小沢辞任なら『主計局支配』に暗雲。省内は再び戦国時代

ゲンダイネット
小沢秘書逮捕で狂った“エース温存”戦略  
財務省㊤

 小沢一郎民主党代表の公設第1秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕されたニュースは、霞が関にも大激震を走らせた。財務省の若手官僚は言う。
「幹部連中は、夕方からテレビの前にかじりつきでした。官邸、自民党、民主党ルートの〈担当官僚〉が携帯で直接収集してきた情報で情勢の見極めに腐心していました」
 財務省が慌てふためくのには訳がある。民主党シフトに大きく舵を切りかけていたからだ。
 危険水域に達していた麻生内閣の支持率低下、中川前財務相の「酩酊会見」などで、政権交代は既成事実のように語られていた。そうした環境の中で、日に日に発言力を増していたのが、香川俊介主計局次長(52)だ。
 香川は、入省当時から木下康司主計局次長、田中一穂審議官、桑原茂裕理財局次長らと共に「昭和54年組の4天王」と呼ばれるほど評価が高かった。
 かつて、小沢代表は細川内閣時代に盟友・斎藤次郎元大蔵次官とコンビを組んで「国民福祉税構想」をぶち上げたが、2人の橋渡しをしたのが若かりし日の香川だ。竹下内閣で官房副長官だった小沢に秘書官として仕え、小沢に「大蔵省で最も優秀な頭脳を持つ男」と評された官僚でもある。
 その後、下野していた自民党が与党に復帰し、斎藤一派の官僚たちがことごとくパージされていく中で、香川はしぶとく生き残ってきた。
「その香川―小沢ラインが復活していた。財務省が賢いのは、香川さんに小沢さんとのパイプを切らせなかったこと。香川派の官僚は小沢政権になれば、ポストは選び放題と鼻息が荒かった」と、他省の官僚からやっかみが漏れていた。
 最近、財務省は「しくじり」が多かった。総理秘書官は財務官僚が筆頭だったのに、福田政権時代の林信光秘書官が寵愛を受け損ねた。麻生政権でも、浅川雅嗣秘書官はその他大勢だ。そこで、政権交代で一気に権力を取り戻そうと腹を固めたばかりだったのだ

小沢辞任なら『主計局支配』に暗雲。省内は再び戦国時代  
財務省㊦

「小沢の秘書逮捕さえなければ、新布陣は完璧だったはずなのに……」
 主計官僚のひとりは肩を落とす。
“小泉の懐刀”だった丹呉泰健主計局長(57)がキャリア的に葬られたとしても、小沢一郎代表のかつての側近・香川俊介主計局次長(52)を重用することで実質的な「主計局支配」が続くはずだった。
 香川の他にも勝栄二郎官房長(58)、真砂靖主計局次長(54)と主計畑のエリートが次世代の財務省を支える準備は万端だったと泣き言を漏らす。
「最近、斎藤時代の悪夢が頻繁に蘇るんだ」と、主計局幹部は言う。かつての大物次官・斎藤次郎が、細川内閣時代に小沢とコンビを組んで一時代を築いたことはすでに述べた。しかし、小沢が権力の座から退くと同時に、斎藤子飼いの主計官僚たちは冷や飯食いとなった。
 代わって台頭したのが、主税局官僚たちだった。主計官僚が定位置だった次官の椅子も奪われた。今回も、同様のことが起きるのではないかと彼は心配しているのだ。
 財務省で、本当の意味で力を持っているのは杉本和行現次官ではない。田波耕治元国際協力銀行総裁や武藤敏郎元日銀副総裁などに代表される元次官メンバーである。元次官たちは幾つかのグループに分かれており、局ごとにラインが細分化され、現役の幹部職員は皆、その勢力図に組み込まれているとみていい。
「それぞれ持っている政治家のパイプが違うから、小沢失脚で逆に日の目を見るラインが出てくると思いますよ」と、若手官僚のひとりは解説する。
 小沢失脚で主税局が台頭する可能性が出てくるだけでなく、逆に主計局の反主流派が力を持つことも考えられる。省内は再び戦国時代だ。
 だが、省内の争いにうつつを抜かしているわけにはいかない。どんな政権になろうとも、〈財務省〉が生き残ることこそが命題だ。
「官僚政治と揶揄されるほど財務官僚が権力を持っていたのははるか昔。今では時の政権に表立って逆らうと次官OBすら天下りができなくなる情けない役所です」と、その若手はため息をついた。

▽よこた・ゆみこ 埼玉県出身。96年、青山学院大学卒。週・月刊誌で主に女性、官僚、政治をテーマに記事を執筆。著書に「私が愛した官僚たち」(講談社)、「ヒラリーをさがせ!」(文春新書)。4月から「ニュースの深層」(朝日ニュースター)サブキャスター
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