、Jリーグ最優秀選手のDF闘莉王、不動の日本代表のMF三都主の3人が、身体の治療に専念するなどでそれぞれ離日。GK山岸、DF堀之内の不在に加え、DFネネも直前になって体調不良と、主力が続々と離脱中です。
分厚い選手層を誇る浦和というチームの総合力の真価と、控えであった選手たちのアピールできるこの機会への真剣さが問われる戦いとなってきます。

対する磐田のここまでの戦績です。
リーグでは常に中位をさまよっていましたが、第22節の新潟戦で7-0と爆発したのをきっかけとしたかのように、終盤では白星を重ねまくりました。リーグトップ4であった川崎、G大阪、浦和、清水も次々と撃破していき、優勝争いの混迷化に一役買います。特に今回の対戦相手である浦和との一戦では、堅守の浦和にとってはリーグ戦で唯一となる3失点を浴びせた快勝でした。若手の台頭と戦術の成長が急激に結果として表れている現況です。
ところが、磐田もまた天皇杯では元気がないのです。初登場した4回戦では、J2の柏を相手に何とかPK戦で辛勝。5回戦の対大宮の試合に至っては、放ったシュートがわずかに西の1本だけであったという、珍記録として残されるべき1-0の勝利でありました。
最大の懸念材料であった守護神のGK川口のひざ痛による離脱は、代役のGK佐藤が無難にその穴を埋めています。今年度リーグ戦で3位の得点数を誇った攻撃陣に、今日こそ期待したいところです。

浦和はいつもの3-6-1ではありますが、顔ぶれは通常とは異なります。
GKは都築。DFは3バックで内舘、坪井、細貝。MFは底に鈴木と長谷部、左に相馬、右に平川、1.5列目は山田とポンテ。そしてワントップには永井が入りました。
細貝が先発といった最終ラインのコンビネーションはもちろんのこと、ワシントンとはまるで違うタイプの、突破力に長ける永井というワントップをどのように活用するのかが焦点となるでしょう。
また、浦和にとっては強力な武器があります。それは、この戦いの場が埼玉スタジアムであるということです。とうとうホームではこれまで不敗であった、この地の利に後押しされる試合となります。

磐田も基本形である4-4-2に変わりはありません。
GKは引き続き佐藤。DFは左から上田、キム、鈴木、犬塚という、最近定着してきた若手主体の4バックです。MFは後方にファブリシオと菊池で、前方は福西と太田。この日、ツートップで前田と組むのは、前の試合で決勝点を挙げた西になりました。

■ 激動した試合展開の果てに
ロングボールが飛び出した西へと渡る、いきなりの磐田の決定的なチャンスでもって試合は幕を開けました。
このシーンに象徴されるように、この試合の前半の浦和には、これまでの安定した戦いぶりがまるで影を潜めてしまっていました。終始フリーの状態でボールを回せる磐田が主導権を握り続け、浦和の選手たちは左右から攻撃してくる磐田の対処へバタバタと追われるばかりでした。圧倒的な支配率で迫る王者・浦和の姿はそこにはなく、優勢の磐田、カウンターを狙う浦和という展開の45分でした。
前半の30分には、左右から連続でクロスを入れられて浦和は揺さぶられ、ついには前田を全くのフリーにさせてヘッドで先制されてしまいます。
磐田の順当とも言うべき1-0のリードで、前半は終了。浦和には早急な立て直しが必要です。

後半から反撃に出たい浦和に、またも開始直後の磐田の決定機が襲い、浦和は出鼻をくじかれます。上田のクロスを前田が落とし、福西が爽快に蹴り込んでゴールという、お手本のような軽やかなファストアタックでした。

後半1分に2点差とされた浦和には、ここまでいいところが全然ありませんでしたが、ここからでした。平川を切り札のMF小野と代えていて、追撃体制を整えていた浦和の大逆襲が始まります。

