紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【桜玉吉】の物語を追う[御緩漫玉日記編・前編]

2011-02-27 15:17:06 | ○○の物語を追う

前回「幽玄漫玉日記編」からの続き



コミックビーム2003年11月号にて、桜玉吉先生の新作【御緩漫玉日記】の連載が始まります。

いままで、

【防衛漫玉日記】・・・地球防衛(釣り)
【幽玄漫玉日記】・・・会社経営

ときて、今回は

【御緩漫玉日記】・・・"おっとりエロ"

というコンセプトが設定されました。
まあ、今までのシリーズを読んでいると、前半はそのコンセプトで描かれていても
後半はまるで関係なくなっているので、今回も話半分程度にコンセプトを認識しておけば
よいでしょう。
では、【御緩漫玉日記】の桜玉吉の物語を追跡します


  ついに購入、伊豆の一軒家



【幽玄漫玉日記】にて、玉吉が購入を夢見ていた伊豆の一軒家。
ついに、玉吉理想の家が見つかりました。



伊豆で中古の家を探し始めてはや3年。
内覧38件目での決断でした。



漫画連載を休筆して1年半。
貯金どころかたくわえを喰いつぶす一方で「そろそろ伊豆に家なんて言ってられなくなってきた」
が、それでも玉吉は「伊豆で静かに暮らす」ことをあきらめきれません。
そんな折、たまたま飛び込みで案内されたのがこの家でした。
2002年11月のことでした。

1800万。プラス諸経費でなんだかんだで2000万。
当然、現在休筆中の玉吉の貯金だけではどうにもならず銀行から融資を受けることに。
しかし、玉屋メインバンクのZ銀行からは速攻で融資を断られ、伊豆の地銀A銀行からも
想定より低い金額分の融資しか受けることが出来なかったのです。
が、そこは玉吉。想定より低かった融資の埋め合わせは自分ががんばってしなければならない。
うっすらと、そろそろ漫画連載(しごと)を再開しなければ・・・と思ったことでしょう。

そして・・・



ちょうど、近々住んでたアパートから追い出されることになったぱそみちゃん。
金もなく、引っ越すアテもないという・・・。
玉吉は、仕事場として使うつもりでいた元々の調布のマンションの一部屋の荷物を
来年にも伊豆の家に運びだそうとしていたところでした。
その一部屋をぱそみちゃんに使ってもらえば・・・。

「ウチ来るか?」

伊豆の家とめぐりあい、早一か月。
何か玉吉の周りの様々な事象がにわかに連動し始めそうな予感がした
2002年の年の瀬でした。


  ぱそみちゃんと同居



2003年1月からぱそみちゃんと(調布で)同居することになった玉吉。
ぱそみちゃんは近頃介護の仕事をがんばっていて「このシゴト私向いてるかもしれない」などと
言っており、将来自分がボケたら伊豆で彼女に介護してもらおうと虫のいい妄想にふける玉吉。

そして、ついに



ねんがんの伊豆・玉吉ホームを手に入れたぞ!
今はまだ倉庫状態の家であるが、徐々に家財道具をそろえてちゃんと住めるようにしなければ!

「今年は色々と忙しいぞ!!」

うっすらと自分の心と身体に気力が満ちてくるのを感じる玉吉でした。

・・・が



2003年10月。
調布でのぱそみちゃんとの同居生活は1年持たずに破綻したのでした。



伊豆の広い家に独りぽつんとたたずむ玉吉は、言いようのない喪失感にさいなまれるのでした。


  破綻の原因

詳しく語られていないので、ぱそみちゃんとの同居生活破綻の原因はよくわかりません。
ファミ通で隔週連載している4コマにて、それをにおわせるようなことが少し描かれている程度です。


O村が「そらイカンわ」とか言いつつ嬉しそうに玉吉から聞き出してるので、
エンターブレイン関係の人は結構知ってるんですかね・・・。


ただ、玉吉が今回の破綻のことを文章か漫画か、なにかしらのかたちで40ページもの作品として
まとめていることがわかります。
「ぜったいはっぴょうできないけど」「10ねんごくらいにはっぴょうできるかしら」
などいうようなことも書かれており、非常に気になるところです。

ともかく、心身・財政ともに昨年以上にボロカスな玉吉です。


でも、娘の存在は玉吉にとって救いになっているようです。
娘はこの時点で10歳。

ボロボロの心身をわずかな希望でつなぎとめながら、玉吉は新たなる作品
【御緩漫玉日記】に臨みます。


  【御緩漫玉日記】・トクコ篇 はじまる

以上のことは、【御緩漫玉日記】のいわば序章。
本作のコンセプトである"おっとりエロ"を表現した【御緩漫玉日記】本編ともいえる
「トクコ篇」がはじまります。



時代は、どうやら【防衛漫玉日記】の連載の頃のことのようです。
玉吉はこの「トクコ篇」では、「桜タモ吉」という漫画家として登場します。
そのほか、ヒロポンは「白瀬」。O村は「種村」として、それぞれ
今までの漫玉とは違った名前で登場することになります。(キャラの見た目は今までのまま)

