ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

今こそギリシャワイン!

2015-03-11 18:41:58 | ワイン&酒
先月、ギリシャの高品質ワイン生産者 「ブターリ社」(Boutari & Sons SA)から、ブターリ家の5代目の一人であるミハリス・ブターリ氏が来日し、同社の所有する2ブランド『ブターリ』『キル・イアニ』 のプレゼンテーションを行ないました。



ブターリ社は、ギリシャ北部のナウサに1879年に創設された家族経営のワイナリーです。
ギリシャで最も古いワイナリーのひとつで、かつ、最も規模の大きなワイナリーのひとつでもあり、現在はギリシャの主要産地に6 つ、フランスに1 つのワイナリーを所有しています。
大規模ではありますが、米国のワイン誌で「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」17 回連続受賞など、クオリティの面でも世界的に高い評価を受けています。

「ブターリ社は、ギリシャのトップ生産者として海外で認識されている」と、ミハリス氏。



ミハリス・ブターリ氏 は、アジア・パシフィック地区の流通を統括する「ミハリス・ブターリス・セレクションズ(MBS)」(上海)の代表取締役を務めています。
同社は、ブターリを含む高品質ギリシャワイン、および世界のワインや食品のポートフォリオを中国市場に提供し、それらを輸入する企業の支援も行なっています。

日本市場へは、ブターリのワインは、残念ながら輸出されていません。
※かつてサントリーが輸入していました(2000年代前半)



ギリシャワインは、2004年のアテネオリンピックの時に注目され、ギリシャからのボトル・ワインの輸入(2004年1~8月)は、数量 720kl(約 96万本)、前年同期比 5.8 倍、価額3億400万円、同 6.6 倍(東京税関の統計資料による)と、他の開催地の時よりも格段にオリンピック効果があったようです。
しかしながら、熱が冷めると元に戻ってしまうのは、日本人の性質でしょうか…

では、改めて現在のギリシャワインを見てみましょう。

「ここ20年でギリシャのワインルネッサンスが起こり、品質の高いワインがつくられるようになってきた。ギリシャ独特のテロワール、ギリシャ独特のブドウ品種があり、ワインに独特の個性が表現される」とミハエル氏は言います。


例えば、サントリーニ島原産の白ブドウ 「アシルティコ」


Boutari Santorini Assyrtiko 2014 (Santorini PDO)

ミハリスさんによると、「アシルティコはギリシャの白ブドウで最も興味深い品種」
暑い場所でも酸がしっかり保たれるのだそうです。

ギリシャは暑い、と一般的には思われがちですが、山が多く、日中は暑いけれど、夜には気温が下がって涼しくなるため、果実はよく熟し、ブドウに酸がしっかり残ります。

このワインはギリシャではとても人気があり、いつも品切れしてしまうとか。
シーフード料理に合い、日本の刺身にもピッタリ、といいます。

グレープフルーツを思わせる柑橘の風味があり、ほんのりミネラルの塩気も感じました。
スッキリ爽やかな味わいで、これはたしかに日本の食卓にも似合いそう。

サントリーニ島のワインは、火山岩土壌の溶岩のミネラルが感じられ、長い余韻があるのが特徴になるようです。



右手前)Kir-Yianni Akakies Sparkling Rose 2011 (Amyndeo PDO)

ロゼ色のワインは、Xinomavro(クシノマヴロ)という土着黒ブドウの辛口スパークリングです。
クシノマヴロは果皮に色素、タンニン分が多いブドウ で、それを16時間スキンコンタクトさせ、鮮やかな色を出しています。

イチゴ的なフルーティーさがあり、最後に甘みが来る辛口で、食欲を心地よく刺激します。
このキレイな色を楽しむには、昼の日差しの下が良さそうですが、夕暮れ時も似合いますね。
パーティーで、食前酒に、あまり難しく考えずに楽しみたいですね。



Boutari Naoussa 2012 (Naoussa PDO)

クシノマヴロ100%の赤ワインがこちらの“ナウサ”。
ミハリスさんによると、少し田舎臭いオールドスタイルの赤ワインだと言います。

素朴でやさしく、無理のない味わいなので、これは料理に合わせやすいでワインですね。
煮込み系料理、シンプルに焼いた肉、ハンバーグなど、あまり手をかけないものが良さそう。

一見すると地味に見えますが、実は某評価誌で91点を獲得している実力者。
ギリシャらしさを味わうには嬉しい1本だと思います。


Boutari Naoussa Grande Reserva 2008 (Naoussa PDO)