細かいつなぎには難のある浦和でしたが、その勢いたるや相当なものがありました。怒涛の寄せで磐田をゴール前に釘付けとさせます。
磐田のゴール前を交錯する2度のクロスから、最終的に永井があわやゴールインという(多分あれは入っていました)ヘディングシュート。
続く後半9分にも同じように、左の放り込みから右のクロスを経て、最後に永井がヘディングです。これが今度こそ入り、浦和はわずか8分で、まず1点を返しました。この場面、ゴール直前には永井を含めて3人も詰めていたという迫力さです。
浦和のペースは止まりません。後半18分、敵陣でフリーキックを得ると、その流れから相馬がファブリシオを振り切って執念のクロス。これにつききれない犬塚の真横で、攻め上がった小野がヘッドで決めてみせて、ついに浦和が同点。一気に試合を振り出しに戻しました。

ここからは双方が打ち合う展開となります。太田がキーとなった磐田は、その太田が生んだチャンスで犬塚が大ふかしのシュート。浦和にも永井の落としから、ポンテによるゴール上を越えるシュートがありました。
この状況下で、守備に混乱をきたしてしまったのが磐田でした。後半32分、福西を下げてDF大井を投入し、3バックへとシフトした直後のことです。これを統率すべき鈴木が、負傷によりピッチから退くアクシデントが発生してしまったのです。この鈴木なき再構築中の磐田の守備網に仕掛けていったのが、山田とポンテによる浦和の右サイドアタックでした。最後にワンタッチで中央に通し、待ち構えていた小野へ、錯乱中の磐田は誰一人として彼をマークすることができません。フリーの小野は、ここから華麗なループシュートでボールをゴールネットの中へ。わずかの時間帯に生じていた磐田の「穴」につけこんだ浦和が、2点差をひっくり返す逆転劇を見せたワンシーンでした。

しかし、磐田には精神的な動揺など皆無でした。被逆転後にすぐさま、衰えの見えない太田が切れ込んで浦和のゴール前へラストパスを送ります。これを前田が潰れてルーズとさせ、駆け込んできた犬塚が角度の狭いところから豪快にゴールイン!浦和が全然つかみきれない電撃的な速攻で、磐田はわずか1分で再び3-3と同点にしてみせたのです。目まぐるしく流れるこの後半の攻防により、勝敗の行方は混沌としてきました。

勢いではなお上回る浦和と、攻撃時には十分に人数をかける磐田。お互いのいざ反撃となったときの切り替えは速く、白熱した終盤を迎えて試合は延長戦へと突入しました。
延長戦では後半戦と同様、両軍とも右サイドを起点としていて、時間が経過するごとにその傾向は顕著になっていきました。中盤を全く経由せず、右サイドの奥深いエリアからの攻略ばかりです。その右サイドのクロスから、前半には浦和が、後半には磐田が、それぞれ1点ものの決定機をつかみましたがモノにすることはできず、結局は同点のまま120分終了。決着はPK戦にゆだねられることになりました。

またこのPK戦なのですが、両チームのキッカーたちのキックのレベルの高さに、正直に言って驚きました。真ん中に蹴った選手以外のキックは、そのほとんどがゴール枠内の横方向または縦方向いっぱいに飛んでいくものばかりだったのです。キーパーが例えコースを読んだとしても、そして実際に読んでセーブを試みても及ばないというシュートの続発でした。これが10人目までにもつれこんだ原因です。
この中で、磐田にとっては少々厳しい判定がありました。浦和の4人目である酒井のシュートがセーブされた際に、キーパーの佐藤が蹴る前に動いたとして、岡田主審からやり直しが命じられたのです。微妙な感じでもあり、これに関しては私からは何とも言えません。酒井は、2回目のキックは見事にゴール右上に決めて成功させています。
こうして誰一人として失敗せずに続いたPK戦で、後攻の磐田の犬塚が外して失敗した瞬間、浦和の勝利が決定されました。

磐田はまたも浦和から3点を挙げたものの惜敗。しかしながら、アウェー戦でこれだけの健闘は大したものでありました(様々な事情があるにしても、一発勝負なのだから中立地開催が適当だと常々思っているのですが・・・)。
浦和も主力を欠きながら競り勝ち、今年最後となる埼玉スタジアムの試合でも不敗神話を崩すことなく、立派にサポーターへ勝利というクリスマスプレゼントを贈りました。
浦和が準決勝進出です。

