MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

神業も第一歩から

2014-10-18 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/18 私の音楽仲間 (625) ~ 私の室内楽仲間たち (598)



             神業も第一歩から



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                 神業も第一歩から
                しっかり区別するのだ
                    沈黙は禁



 弦楽四重奏のジャンルで 80 もの作品を残した Haydn。

晩年は、その名声が国際的に高まりました。

 でも、イギリス旅行では交響曲、そして帰国後オラトリオ
の作曲に追われてしまった。 こよなく愛した四重奏の作曲
をしばらくは許されず、大いに嘆いたといわれます。


 後輩の Beethoven は 16曲。 数の上では及びません。

 ただ晩年には、いわゆる “後期の四重奏曲” に打ち込み、
「このジャンルを “神との対話” にまで高めた」…と讃えられ
ています。

 

 しかし楽譜を詳細に検討すると、“打ち込んだ” というより、
“遊び気分” で作っているフシもありますが…。

 そこが “神業” なのでしょう。

 



 Beethoven の最初の四重奏曲集は、“作品18” です。
ハ短調 作品 18-4 は最後に作られたといわれます。


 演奏例の音源]は、第Ⅰ楽章の冒頭から。 譜例
は Vn.Ⅰのパート譜です。

 Violin は私、San.さん、Viola T.さん、チェロ Su.さんです。



 この後 13小節が経過すると、下の譜例で第二主題が
現われます。  の箇所がそれで、最初は Vn.Ⅱです。

 二段目の最後では、Vn.Ⅰがこの主題を引き継ぎます。


 ご覧ください。 上の “第一主題”、下の “第二
主題” の間には、どうやら関係があるようです。

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 さて塗り絵には、もう一色が見られます。 3つの “Si♭”
の音です。

 見ると、一段目の最後にもありました。 同じリズムの形
は、譜例の後半で頻繁に現われています。


 もうお解りですね。 同時期のピアノ ソナタにも見られる
形で、あの “ハ短調交響曲” に繋がるリズムです。

 差し詰め、実験的精神の顕われでしょうか。


 これをどの程度、演奏の際に強調すべきか? 迷うところ
です。

 今回の音源をお聞きになり、どう感じられたでしょうか。

                                  



                                  

 「さほど強調はしないが、意識はした。」 それが私の
今回の演奏でした。

 「“はっきり” は弾くが、特に強くしない。 むしろ、その
リズムの後を控えめに弾く。」 そんなところでしょうか。


 演奏解釈において、先入観は禁物。 でもこのリズム
が現われるのは、第Ⅰ楽章だけではないようです。




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