なんか高校球児みたいなタイトルですね。
発表終わりました。
しばらく成瀬の話はしませんw
なんか、卒論の時以上に成瀬と親密になれた気がしました。
言いたいこと言ってやった感があるので、満足はしてるのですが、
なんせ質疑が盛り上がらなかったのが心残り。
自分の発表が終わったあと、バタバタと他の人の発表を聞きに行ったり、シンポジウムに出ずに昼過ぎから鴨川のほとりでビールを飲みまくったりしてたので、誰からもコメント貰えへんかったし。。しまったな。
しかし、みんな成瀬ってあんまり知らないのでしょうか。というか、知っててもあんまり注目しないんでしょうかね。
ボクは別に成瀬の専門家でもなくて、ただの一ファンなので、ここにきてふと思えば、どれくらいの認知度があるのかちゃんと考えたことがなかったなと。
「今成瀬を見ていることが重要なんだ」とかいいながらw
あなたはボクの口以外から成瀬巳喜男の名を聞いたことありますか?なんか作品見たことありますか?
ということで今日はちょっと成瀬の映画を紹介したいと思います。
前もここで書いたのですが、成瀬は日本映画の黄金期とされる1930年代と1950年代に活躍した監督の一人です。彼は1905年生まれ、1930年に監督デビューしてます。とは言うものの、全キャリアを網羅するのは不可能。映像がありません。でも、1950年代の傑作はDVD化されています。もちろんTSUTAYAでレンタルできますよ。お店によりますが、もしかしたら「思い出映画館」たるコーナーにずらっと並んでいるかもしれません。
で、何を最初に手に取るのか。これはかなり迷うところです。彼の映画は佳作、いや傑作群だから。と、ボクが言っても信じてもらえないかもしれませんね。ま、そんなことを言ってても始まらないのでとにかく見て欲しい作品を5つあげます。ただ5つ並べてもおもしろくないので無理矢理ランキングにしてみましょう。
は~い!では、とあるオタクTSUTAYA店員の成瀬巳喜男ムリヤリランキング!
5位『晩菊』
1950年代作品の中から5つ、簡単やん!と思ってたんですがかなり難しい。なんか4位までは不動で。でも5位はこれだ!主演は我らが杉村春子です。落ちぶれた元芸者のおばさん達の物語。杉村春子は、昔の仲間に高金利で金を貸しまくって、容赦なく取り立てまくるっていうまんまのキャラなんですが、昔惚れた男がふらっとやってきてかなり取り乱します。それがかわいいのなんの。ま、物語は自体は群像劇なんですが、この杉村春子演じる主人公同様、みんな容易にコミットできないくらい人間臭い。それをケタケタと笑ってるうちになぜか、取込まれていく。そう、なぜか取込まれて行く。これが成瀬のすごいところですね。上原謙(加山雄三の父)のだめ男具合も必見です。
4位『浮雲』
これは世が認める成瀬の最高傑作でしょう。でも4位。それはボクは高峰秀子が嫌いだからです。と、いいながらこの作品は高峰秀子じゃないとダメだなとも思う。グダグダとくっついたり別れたりする男女の物語。もー、はっきりしーや!って思うぐらいグダグダです。特に森雅之。こんな男はダメです。そんな男を愛してしまう高峰。その執拗さも怖いです。でもいいの。いいのよ。なんでやろね。何回見ても、雨の中、高峰が振り返るあのシーンで泣いてしまいます。
3位『稲妻』
さて、ここまで来ると順位のつけようがなくなってくるんですが。卒論で扱ってるし。3位は、大映作品。主演は高峰秀子。だから3位なのかも。でも一番最初に見てほしいのはこれかも。父親がみんな違う4人兄妹の物語。この映画で何がすごいかって言うと、一番肝心なところで言葉を排除してしまうところですね。主人公は高峰演じる一番したの妹なんですが、物語は彼女の家族に対する反発の視線で描かれていく。こんな家に生まれたのは不幸だ、不幸だ、やだやだ、さっさと出て行こう、縁を切っちゃいたい、と言う感じで。でも、それがひっくり返る瞬間があるんです。それがクライマックスになるんですが。なんと成瀬はそれを稲妻とピアノの音だけで処理してしまうんです。別に何も解決してないのに、なぜかすがすがしい気持ちにさせる。登場人物も、観客も、あの瞬間は恐ろしく映画的だと思います。ちなみに、ボクの好きなキャラは欲望の塊のような縫子姉さんです。めっちゃやな奴やけど憎めません。
2位『山の音』
まず一言。山村聡最高!!!おっさんと嫁の密かな恋の物語です。卒論ではそうは読みたくなかったんですが、やっぱそうですね。こんな義父のもとを去る原節子が信じられん!ま、おっさんが勝手に嫁に恋心を抱いてて、嫁はその優しさには心惹かれるけど、浮気者の夫に耐えきれずに出て行くって話です。もう、おっさんの優しさにこっちが惚れてしまう感じです。ここで重要なのは、まなざし。均等に振り分けられてるように見える、おっさんのパートと嫁のパートが、実はおっさんのまなざしに基軸がおかれて語られていたと気づく時、すっごく悲しくなります。でも、ラストで救われるんです。おっさんではなくこっちが。意味わからんこと言ってますが、見たらたぶん分かると思います。
1位『めし』
ボクはここから入りました。この作品に出会わなければ、きっと今頃成瀬の名を口にすることもなかったでしょう。初めて見た時、一人でガッツポーズをしたのを覚えています。ほんとにいい。人間の感情って、口にできるほど明確化することってそうそうなくて、口にしようと努力するってこともなくて、でもそんなよくわかんない名もなき感情の中で生きてるんですね。だからこそよくわからんけど日常がしんどいことって多い。でも、だからこそよくわかんないけど日常が輝く瞬間もあるわけで。成瀬はその瞬間を見事に捉える。この作品はそれを一番感じさせてくれると思う。それを体験してください。あなたはあの原節子の表情に何を感じるでしょうか。
番外編『あにいもうと』
これが今回発表で扱った映画です。ちょっと手に入りにくいので除外しましたが、一応紹介します。ボクの考える本質的な魅力を語り出すと、7000字くらいかかります。これは、兄と妹の反目と愛情の物語。男に妊娠させられて家に帰ってきた哀れな妹を愛してるが故にただただののしりまくる兄(森雅之)と、そんな兄にめちゃ反発しながらも「あんな兄さんの顔を見たくなる時もあるのよ」とか言ってしまうかわいい妹(京マチ子)の物語です。父親がところどころ登場するんですが、その父親・赤座って登場人物の視線がどういう意味を持つのかって言う議論をしました。一番の見所は、なんといってもこの兄いもうとの喧嘩。森雅之の口上のような罵詈雑言と、それに負けじと抵抗する京マチ子の発する凄まじくパワフルな「汚い」女言葉。この掛け合いが美し過ぎる。でもね、赤座がいいんです。自分の存在価値を失った寂しい男なんですが、彼はひたすら失ったものを見続けるんですよ。ボクらはその視線の隣で物語をみることになるのです。いいです。山本礼三郎。
え~。かなり乱暴なコメント付きのランキングでしたがいかがでしたか?これをきっかけに、、ならんかもしれへんけど、成瀬を見ることになったら、話しましょう。ここに書いたことより、もうちょっとだけちゃんと考えてるつもりです。
せやけど、今成瀬を見る意味ってなんやろね?
そこも一緒に考えましょ。
あ
また、成瀬の話で終わってしまった。