■ 「優勝ボケ」?だった浦和
さて、激動という名にふさわしいこの試合の前後半90分を、落ち着いて振り返ってみたいと思います。

まずは後半1分までに2点を取られた、試合開始から46分間の浦和です。
2失点自体は3バックが急造だったことも多少は影響していたかも知れませんが、問題なのはそこに至るまでの過程です。あまりにも磐田にペースを与え続けていましたね。この時間帯の浦和は「優勝ボケ」と表現されても文句の言えない内容でした。
もう、最終ラインが最後尾に張り付いて全体が間延びしているのは見慣れた光景です。しかし、「堅守」と呼ばれた今季の浦和の守備の第一段階である、中盤でのプレッシャーがほとんどありませんでした。守備の最初の関門として君臨したボランチの2人、鈴木と長谷部は、どうしたことかペナルティエリア前に突っ立っているだけでチェックに行く動きがありません。前線でも、ポンテにはもともと期待していないとしても、山田までもがあの泥臭いチェイシングを怠っていました。平川と相馬も、自身のサイドでの立ち回りだけで頭がいっぱいといった感じです。
これが、中央でどでかいスペースを磐田へ与えていた原因です。ファブリシオと菊地が難なくボールを拾い上げ、ゲームをコントロールし続けます。そこから、左では福西と上田が、右では太田と犬塚が存分に絡み、磐田が両翼から圧迫してきます。結局鈴木と長谷部はその対処に追われっぱなしになるなど、常に浦和は後手に回って機能不全となっていたのです。

ただ、逆襲に転じた後半には、浦和は突如として目覚めました。2点を追わねばならない現実を前に、選手たちの守備意識は復活し、最終ラインの位置も珍しく高く保たれます。この狭い局面の中で、山田はもちろんのこと、ポンテまでもがプレスによるボール奪取を披露。前半とは極端なほどに見違えるこの活発さによって、以降は磐田に対して勢いの面では劣りませんでした。

■ 殊勲の山田による上田の急降下
次に、磐田が2得点、そして浦和が逆転にまで至る3得点という、派手な得点の応酬です。これらは全て、ある一人の選手の浮沈によるものだと私は考えています。
その選手とは、磐田の左サイドバックの上田です。
上記の通り、当初は浦和の活動量が甘く、そのために右の犬塚とともにのびのびとプレーできて、攻撃参加をしまくっていた選手でした。
磐田の先制点は、最終的には右の犬塚のクロスから前田のゴールというものでしたが、この2人がフリーとなれたのは、直前に左サイドからのクロスが上がっていて浦和が揺さぶられたためです。この時のディープな左サイドアタックは、太田とともに上田がいなければ成立していませんでした。
後半開始早々の2点目はもっと明快です。何のプレッシャーも受けていなかった上田が迅速に、精密なアーリークロスを前田にあてたことが発端となったゴールでした。
得点のスタート地点として、紛れもなく上田はチームの2得点に貢献していたのです。

しかし浦和側も、このリードされた事態をただ放っていたわけではなく、逆転を虎視眈々と狙っていました。
特に、後半から平川に代えて小野を投入した交代。あの采配は結果的にズバリと当たったという感想です。
小野が積極的に上がって2得点も獲ったから?それももちろん含まれると思います。表向きのMVPは彼に与えてしまって一向に構いません。ただし私はそんな単純なことではなく、小野が山田の位置に入り、その山田が退いた平川の右サイドに移ったことこそが、重要な分岐点であっただろうと主張したいのです。
残念ながら同サイドで対峙することになった上田はまだ、本気の山田を止められる選手ではありませんでした。山田の突破、ドリブル、キープといった行動に、上田はついていくことも容易ではなさそうな雰囲気でした。この優劣を目の当たりにしたせいなのかどうか、浦和は次第に右サイドを重視する攻撃にシフトしていきます。こうして以降の上田は防戦一方となり、あれほど活き活きとした攻撃参加も激減し、磐田の左サイドの停滞へとつながっていきました。