これは、この「トクコ篇」が架空の話であることの暗示のようにも取れますが、
一応、この記事では玉吉の過去回想として素直に受け取ることにします。
(ただ、本章における玉吉等の表記は、「タモ吉」「白瀬」と、作品にならうこととします)



長年、タモ吉の漫画のお手伝いをしてくれていたM君と距離を置くことになり、
代わりのアシスタントとして「牛田トクコ」という専門学校生の女性がタモ吉のもとにやってきました。

トクコさんはとても真面目で知識が豊富で技術のあるすごいアシスタントでした。
とはいえ、まだ若い女性。
夜通し一緒の家で仕事をするには、いささか問題があるようにも思えますが、
この頃のタモ吉は、仕事で知り合った女性とは絶対にそれ以上の関係を持たないという
自由業ルールを頑なに守っており、幾晩も若い女性と二人でいても決してややこしいことには
ならない自信がおおいにありました。

・・・のですが、



いろいろとエロっぽいハプニングが襲い掛かり、タモ吉の自制がいつまで
持つのか、それとも持たないのかー!

というノリが基本の「トクコ篇」。
この過去回想おっとりエロ「トクコ篇」と、現在の日記漫画を描く平常運転の漫玉日記が
ほぼ交互に掲載されるかたちで、【御緩漫玉日記】は連載されました。


  伊豆での生活、玉吉をとりまく人々の現在

伊豆での生活を送る玉吉。家を買って初めての春です。

朝、庭を掃除しながら聴くウグイスの鳴き声。
昼、庭の草をむしる。二週間で育ちすぎだよおまえら。汗かき過ぎだよ自分。
モクレン君。キミはしだれ梅君? あったっけそんな梅?
あ、モクレン君。今日から君の名前ジェルソミーナだからね。
しだれ梅君は、とりあえず正しい名前調べてから。

午後三時。とつぜん無音になる周りの世界。
経験ないぞ、ここまで無音の午後三時。
そこに、やってくるカブの音。郵便配達員だ。
どこから来るのか突如現れるムカデ。カンベンしてください、お願いします。

夕方。早めに雨戸を引き、掘りごたつにおさまり読書。落ち着く・・・
ここに来ると昼の生活になるからイイネ。
眠る前に飲む薬。これ飲まんと眠れない体です。最近量増えた・・・



今日対話した人。
・・・人?

ともあれ、玉吉は仕事の時以外は伊豆の家で平穏に暮らしているようです。
では、玉吉を取り巻く人々はどうでしょうか?


2004年初め。男女問題で極寒の日々だった玉吉の10倍はひどいブリザードにみまわれていたヒロポンです。
玉吉が送った励ましメールの返信の一文。

「いやいや私なんか若輩者の色恋なんぞ玉吉さんの年齢あたりのソレとは悲壮感が違いますから。
 いや必ずや日は又昇ります。生きていれば必ずいい事もあるんですよ桜さんっ!」


なんか病んでます。



人のいる喫煙室で玉吉のシモの話を語りまくるO村です。

「おう!知ってるか?玉吉のやつフラれてやんの!」
「最新情報!玉吉最近、コレが出来てハメ狂っとるらしいで。んで、あんなエロ描いてんの。
 わかりやすいやっちゃのー」


マジ ヤメロよ、O村てめ~~~


鬱持ちの人間の心をかき乱す何気ない一言を言っちゃう担当のオーバ君です。

「玉吉さんって何でそんなにマイナス思考なんですか?」

だって、そんな作風なんだもの~、それでここまでやって来たんだもの~
つか、ウツわずらってる人間にその質問アリ? つか何故今頃?


30年近い付き合いがあって、いまだに謎の多い男・ちょりぞう(ちょりそのぶ)です。

「俺は魚嫌いなの!!」

だ、だってお前…(30年分の魚にまつわる走馬灯)

「さしみは食えるの!カタチが嫌いなの!特に顔!」
「昔仕事場でキミが飼ってた魚の水槽があった時は見ないようにしてたの!」
「釣りで俺が行ったのはタコだけ!」


ええ~、そうだったっけ~? おぼえてねえ~
なあんて言いつつ、いつの間にかしっかり仕事してくれているからちょりぞうさんって素敵。



2004年年の瀬にいろいろと思いだす玉吉。

「実はこの度、私告訴されまして…」(税理士Fさん)
「やっぱ恋っす~」(ヒロポン)
「今度バツイチの医者とお見合いするの」(元妻)
「実は私ホモ裏ビデオ屋の会計してまして…」(税理士Fさん)
「実はもう○君とつきあってマス。テヘ☆ でも今まで通り会いたいです」(謎の人物)



