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かんたん解説 NBAなんでもとーく

“20,000 for AI!”

2007年01月25日 | '06-07 シーズン

アイバーソンがキャリア通算20,000得点を達成した。
これがどれぐらいすごい記録かというと、現役で通算20,000得点をすでに超えているのはシャックとゲイリー・ペイトンの2人だけ。
歴代でいうとアイバーソンで30人目の達成となるそうだが、アイバーソン(通算713試合)よりも早く達成できたのは、ウィルト・チェンバレン(499試合)、マイケル・ジョーダン(620試合)、オスカー・ロバートソン(671試合)、カリーム・アブドゥル・ジャバー(684試合)、エルジン・ベイラー(711試合)の5人しかいないそうだ。

試合後、記念のゲームボールをもらったアイバーソンは、周りに感謝の気持ちを伝えながらもこう語った。
「どうせボールをもらうなら、自分の記録の時じゃなくて、チームが勝った時のボールを毎回欲しいな。今はそのこと以外頭にないからな。」
自分の記録なんかどうでもいい、それよりチームの勝利の方が何倍も嬉しいんだ、という気持ちが言葉の端から強くにじみ出る。

さらにアイバーソンはこんなことも言っていた。
「20,000点だぜ。もう十分すぎるほど点は取ってきた。今度はメロに20,000点を取らせてやる番だ。」
自分が得点の第一オプションであり続ける必要はない、進んでメロのサポーティングキャストになる、という心意気を声高に示す。

そう振られたメロは、「そんなのまだまだうんと先の話だよ」と笑うが、リーグ最高のスコアラーでありスーパースターであるアイバーソンが全面サポートをしてくれているのだから、気分もモチベーションも最高潮だろう。
まだ体のキレもシュートのタイミングも完全には戻っていない復帰2戦目にして34点を奪っているのは、アイバーソンの10アシストという数字があってこそだ。

試合終盤には、チーム全体で勝つんだという姿勢も十分見せた。
第4Q残り3分を切った場面、相手守備陣がAI&メロに気を取られている間に、マークを十分引き付けてからノーマークのスティーブ・ブレイクへ。
ブレイクは貴重な同点3ポイント、そしてダメ押し3ポイントと連続で成功させ、完全に敵の裏をかいた。

ジョージ・カールHCの戦略も光る。
それまでメロに次ぐ第2エースだったJR・スミスをあえてベンチスタートにすることで、AI、メロ、JRのうち必ず誰か2人はコート上にいるというローテーションを作った。
これで20点級スコアラーが常に2人コートにいることになり、ゲームを通して得点力が落ちる心配はなくなる。
そしてもう一つ、打ちたがりでショットセレクションの悪いJRの手綱をコントロールできるという効果もある。

アール・ボイキンスを手放し、ブレイクを獲得したのも正解だった。
身長の制約でアイバーソンとの併用が難しいボイキンスより、上背があり素早く的確にパスを回す司令塔型のブレイクの方がうまくフィットする。
メロの復帰初戦では、12アシストをマークしながらターンオーバーがわずかに1つという素晴らしいコートセンスを見せた。
自らあまりシュートを狙わないが、今日の試合のように必要とあらば勝負所でも3ポイントを沈める力がある。

スターターは、AIとメロ以外全員シュートを打たなくても意に介さず、得点以外で貢献できる選手を選んでいる。
アシスト役のブレイク、リバウンド職人のレジー・エバンス、ディフェンスの鬼マーカス・キャンビーの3人がそれだ。
まだ一緒にプレーした期間が浅く、チームメイト同士が馴染んでいない状態の中での5連勝は意味が大きい。
少なくとも相性は悪くないという心強い自信ができるだろう。

「アイバーソンとメロはきっとうまくいくはず」
アイバーソンの移籍が決まった時に感じたこの想いは、実際に一緒にプレーする彼らの姿を見るにつれ、徐々に確信へと変わってきた。


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