そして浦和の3得点です。実は、このいずれにも上田と山田の攻防が関与していました。
浦和の追撃となる1点目は、右からの山田のアシストによるものでした。ロングサイドチェンジを受けた山田は、そこからフリーな体勢でそのクロスを上げることができたのです。この直前に上田は何をしていたかと言うと、ペナルティエリア内で誰につくこともなく、一人だけ余るように存在していました。どう考えても山田をケアせねばならない状況だったと思うのですが、さらに上田はこのサイドチェンジのボールを、全速力でカットしようとした福西と重なり合うように動いてそれを邪魔してしまい、山田に通させてしまいました。山田のクロスの正確さは確かに見事ではありましたが、上田のこのシーンでのポジショニングには疑問符をつけざるを得ず、仮にそれが適正なものであれば、山田のクロスの発射は未然に防がれていたかも知れません。
後半18分には、上田は集中力を欠いてしまいます。自陣での味方からのパスに対し、反応が大幅に遅れてしまいました。これを猛然とパスカットした山田は、磐田側としてはファールでしか阻止できないようなドリブルでもって爆走していきます。こうして彼が得たフリーキックから、浦和の2得点目は生まれました。
浦和の逆転弾も、山田がきっかけです。彼の中距離にわたるキープからの、ポンテへのパスが始点でした。この場面での上田は、なぜか山田との距離を開けたままでチェックに行かず、さらにポンテへの詰め寄りもなく、このサイドにおける単なるボールウォッチャーでしかありませんでした。
優勢だった浦和の右サイドがもたらした3得点であったと言えるでしょう。

上田を含めて力ずくで磐田の左サイドを押さえ込め、同サイドにおける浦和のキープレイヤーであり続け、以上のように全3得点のチャンスメイクまでしてみせた山田。こうなるに至った彼の右サイドへのコンバートこそが、この試合の最大の殊勲であったと私は思うのです。

途中からこの強大な山田という存在に屈し、前後半でくっきりと明暗が分かれてしまったのが上田です。
ただ、上田は2年目で、まだまだ十分に伸びる可能性を持つ20歳の選手です。この試合でも一定の攻撃力を見せることはできていましたし、ぜひこの試合での教訓も貴重な糧として、磐田の不動の左サイドバックへと成長してほしいと思っています。

敗れはしましたが、磐田の選手たちの溢れる活気は印象的でした。菊地の絶えることのない運動量によるカバーリングに、太田の一人でも切り崩してしまう突進力。前田はゴールするだけでなく、最前線で潰れ役となってまで味方の起点になろうと体を張っていました。
そして何と言っても、右サイドバックの犬塚です。とても今年ルーキーの選手とは感じられませんでした。もし磐田の勝利だったならば、彼に殊勲賞を与えたいとさえ思っているのです。1ゴール1アシストという結果だけでなく、120分間息を切らさずに効果的なオーバーラップを繰り返していました。放たれるクロスも一級品で、その中にはカレンが空振りした、押し込むだけでよかったという決定的なものまで含まれています。ラストはPKを外して直接的な敗因となってしまいましたが、それだけでこの試合で彼の価値が下がるということはないでしょう。本人はとてもショックだったでしょうが、試合全体を通して見れば胸を張ってよい活躍だったと思います。まさか10人目まで回ってくるとは思っていなかった犬塚は、PK練習はこれまでしてこなかったのだとか。次回からはちゃんと練習して備えておきましょうね。

上田、菊地、太田、そして犬塚と、磐田は清水と同様に将来有望な若手が続出していますね。この静岡の2チームは本当に今後が楽しみな存在です。

■ ベスト4決定!札幌はJ2史上2度目の快挙
いや、この23日の祝日、私は予定を何も入れていなかったものですから、天皇杯の全ての試合を堪能することができました。午後1時から11時まで、夕食をはさんで実に4試合も観戦するサッカー三昧の一日でした。一日に4試合観戦だなんて、W杯で1回あったかどうかということです。
ただ、他の3試合もレポートしていくというのはさすがに時間的にも困難なことなので、簡潔に雑感をまとめてこの記事にくっつけてしまいます。

