MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

本当に退院?

2013-02-26 00:00:00 | 生活・法律

02/26          本当に退院?




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 入院後、回復は順調に進みました。



 出血が止まったのが確認でき、栄養点滴は終りました。
翌三日目から、“食事解禁” です。

 最初は重湯など、ほとんど水分だけでしたが、三分粥、
五分粥と、徐々に固形物が多くなりました。 おすましの
具、野菜の煮物に、魚のすり身…。




 そして輸血は三日間で終了し、止血剤の点滴も
飲み薬に変わりました。



 と言っても、完全に “気分爽快” というわけではありません。
直後の二日間は、軽い頭痛と微熱に悩まされました。

 看護師さんによると、原因は「急に血が増え、体内を循環し
始めたので、全身がビックリしているんですよ。」

 なるほど。




 まだ歩行禁止なので、大半は “寝て過ごす” 状態
です。 そんな生活に、家族が持ってきてくれたラジオ
が潤いを与えてくれました。

 音楽や語学講座。 しばらくご無沙汰していた放送
番組を、ゆっくり聴くことが出来たのです。 もちろん
イヤフォンで。



 分厚い、重いスコアも、家族に運んでもらいました。
こういう機会でないと、なかなか集中できない作業
なので、無理を承知で頼んだのです。




 六日目の朝、歩行が解禁になりました。 家族には、
さっそく喜びの報告メールを送ります。

 しかし朝食前には、嫌な採血が! それも二本分です。

 (痛いなー。 まあいいか…。 これで、トイレまで行ける
んだし。)



 そして洗髪コーナーがあったので、すっきり!
一週間以上、気になっていましたから。



 (でも、あと何日続くんだろう? この入院生活…。)

 私は髪を洗いながら考えました。

 長引くなら、先の予定を早めにキャンセルし、周囲にかける
迷惑を、最小限に抑えなければなりません。



 それにもう一つ、気がかりな事があるのです。




 病室に戻ると、すぐ、主治医の Y先生が来られました。

 「よろしければ、明日、退院されてもいいんですが。」



 (何だって!? 歩行解禁になったばかりなのに?)

 「その代わり、通院していただくことになりますが。」



 私は、喜んでそれに従うことを約束し、身辺の事情
などを話し、退院をお願いしました。

 「解りました。 では明日退院です。」




 私は、またも家族へ報告メールを送りました。 きっと、事態
の急展開に面食らうことでしょう。

 (先ほどの採血の結果が、おそらく良かったからだろうな。)




 さっそく夕食時に登場したのが、新顔の薬です。 ピロリ菌
退治の錠剤で、帰宅後も、これを服用し続けることになります。



 しかし注意する点が一つ。 朝夕の食後、忘れずに服むこと
です。 一週間続けて。 3種類5錠を、取り違えずに。

 そうしないと退治できないばかりか、耐性菌を作ってしまい、
また別の薬を試さなければならないのです。



 退院から一週間経った現在、これは間違い無く
実行することが出来ました。




 さて、明日は退院。 慌ててもしょうがないので、昼食
を摂ってから帰宅することにしました。

 しかし事態は、あまりに嬉しい急展開! 家族の都合
がつかず、一人で帰らねばならないのです。

 心配なのは、荷物が多いこと。 ラジオ、重いスコアも
あります。 短期間とはいえ、家族に運ばせた品物は、
かなりの量になっていました。



 (まあいいや、タクシーで帰れば。)



 しかし幸いなことに、弟に報告すると、「車で送ってあげるよ」
…と言うのです。 平日なのに、仕事を休み、おまけに、朝から
遠くまで運転して来て。

 彼は二度も見舞いに来てくれていました。 綺麗なお花まで
持参し、飾ってくれて。



  SN3R0395



 そのお花、一週間以上経っても健在です。 まるで
私の退院を、一緒に喜んでいるようです。




 七日目、退院の日の朝になりました。

 朝食を摂り終わると、「はい、点滴の続きです。」



 (何だって! これから退院するんだよ? ボク。)



 「退院の日に点滴するかたは、珍しいんですけどね。」

 看護師さんはニコニコしながら、まだ腕に刺さっていた
針にチューブを繋ぎ、点滴を始めました。



      SN3R0387



 見ると、“ブドウ糖…” と書いてあります。 私は素人なので
解りませんが、色からして、おそらく造血剤でしょう。

 (そうか、採血の結果が良好とはいえ、貧血を最後まで心配
してくれてるんだな。)



 事実、日を追うごとに、私の “立ちくらみ症状” は改善して
いました。 以前なら、起き上がったり、首を上へ向けるだけ
でクラクラしたものです。

 しかし今は、恐る恐る上を向いても大丈夫です。

 (だから、歩行許可が出たんだな。)




 さて、昼食が最後の食事になりました。 ご覧のとおり、
三日目の “解禁食” に比べたら雲泥の差です。 何しろ
重湯など、水分だけでしたから。

 日頃、「食べるのが楽しみだ」…とは決していえない私。
でも、このときばかりは嬉しかった。



  SN3R0379




 思えば、入院二日目は、ヴァレンタイン デ―。 “両腕に
点滴” の一日でした。

 でもそのお蔭で、奇跡的に一命を取りとめ、回復できた。
“1~2週間” という当初の見込みどおり、7日間という入院
期間で済んだのです。



 退院から一週間後の今、体調は良好です。 以前よりも
いいぐらいです。 これが、自分に与えられた “プレゼント”
なのでしょうか。

 救命士、救急隊員、医師、看護師の皆さんからの。

 そして、家族や弟たちからの。



 (それにしても、こんなに体調がいいのは、なぜだろう?)

 単に、貧血が改善されただけではないような気がするのです。



 (ひょっとすると出血は、だいぶ前から続いていたのではない
だろうか?)

 少なくとも、この二、三ヶ月間。 あるいは、前回の定期検査
以後、半年間以上も。

 いや、それと気付かないほど、微量の出血が、もっと前から。




 私は、ここ数年の体調の変化を思い起こしてみました。

 四、五年前から高血圧になった。 それまでは低血圧
だったのに。 素人としては、まことに不思議なのです。



 疑われる原因は貧血ですが、さらに、その根本原因は?

 もしかすると、私の胃に長年住み着いた、ピロリ菌のせい?




 憶測の域を出ない、私の素人考え…。 何はともあれ、
健康に気を付けねば。



 5年以上に亘って、毎朝毎晩測ってきた血圧。 高ければ
がっかり。 数値が下がればワクワク。

 しかし、入院当日の朝には[87/52]と、異常な下がり方を
していた。 貧血症状も、急激にひどくなっていました。



 今思えば、これは危険信号だったのに。 少しずつ
出血を重ね、やがて吐血に至ったのです。




 あれだけ几帳面に血圧を測り続けたのに、
今回の深刻な事態を迎えてしまった私…。



 「木を見て森を見ず。」

 (自分の健康状態は、多面的な材料から
判断しなけりゃ駄目だ。)



 救急搬送、胃カメラ、入院、点滴、輸血。

 それまでしたことのない経験を、一瞬に
して味わった私の、愚かな体験談でした。