愚鈍な若者にいきどおったあと、言いようのない疲労感に襲われる玉吉。

キモチは10代 仕事のしかたは20代
しかしカラダはどうしようもないぐらい40代で、リアルな悲鳴を上げている。

そして・・・



2005年1月。
玉吉は手術台の上にいました。

と、ここいらで後編へつづきます



次回、さらっと登場してくる玉吉の「脳内彼女の白鳥さん」なる人物の
謎にも迫りつつ、記事を書きたいと思います。

拍手ボタン
記事が面白かったらポチっとよろしくです。

【送料無料】御緩漫玉日記(第1巻)

【送料無料】御緩漫玉日記(第1巻)価格:882円(税込、送料別)

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« いろんなコミックスのおまけ... | トップ | 元ネタから出発! 【ぬらり... »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ( )
2011-02-27 21:58:41
漫画で周りの私生活を暴露しちゃったから人間関係が破綻しちゃったんだろうか、、。

どんどん人に嫌われて疎遠になっていくように感じる。
返信する
Unknown (Unknown)
2011-03-07 23:37:38
しあわせのかたちから通しで読んでるとどうしても
業界の人間関係が問題あるような気がする
愛情があるから長くつきあってるんだろうけど
返信する
Unknown ( )
2011-03-08 05:01:24
トクコさんは全部創作な気がするな。
返信する
Unknown (taka)
2011-03-08 17:14:03
しあわせのそねみから始まったあの作風は、
「ネガティブであればあるほど漫画として面白くなる」という
ある意味諸刃の剣だったんでしょうね。

周囲との軋轢は、漫画に描いているほどは無いような気もしますが、
ぺそみちゃんとの件はボカしすぎていて
まるでどういう結末だったのか分かりませんなー。

なげやりの新装版で村上さんがちょっとだけ
触れていましたが……。
返信する
Unknown ()
2011-03-08 23:41:50
>周囲との人間関係

うーん、どっちかというと、周囲の人間をマンガで
いじくりまわしてる自分に自己嫌悪・自己否定を
してどんどんダウナーになってる気が…
周囲はそれほど気にしてないけど、玉吉が加害妄想的な状態になっているのかと。
本当に迷惑してる人もいるかもしれないけど、悪意のある描き方はしてないし。

>トクコさん

僕も全部創作な気がします。
トクコさんだけ妙にキャラがマンガ的。

>ぱそみちゃん

本当にボカしすぎですねー。
「10ねんたったらはっぴょうできるかな」
とか言ってる40ページのふういんまんがが気になります。
ん?もうそろそろ10年経つんじゃ?
返信する
Unknown (Unknown)
2011-12-05 00:08:53
トクコさんできになるのは「しあわせのかたち」に登場するアシスタントキャラの中に女の子がいましたよね?
一緒に釣り堀に行って一人で大漁だったのがトクコさん?
とか思っていました。
返信する
Unknown ()
2013-12-23 17:51:03
しあわせのそねみ、を検索しておりまして
偶然たどり着いたのですが、
コミックスで読んでいた若かりし頃を思い出して、
本当に懐かしい思い出がよみがえり、
一気に関連記事を読んでしまいました。

ゴミ箱から刺身を拾い漁って食べる
旅館の女の子?がすごく面白くて、
なんて痛々しくてバカらしいマンガだろう
と思いました。

ぱそみちゃんが出てきたあたりから、
なんだかつまらない話しになってきたので、
当時の私は読むのをやめてしまいました。

他のキャラはイヤというほど人間味アリアリなのに、
ぱそみちゃんは美化され、
リアリティにかけるキャラ設定だと思い、
空々しくなって急にどうでもよくなってしまいました。

それからの展開が読めて、嬉しく思います。

編集長とヒロポンの男たち3人のドタバタマンガ&
マンガという虚構の創作と制作が生み出す、
現実という金と健康と生きる術を描いた、
おもしろい作品であると今でも改めて思いました。

記事にしていただいてありがとうございます。
テンポよく、楽しく拝見させていただきました。
返信する
Unknown (Unknown)
2019-04-18 09:33:53
ああ、俺の青春時代を代表する思い出だな・・・
ぱそみ(ぺそみ)ちゃんの作品登場頻度や、ついにはフィギュアまで一般販売された経緯等を見るに、当時玉さんはかなり彼女に入れ込んでいた様だ・・・
そんな彼女との関係を、俺は嫌な予感をしながら読んでいた、まあ、嫌な予感は的中した訳だが・・・
あの回は今も見るのが辛い、トラウマ回である
件のキューブリックであるが、当時俺の立ち寄るホビーショップ界隈では、「サーチ抜き」野郎が居て、発売日に数軒の店を回ったが、綺麗にぱそみだけ(シクレのスーツ玉吉も)買い抜かれており一気に購入意欲を削がれて購入しなかった、実に惜しい事をした・・・
返信する

コメントを投稿

○○の物語を追う」カテゴリの最新記事