・G大阪 3-1 横浜FM
浦和対磐田がPK戦にまで突入したため、前半がまるまる観れませんでした。その筋のファンからは怒られてしまうかも知れませんが、NHKは5時からの「知られざる野生」なんぞ休止にしてでも、全てを放送してほしかったところですよね。よって、後半戦のみの観戦です。
まず最初に印象的だったのが、横浜の左MF狩野と、期待の若手左サイドバックの田中裕とが、2人がかりでもってしても、日本代表の加地1人を全然抑え切れていない感じであったことです。今の狩野に安定感や守備力を期待をすることはできません(前半の失点も狩野が奪われてからのものでしたね)が、2対1ならばやはり踏ん張ってほしいとは思いました。
そして何より、改革中の横浜に対して確固たるスタイルを築き上げているG大阪と、チームの完成度の違いがまともに表れていたというのが素直な感想です。とにかくG大阪がつなぎまくって、いつものサッカーをしていましたね。
加えて家長の単独によるゴールや、遠藤のミラクルパスでのアシストなど、個人技術でも横浜を圧倒していました。G大阪の妥当な勝利と言っていいでしょう。
育成と補強の両面で失敗してしまった今季の横浜。財政難で苦しみ、来年の方針も明確にはされておらず、選手にもサポーターにも不安が募っています。中澤の去就も依然として不透明。早野新監督の出来次第では、大げさでなく残留争いに巻き込まれてしまう可能性も考えられなくはありません。クラブ側のはっきりとした意思表明が求められています。

・甲府 0-2 札幌
J2での札幌は、今年度の序盤に1試合観ただけなので、最近の札幌の実情は把握していません(笑)。しかしながら千葉、新潟、そしてこの日の甲府と、J1のチームと互角以上に戦ってきた奮闘ぶりは、ごく純粋に賞賛されるべきものでしょう。
札幌は先制してからも、攻め気で積極的だったのが好印象でしたね。ディフェンスラインも最後まで高い位置で、J1に挑戦するんだというモチベーションが強く感じられました。
この日の札幌の勝利により、J2勢の準決勝進出は、川崎以来史上2度目という快挙になりました。ぜひこの意気を維持して、準決勝以降も自分たちのサッカーを貫いてほしいですね。
この試合、個人的には大塚というボランチの選手が目に留まりました。双方が攻撃的な意識の中、一人だけ冷静な立ち回りで、攻守において「効いている」存在だったためです。
懸念材料を申し上げれば、西谷という主力選手の負傷の具合。そしてGK佐藤の不安定さでしょうか。前の新潟戦でも失点につながる大失態を犯していましたしね。
甲府は試合開始早々の自滅とも言える失点で、少しゲームプランが崩れてしまいましたね。焦りからなのか、中央攻撃ばかりに固執して札幌の守備を容易にさせてしまった感もあります。多数放ったシュートもことごとく雑でした。チームをけん引したFWバレーが退団となり、攻撃力のビルドアップが来季に向けての大きな課題になることは間違いなさそうです。