こちらもクシノマヴロ100%の赤ワインで、上級レンジのグラン・レゼルバ。
色はやや薄めながら、タンニンが凛としています。
熟成の影響でしょうか?どことなく、ピノ・ノワールやネビオロを思わせる印象があり、エレガントでエクセレント!
でも、ただ単に熟成させただけでは、田舎娘が貴婦人になりません。収量、選別が厳しいはずです。
ともかくも、素朴だと思っていたクシノマヴロがここまで変わる、ということです。



Kir-Yianni Diaporos 2011 (Naoussa, Imathia PGI)

ディアポロスは、クシノマヴロとシラーのブレンド
2005年が初ヴィンテージ。
しなやかでシルキーで、超モダンなスタイルです。
果実のもわもわした感じがあり、濃さも酸もしっかりあり、ジューシーで、なめらかでしっとり。
アルコール度数も14.5%と高め。これは完璧にフルボディ!「10年はもつ」、とミハリスさん。
評価誌でも95点、コンクール金賞など、評価の高いワインです。

このワインに古きよきギリシャの面影はほとんど感じませんが、こうした新しいハイエンドワインが存在するギリシャの底力を目の当たりにしました。



Kir-Yianni Estate 2009 (Naoussa, Imathia PGI)

このワインもクシノマヴロとメルロのブレンド
キル・イヤニのフラグシップ的なワインだそうです。

フレンチオークとアメリカンオークの両方で熟成させていて、バニラっぽい風味があります。
これもモダンなスタイルですね。イチゴ的な赤いフルーツの中に、タバコっぽさ、スパイシーさ、紅茶の葉などの複雑なアロマがあります。
クシノマヴロとマエウロがいいバランスを取っていて、安定して飲める赤ワインです。

クシノマヴロも、ブレンドする相手によって印象が変わってくるのが面白いですね。

クシノマヴロのワインは長期熟成に耐え、20~30年は熟成可能なものもある そうです。




ギリシャには他にも多彩な土着品種がありますが、モネムヴァシア、モスホフィレロ、アギオルギティコetc...と、名前が呼びにくくてなかなか覚えきれません(笑)
まずは、白はアティリシコ、赤はクシノマヴロと自分で品種を決め、ひとつずつ味わいながら覚えていくといいでしょう。



現在の日本のワイン市場では、その時々の流行で消費者の動向が大きく左右します。
近年だと日本ワイン、ビオ系ワイン、冷涼系、さらには甕づくりや壺づくりと、消費者の興味はどんどん変わっていきます。
ギリシャワインは、2004年のアテネオリンピック効果を一時的に享受しましたが、大きな流行に乗れるタイプではないと思います。

ですが、流行を追うのではなく、ギリシャワインが楽しまれている本来の姿 がわかると、私たちの日常生活の中に無理なく取り入れられそうな気がします。

ギリシャのワインは、オリーブオイル、野菜、チーズ、ドライフルーツなど、いわゆる地中海料理と合わせて日常的に飲まれています。
日本でも地中海ダイエットが話題になりましたが、そうした地中海系の料理をいただく時のひとつの選択肢として、ギリシャワインを考える のも楽しいのでは?



オリーブをつまんで手軽に      ギリシャ料理「サガナキ」、ハロウミチーズの鉄板焼など


ギリシャのフェタチーズを載せた定番サラダ  海老のカルパッチョはスッキリ系アシルティコと


ポークのスヴラキ(串焼き)、ムサカ、ラムギロ(細切り肉)   デザート盛り合わせ



古きよき素朴なワインもあれば、非常にモダンで高品質のワインもあり、ひとくちにギリシャワインといっても、多様化していることがわかります。

没個性的なワインに飽き飽きしている方には、ミステリアスで、土着品種の個性が楽しめるギリシャワイン をひとつの提案としてオススメしたいと思います。

※輸入元募集中です

※料理は 「スピローズ」 (ギリシャの伝統とジャパニーズモダンの融合)
 東京都港区六本木3-15-24-2F TEL.03-3796-2677
 http://www.spyros.tokyo/
[注意]現在は東京・蒲田に移転しています

ブターリ社  http://www.boutari.gr/en/main.php
キル・イアニ http://www.kiryianni.gr/


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 熊本の黒豚のグアンチャーレ... | トップ | ダイソー100円ワイン【続編】 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ワイン&酒」カテゴリの最新記事