ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第2回ドイツパンでワインが飲みたい【後編】

2014-12-02 11:20:18 | ワイン&酒
11月30日に開催した 第2回 「深まる秋にメッツゲライのデリと楽しむドイツパン&ドイツの赤ワイン」のリポート後編では、ワインを紹介します。

※パン&料理は 【前編】

さて、主役のもうひとつが ドイツワインです。
冬に向かっていく季節を考え、ドイツの赤ワイン をテーマとすることにしました。


今回の主役は ドイツの赤ワイン 3アイテム

ドイツは白ワインのイメージが強いですが、赤ワインもつくられています。

栽培面積では、白ブドウ:黒ブドウ=64.2%:35.8%(German Wine Instituteの統計より 2012年実績、以下同様)です。
ワインの色別で見ると、白:赤:ロゼ=59.5%:30.8%:9.7% となり、ロゼが入ってきます。

やはり白が優勢ですが、ドイツ市場でのワイン消費量で見ると、勢力が変化します。
[自国ワイン消費量] ロゼ:赤:白=11%:37%:52%
[輸入ワイン消費量] ロゼ:赤:白=10%:60%:30%

輸入ワインは赤ワインが好まれているようです。

ドイツでは、1980年代くらいにフランスやイタリアにインスパイアされ、フランス料理、イタリア料理への関心が高まるとともに、料理と一緒に楽しむ辛口のワインを、レストランだけでなく家庭でも飲むようになってきました。
その中で、料理に合う辛口の赤ワインの需要が伸びてくるのも自然の流れといえるでしょう。



まず、ドイツで栽培されている黒ブドウ品種を見てみましょう。

【ドイツの黒ブドウ品種 栽培面積】 2012年
1位 シュペートブルグンダー (=ピノ・ノワール)
2位 ドルンフェルダー
3位 ポルトギーザー
4位 トロリンガー
5位 シュヴァルツリースリング (=ピノ・ムニエ)
6位 レゲント
7位 レンベルガー (=ブラウフレンキッシュ)
8位 ザンクト=ラウレント
9位 メルロ
10位アコロン

※今回は シュペートブルグンダー、ドルンフェルダー、レンベルガー をピックアップ。


赤ワインの生産量/比率が高い生産地を見てみると…

【ドイツ13生産地域別 赤ワイン生産量/比率】2012年
1位 ヴュルテンベルク(621,000hl  66.9% -2位)
2位 ファルツ(577,000hl  33.7%-3位)
3位 ラインヘッセン(559,000hl  27.0%-5位)
4位 バーデン(358,000hl  31.8%-4位)
8位 アール(28,000hl  71.8%-1位)

生産量1位かつ比率2位の ヴュルテンベルク、シュペートブルグンダーの生産量がダントツの バーデン、生産量と比率がいずれも高い ファルツ からチョイスしました。

提供した順番に紹介していきます。


Herxheimer Himmelreich DORNFELDER 2011 Weingut Petri
ヘルクスハイマー・ヒンメルライヒ ドルンフェルダー 2011 ペトリ醸造所 (Pfalz) 

ドルンフェルダー は1950年代に開発された交配品種で、品種登録は1981年。
栽培もしやすく、色が濃くて他の品種とのブレンドにも使いやすいことから、栽培面積をどんどん増やしています。
また、色は濃いけれど、タンニンがやさしく、チェリーやレッドカラントなどの赤系フルーツのアロマがフルーティーで魅力的なことから、今、ドイツで最も愛されている赤ワイン品種のひとつです。
フルーティーなアロマを生かしたやさしいスタイルから、バリック樽で熟成させ、タンニンがしっかりとし、味わいが濃厚で深みのあるフルボディタイプまであります。

ペトリ醸造所のドルンフェルダー は、果実味がふっくら丸く、弾力がありました。
タンニンも丸く、よく溶け込んでいます。色はかなり濃いですが、飲むとやわらかで、酸もまだフレッシュさを保っています。アロマは品種由来のフルーティな甘さがあります。ふっくらしているのに、するする自然に入ってくるワインです。

1665年より続くペトリ醸造所の現当主は13代目。以前は樽でワインを収めていましたが、ガイゼンハイム大学でワイン学を修了した13代目のゲルト・ペトリ氏が醸造所を引き継いだ1977年以降は、自社ブランドのワインを瓶詰めしています。
栽培では、害虫駆除剤や除草剤を一切使用していません。収穫量を抑え、収穫は手摘み。ブドウはていねいな選果を経て仕込まれます。
専門誌での評価も得ている生産者です。

