常任指揮者3年目のシーズン幕開けとして高関健が選んだプログラム。冒頭は武満徹の「3つの映画音楽」。『ホーゼ・トレイス』(1959)と『黒い雨』(1989)と『他人の顔』(1966)を繋いだ三楽章形式の小品である。色々な顔がある武満の作品群の中のこの分野のエッセンスのように興味深く聴いた。冒頭ということもあって、ちょっとザラついた弦楽アンサンブルだったかなと思った。二曲目は堀米ゆず子を迎えてベルクのバイオリン協奏曲。グァルネリ・デル・ジェスの馥郁たる響とオケとの親密なかけあいは見事という他なく、娘のように可愛がった少女マノンへのレクイエムは甘やかな想いに昇華して心に響いた。休憩を挟んでフィナーレを飾ったのは、ブルックナーの交響曲第3番ニ短調。大雑把に言って全部で3稿ある中で、今回は1877年の初演に使われた「第二稿」による演奏だった。通常最も良く演奏されているのは、色々と効果的に改訂された「第三稿」であろうが、今回は敢えてブルックナーの真意を最も良く伝えていると考えられる「第二稿」を使用したとの説明がプレトークであった。毎度のことながら外連味のない質実剛健な演奏。それだけに素朴な味わいというか、演奏効果のあがらない部分も多く、ダイナミックスの工夫は至るところでされているのだが、いささか私には冗長に感じられた60分だった。とは言え荒井英治率いるシティ・フィルの音は瑞々しく冴えわたり、堅固なアンサンブルを披露していた。これは確実にこの二年間の音楽監督の功績であろう。それにしても聴衆の入りが悪いのは何故だろう。おそらく今東京で一番躍進目覚しいオケである。そして、名曲コンサートに終わらないなんとも多彩で魅力的な年間プログラムなのだ。これは真に残念なことである。
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