ロドス島の薔薇

Hic Rhodus, hic saltus.

Hier ist die Rose, hier tanze. 

小堀桂一郎氏「皇室の御安泰を真剣に考へる秋」について

2011年11月29日 | ニュース・現実評論
小堀桂一郎氏「皇室の御安泰を真剣に考へる秋」について

【正論】東京大学名誉教授・小堀桂一郎 皇室の御安泰を真剣に考へる秋 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/111123/imp11112302580000-n1.htm

小堀桂一郎氏が「皇室の御安泰を真剣に考へる秋」と題して、現在の皇室問題を論じておられる。その核心にある問題点を指摘した結論としてもっとも正しい見解と立場を示していると思う。かっての「有識者会議」なるものは、むしろ「凡識者会議」とも名付けた方がよかったのかどうかわからないが、その座長を務めた吉川 弘之氏などに果たしてこうした問題に発言する資格があるかどうかが問われなければならない。もちろんロボット工学者だから歴史問題について発言する資格はないとまでは言わないが、国家の根幹に関わる問題についての決定に参画する資格が、果たして「有識者」と呼ばれる人たちに本当にあるのかどうかについては、会議を組織する以前に真剣に検討される必要があるだろう。

皇室典範に関する有識者会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/

このような問題は「民主主義」の原理である「多数決による決着」などとはまったくなじまないテーマであることだけは確認されておく必要がある。「真理」についての判断は、ただ認識の質のみが、哲学の高低、論証の正否のみが問題にされなければならない。

その核心は、日本の皇室の「系譜の論理」を確認し、それを過去と同様に未来永劫において踏襲してゆくことにある。それは「国家の論理」から導かれるものであって、この問題に関しては、小堀氏が述べられているように、イギリスなどの外国の影響を考える必要は全くない。日本国に固有の論理に従って判断すべきことだからだ。

追記(2011・12・07)

引用した記事が失われる場合があるので参考までに保存して記録。

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【正論】東京大学名誉教授・小堀桂一郎 皇室の御安泰を真剣に考へる秋

平成21年元旦の本欄に於(お)いて、筆者は、「皇位継承に制度的安定を」と題して見解を述べる機会を得た。それは、標題に云ふところの制度的安定を図る研究は或る民間の組織によりほぼ完了したので、後は、その方策の実現を政治の力に俟(ま)つばかりであるとの含みを持たせた意見表明だつた。
ところが、その夏に政権交代といふ事態が発生し、新たに政権の座に就いた民主党内閣の下では、この問題についての正統性に則つた論議は到底望めないと判断し、以後、皇室典範の再検討に関はる議論には公の場での発言を控へ、沈黙を守ることにしてゐた。

≪宮内庁長官の発言には疑問≫

ところで、宮内庁の羽毛田信吾長官は去る10月27日の定例記者会見で、現行の皇室典範には〈皇位の安定的継承という意味で課題がある〉との旨を述べた由である。〈課題〉といふのは、これから解決しておかなくてはならない問題性、難点といふ意味であらう。

この日の会見での羽毛田長官の発言は、英国の王位継承法に、継承順位を男子優先から男女の別を問はぬ長子優先へと改める動きがある(10月29日に英連邦首脳会議で法改正に合意が成立したと報じられてゐる)との報道についての感想を求められての答へであつたさうである。

英王室の王位継承法にどの様な改定が行はれようと、それはその国固有の歴史と当面の事情や輿論(よろん)の動向に従つてのことであらうから、我々はそれを唯(ただ)静観してゐればよろしく、何らの注釈も意見も挿(さしはさ)む必要がない。

然(しか)し、宮内庁長官が右の外国の事情を何故か念頭に置いた様子で、我が国では幾人かの女性皇族の方々が結婚に近い年齢になつてをられる時、皇位継承の安定と(女性宮様方の今後の)ご活動といふ意味で課題が生じてゐる、と述べてゐる点については批評と注釈が必要であらう。

先づ、皇位継承の安定といふ事については、現在、今上天皇の次代以下の世代に皇位継承権者がお三方居(お)られる。その意味で、皇位の将来は実は安定してをり、謂(い)はば問題がない。

≪負担軽減目的なら皇族増加も≫

問題はむしろ、現在の継承権者が現実に皇位にお即(つ)きになつた将来に於いて、その陛下のお近くに在つて公務を御支へ申し上げ、必要に応じて代行をも務められる皇族の数があまりにも少く、且(か)つ、当分その増加を期待することができない、といふ点にある。

その脈絡に関してならば、宮内庁長官の所見に云ふ、女性皇族が御(ご)結婚によつて皇籍を離れ、一民間人となることへの疑問、従つて女性の宮様が結婚されても依然として皇族の身分を保たれ、両陛下の公務の補助・代行を務められる様に法改正するのが課題だとの着想は首肯できる。

但(ただ)し、かうして創立された女性皇族を中心とする新しい宮家が皇位継承の安定に寄与し得るか否かは、その結婚のお相手となる男性の血統によつて決ることであり、直接には長官のいふ所の安定にはつながらないと考へるべきである。差当つては、どこまでも皇室の御公務の御負担の軽減といふ点に貢献する存在と受けとめておくのが適当である。

誤解を招かない様に付記しておくが、皇位継承の安定にも寄与し得る形での女性宮家の創立といふことももちろん可能である。それは右に記した如(ごと)く、今後、結婚される女王様方の御配偶が、血統の上で皇統につながつてをり、且つ、それが、なるべく近い過去に於いて、そのつながりが証示できる様な方であれば、その御当人ではなくとも、その次の世代の男子(母方の血筋からしても、皇室の血を引いてをられることが明らかなのであるから)が、皇位継承権を保有されることは、系譜の論理から言つて、道理に適(かな)つたものになる。

≪法改正は些小の修正で済む≫

以上に記したことは、現行皇室典範の比較的軽微な改正を以て実現できる事項である。肇国(ちょうこく)以来厳修されてきた我が国の皇位継承上不易の三大原則(念の為(ため)記しておくならば、〈一 皇祚(こうそ)を踐(ふ)むは皇胤(こういん)に限る〉〈二 皇祚を踐むは男系に限る〉〈三 皇祚は一系にして分裂すべからず〉の三項)については、事新しく再検討を促す必要は全く無い。宮家の増設といふ目的のためには、法規運用技術上の観点から現行法に些小(さしょう)の修訂を施せば済む事である。

従つて一片の醜聞に終つた曾(かつ)ての「皇室典範に関する有識者会議」の如き仰々しき委員会めいたものを組織する必要もない。少数の良識ある法曹家及び国史学者に委託すれば然るべき改訂が成就できるであらう。

3月の東日本太平洋岸大震災に際しての被災民の救恤(きゅうじゅつ)と慰撫激励の上で、国民統合の象徴としての天皇と皇室の御仁慈が如何に貴重であり、又有難いものであるか、国民全体が又改めて認識を深めたところである。皇室の御安泰と御清栄は即(すなわ)ち国民の安寧の最大の拠(よ)りどころである。今又、その事を真剣に考へるべき秋(とき)になつてゐる様である。(こぼり けいいちろう)

c 2011 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
 
 
 
 

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