・鹿島 3-2 清水
この上位同士の対決も、見ごたえのある試合でした。鹿島の手数をかけるポゼッションサッカーと、清水の手数をなるべく省く堅守速攻のサッカー。それぞれの特徴が全面に出ていた試合だったからです。
左の高木純の攻め上がりが目立ち、左サイドアタックを多用した清水は、そこからコーナーキックを獲得。ここで鹿島は思いっきりマークがズレてしまい、チョ・ジェジンにドフリーのヘッドを許して、最後には矢島に先制されてしまいました。このコーナーキックで精度の高いキックを見せていた藤本は、後半にはマークをもろともしない強いバランスで、絶妙のスルーパスを通して矢島のゴールのアシストとするなど、Jリーグ新人王の名にふさわしい活躍ぶりでした。
後半から清水の左サイドが沈黙してくると、打って変わって同サイドの鹿島の右サイドバックである内田が元気になってきます。度々オーバーラップをしては正確なクロスを上げていき、終盤には鹿島の2点目と3点目をそのクロスでアシストして、逆転勝利に大きく貢献したのです。だからと言って、清水の左サイドバックの山西1人を責めるのは酷なことでしょう。清水は後半から徐々に、中盤以上でのプレスやマークが目に見えて甘くなっていました。これが、鹿島の右側を含む厚い攻撃についに耐え切れなくなった最大の要因だと感じられたからです。
2アシストの内田。1ゴールをもぎ取り、他の2得点時にはいずれもおとりとなって相手守備陣を惑わせたFW田代。この2人が殊勲者でしょう。2点ビハインドを見事にはね返す、鹿島の逆転劇でした。

天皇杯の準決勝は、第1試合がG大阪対札幌、第2試合が浦和対鹿島となりました。果たして決勝戦ではG大阪と浦和の頂上決戦がまた観られるのでしょうか。準決勝は29日に行われます。


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8 コメント

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TBありがとうございます! (シュガー)
2006-12-25 08:56:51
こんにちは。
素晴らしい分析ですね。非常に勉強になります。
もし良かったらこれからもTBしてくれると嬉しいです。
返信する
Re: TBありがとうございます! (シュガー) (みのる)
2006-12-25 12:41:24
どうも、こんにちはー。
閲覧していただいて、ありがとうございます。
また同じ試合を題材にして記載した際には、こちらこそぜひTBさせていただきたいと存じます。
これからもよろしくです。
返信する
Unknown (k-regista)
2006-12-25 21:25:48
はじめましてこんばんわ^^TBどうもです。
非常に分かりやすい解説のブログですね^^

ジュビロは勝てるチャンスも十分ありましたし、2点目を決めたあとからバタっと守備での集中が途切れてしまいました。まぁ若さからなのかもしれませんが、この問題は今に始まったことではないのでじっくり対処していきたいです。

上田は普段ならもっといい選手なんですが、この試合は何か消極的でした。
犬塚はホントに上手くハマったカンジで、彼の思い切りの良さが光りました^^

25歳以下の若手主体の後半でしたが、レッズも主力がいなければそこまで差は無いことが発見できたので有意義な試合だったと思います。
返信する
Re: Unknown (k-regista) (みのる)
2006-12-25 23:48:24
どうもーはじめまして^^

勝てるチャンスどころか勝てた試合だったかも知れませんねー。守備の集中力の欠如でしたか。
最近で言えばあれですか。川崎どころかG大阪まで破って連勝した後の福岡戦。試合終盤までその集中が持たず、「注意していた」というカウンター2発を立て続けに浴びてしまい、「あれ、なんで福岡に?」と思わされた敗戦でした。
このあたりはビシッと福西、鈴木、田中とかが若手を引き締めてほしいところですね。

これまであまり磐田の試合を観ているわけではないのですが、上田はこの試合だけでも、特に前半とかは思い切りの良さが出ていてとても好印象な感じでしたよ。20歳なのに。ただ、後半からは今ノリノリの山田とのマッチアップになってしまっていたのが、非常にかわいそうだったと思ったのです・・・。

犬塚はリーグ戦でも浦和に得点しているのですよねー。相性がいいのでしょうか。

この上田といい犬塚といい、若手の台頭によってここまでの試合ができるのならば実に明るい兆しですよね。
あとは伸び遅れているカレンだけでしょうか。このオフシーズンで徹底的にシゴキ抜いて鍛え上げてほしいですね!
返信する
Unknown (take-05)
2006-12-26 02:48:20
はじめまして、こんにちは。TBありがとうございます。
 かなり読み応えのあるブログですね。勉強になります。というよりも、まさか拙ブログの駄文にTBが着くとは思ってもいませんでした。普段はゴール裏で見ていて、この日は珍しくメインでまったりと見ていたのですが、近年は応援(声出し)に力を入れすぎていて分析がかなりおざなりになっているなと、この試合を見て痛感しました。私もまだまだ勉強が足りないなと反省することしきりです。