※参考価格2,500円(税抜) (輸入元:株式会社シュピーレン・ヴォルケ)
http://item.rakuten.co.jp/yu-un/sw-p22/



Durbacher Schlossberg Spätburgunder Trocken Erste Lage 2012
Weingut Markgraf von Baden
(Baden)

ドゥルバッハー・シュロスベルク シュペートブルグンダー エアステ・ラーゲ 2012
マルクグラフ・フォン・バーデン醸造所

シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)は、ドイツNo.1の生産量を誇る黒ブドウ品種です。
ピノ・ノワールの生産量では、ドイツは、フランス、アメリカに次いで3位!
しかも、豪州+ニュージーランド+オーストリアの3か国を合わせた生産量に匹敵するとは、意外や意外!ドイツのシュペートブルグンダーって、実はスゴかったんですね。

シュペートブルグンダーは、884年、カロリング家のカール3世がブルゴーニュ地方からボーデン湖畔地方にもたらし、だんだんと北に栽培地を広げていきました。ボーデン湖畔地方は現在のバーデン地方になります。北の産地であるドイツでは植物の生育期間が長く、他の産地にはない独特の風味を持つワインになります。
イチゴ、サクランボ、キイチゴ、カシスなどの赤い果実の芳香が豊かで、味わい豊かなシュペートブルグンダーは、完熟ブドウの果実味を生かした、繊細でまろやかな、タンニンがやわらかいタイプから、モダンなスタイルで、濃いルビー色で、酸がやわらかく、タンニンが強調されたフルボディタイプまで、多彩なワインがつくられています。

マルクグラフ・フォン・バーデン醸造所のシュペートブルグンダーは、1本目のドルンフェルダーと比べると色調が薄く、透明感があります。また、ピノ・ノワールらしいかぐわしい芳香に目が細まりました。
かわいらしい果実味がじんわりと染み込み、まろやかで滋味。繊細なふっくら感、うま味があり、余韻まで長く続きます。

ここは、20世紀初頭まで約900年間バーデンを統治してきたバーデン大公国の君主が所有していた醸造所。現在は大公国の末裔ベルナール殿下が当主となり、早い段階でのグリーンハーベストなど、徹底した品質管理をはじめ、さまざまな改革を行なっています。
認証は取得していませんが、ビオロジックです。
エアステス・ラーゲは1級畑。樹齢平均26年のシュペートブルグンダー(平均収量:35hl/ha)をオーク樽(フレンチオーク225L、3000L、新樽20%)で熟成。
ドゥルバッハーは村の名前で、そのテロワールの素晴らしさから“黄金の村”と呼ばれてきた土地だそうです。畑の土壌は花崗岩。

※参考価格3,100円(税抜)  (輸入元:株式会社モトックス)
http://www.mottox.co.jp/search/detail.php?id=646697



Stettener Lemberger Untere Bunte Mergel 2012 Weingut Beurer (Württemberg)
ステットナー レンベルガー ウンテレ・ブンテ・メルゲル 2012ボイラー醸造所

レンベルガーは19世紀にオーストリアからドイツにもたらされた黒ブドウ品種で、オーストリアでの呼び名はブラウフレンキッシュ。オーストリアに地理的に近いヴュルテンベルクでの栽培が多い品種です。
アロマはブラックベリー、プラム、チェリーを連想させ、まろやかで、果実の風味にあふれた味わいを特徴としています。
気軽に味わえる、比較的ライトで、フルーティーな味わいのデイリータイプのワインから、エキス分とタンニンが豊富で、コクと厚みのあるワイン、タンニンを強調したワイン、特別な日のための格調高いバリック仕立てのワインまであり、色々なシーンで楽しめます。

ボイラー醸造所のレンベルガーは、樽で熟成させたフルボディタイプ。樽といっても古樽なので、樽のニュアンスはほとんどなく、やわらかみと複雑味を与えてくれています。凝縮感があり、タンニンのキメがみっちり詰まり、非常にしなやかなボディで、ビロードのような舌触りです。なめらかな果実味とあいまって、すーっと入り、じわ~んと広がります。酸の存在もしっかりあり、食欲を湧き立たせます。レンベルガーでここまでのレベルの高いワインは、なかなか出合えないかもしれません。

ボイラーも、ファルツのペトリ同様、以前はブドウを農協などに売る栽培農家でした。1997年に現当主が修行から戻り、オーガニック栽培を始め、2007年からはビオディナミも始めました。2010年にはECOVINの認証を取得、2012年2月からはDemeterのメンバーとなっています。

ヴュルテンベルクは、ドイツの13のワイン産地の中で他の2倍近くのワインを飲む土地柄で、ワインは地元で消費されてしまうことがほとんどだからです。メルセデスやアウディ、ポルシェといった自動車メーカーの本拠地である州都シュトゥットガルトは文化レベルが高く、食への関心も旺盛。おいしい食事をいただくと、たっぷりのワインがほしくなりますからね(笑)
地元で多く消費されているのは、軽いタイプのトロリンガー種の赤ワインで、ワイン居酒屋などで、この地方独特の取っ手のついたグラスでゴクゴクと飲まれています。これはぜひ地元で体験してみたいですね。

※参考価格3,580円(税抜) (輸入元:ワインキュレーション株式会社(京橋ワイン))
http://item.rakuten.co.jp/kbwine/eva1211/#eva1211



合わせたパンはこちらの3種


手前)ベルリーナラントブロート  左)キャロッテンブロート  右)ロージネンブロート
(ベッカライ シュタインメッツ)


料理は シャルキュトリの盛り合わせ (メッツゲライ・ササキ)

※パンと料理の詳細は 【前編】をご覧ください

ペトリのドルンフェルダーは厚みがありながら、ジューシーでまろやかなので、パン単独ではふっくらとして甘さのあるロージネンブロートがよく合いました。キャロッテンのニンジンの甘みもよく、鶏とジロール茸のテリーヌと合わせて。

マルクグラフ・フォン・バーデンのシュペートブルグンダーには、キャロッテンブロート、ロージネンブロートがよく合いました。
ベルリーナラントブロートにしっとりとした鴨のリエットを載せると、シュペートブルグンダーとの相性がよくなりました。リエットのしっとり感が、デリケートな味わいのシュペートブルグンダーに良かったようです。香ばしくスモーキーな田園ベーコンをベルリナーブロートで挟むのもいいですね。ハム類との相性もいいです。

ボイラーのレンベルガーは、ワインとしての完成度が高く、これだけでもいただけますが、パンを合わせるなら、ロージネンブロートに塩気のあるものを添えると、よりマッチします。ウオッシュチーズなども良さそうです。
一般的に、フルーティーなレンベルガーには、ハムやチーズ(軽いタイプ)をよく合わせるようで、また、BBQのお供にもピッタリだとか。ボイラーのこのワインのようにコクのあるタイプは、パテ、鶏肉や仔羊のグリル、熟成チーズが合うようです。
フルボディなのに、ワインに尖った所がありませんので、脂気のあるパテ・ド・カンパーニュをシンプルなベルリナーブロートに添えて、というのも良く、これもかなりワインが進みます(笑)




今回の赤ワインは、ドイツを代表する品種、産地からチョイスしました。
どれもレベルが高いワインなので、今までのドイツの赤ワインのイメージが大きく変わった参加者の方も多かったようです。
アンケートを見ると、好みのワインはそれぞれ分かれ、また、単独で飲む場合に一番好きなワインと、パンやシャルキュトリと合わせた時の好みのワインが異なっていたりと、なかなか興味深いコメントが寄せられました。
ということは、フードのありなし、合わせるフードによって、ワインのさまざまな顔を楽しめる、ということですね。



今回の3アイテムは、お安くはないですが、品質から考えるとむしろお買い得なワインです。
2500~3000円台というのはライバルが多い価格帯ですが、だからこそ、ここぞという時に、こういうドイツの赤ワインを用意すると、皆に驚かれ、喜ばれるように思います。
ドイツの赤ワインへの興味が湧いてきた方は、この機会にぜひチャレンジしてみてはいかが?



シュタインメッツの佐々木店長より「シュトレン」を特別に差し入れいただきました!


これは嬉しいサプライズ! 早速、私はこの後に訪問するお宅への手土産にしました

最後に、ご協力いただきました輸入元各社様、会場のメッツゲライ・ササキ様、パンを焼いてくださったシュタインメッツの佐々木店長様に、心よりお礼申し上げます。


※書き切れなかったことは【補足編】


【参考】
第1回ドイツパンでワインが飲みたい → リポート


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