 この試合、PK戦の蹴り直しばかり注目されるようですがPK戦のジャッジは試合中のものより比較的厳しく執られるようです。トーナメントの一発勝負ではなおさらなんでしょうね。この辺りの意味合いを取り違えると、とんだ恥を書いてしまうので注意が必要です(私はもう恥を書きましたがw)
 私は現地で遠目から見ていたので良く分からなかったのですが、テレビで見ていたのであればGK佐藤は両足で飛んでラインから出ていたとのことで・・・。みのるさんのPKのキックの質から見た視点はうんうんと頷いてしまいました。確かにあのシュートコースではGKは幾ら頑張っても届きませんね。

 それにしても今の磐田は本当に良いチームになりましたね。一頃のような、ちょっと憎たらしい面が消えて随分と逞しくも清々しいサッカーをするようになったなーというのが第一印象でした。ホントは静岡西部のチームはヒールのイメージが似合うんじゃないかというのが私の中での脳内イメージなのですが・・・(笑)

 長文失礼しました。それではまた。
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Re: Unknown (take-05) (みのる)
2006-12-26 07:16:02
こんにちは。はじめまして、take-05さん。

私も観戦に訪れるときは、ほとんどは中央のやや後方よりで広く眺められる席ばかり選んでしまっていますね。最前線の席やゴール裏など、選手たちの間近での迫力やサポーターの熱気といった、生ならではの臨場感からはだいぶ遠ざかっており、それはそれで相当もったいないとは思い続けています。時間的に余裕さえあれば、会場では好き勝手に盛り上がって、後で自宅で録画しておいたその試合の放送を観て冷静に振り返るというのも一つの手なのでしょうねー。

まあ、私はPKの蹴りなおしといえば、アテネ五輪での一幕を思い出してしまいます。ニュースにもなっていました。その模様が現在「Youtube」という映像投稿サイトで、違法なアップロードながら(見る分には何の罪も害もありません)視聴可能なので、お暇ならご覧になってみてください↓(笑
http://www.youtube.com/watch?v=mlCz7wGqtRE

「清々しいサッカー」とは言いえて妙ですね。現在の磐田と清水はまさにそんな感じですよね。ドゥンガ在籍を経て、「黄金の5人の中盤」などといったスターをズラリと並べていた様とは大違いです。それでも今年の終盤を見る限り、若手育成と戦術浸透がそのまま順調に進んでいけば、また追われる立場になっていくのもそう遠い日のことではないかも知れません。

長文で力強いコメントどうもありがとうございました。私もご覧のとおり、まとめきる能力がないのか、長文主体の記事ばかりをアップしています。また何かの機会にでも、お越しいただいて閲覧してくだされば幸いです。
それでは。
返信する
はじめまして! (チーパパ)
2006-12-26 22:32:13
TBありがとうございます!
ふむふむと読み入ってしまいました。

たしかに優勝ボケですね。ゴール裏でも「俺達で目を覚ましてやろうじゃねーか!」とコールリーダー。
しかし、当のゴール裏サポーターもあの2点目で一挙にスイッチが入った感じでした。サポーターも優勝ボケだったかもしれません。
また浦和の分析、批評を期待しています!
返信する
Re: はじめまして! (チーパパ) (みのる)
2006-12-27 00:52:52
どうもはじめまして!
わざわざコメントありがとうございます。

ひたすら目指した念願の初優勝を遂げたため、少ししぼんでしまうのは致し方ないのかも知れませんね。でもタイトルはタイトルです。ギドのラストでもあります。やはり最後まで全力を尽くしてほしいですね。
次戦は国立ですが、そこまで遠いわけでもないと思うので、ぜひまたゴール裏からスイッチ全開で二冠への後押しをしてあげてください。

多分、準決勝の浦和対鹿島は記載するとは思います。そうなったら、よろしければぜひまたお越しください!
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