未来を舞台にした、ちょっと不思議な短編集を読みました。
パオロ・バチガルピの「第六ポンプ」。
舌を噛みそうな名前の作者は、アメリカの作家です。
1冊の中に10篇の短編が収録されていますが、全て未来(近かったり、遠かったりはするけど)のお話。
印象的だったのは、
「フルーテッド・ガールズ(The Fluted Girl)」
「砂と灰の人々(The People of Sand and Slag)」
「ポップ隊(Pop Squad)」
「イエローカードマン(Yellow Card Man)」
「やわらかく(Softer)」
「第六ポンプ(Pump Six)」
ですね。
以下、簡単に内容をご紹介。
「フルーテッド・ガールズ(The Fluted Girl)」
楽器として生体改造された、双子の姉妹のお話。
お互いの身体に息を吹き込み、体中にあいた穴を押さえる事によって音色を奏でる「フルート化された少女達」。
お話は、姉のリディアの一人称で進んでいきます。
「砂と灰の人々(The People of Sand and Slag)」
体の中に「ゾウムシ」を飼い、砂でも泥でも食糧にして栄養に変換できるようになった人類。
ゾウムシ技術のおかげで、過酷な環境でも生き延びる事を可能にした人類。
そんなところへ、ある日一匹の「犬」が現れる。
砂は食べられず、怪我をすれば治療が必要で、回復までには何日もかかる…。
そんなもろい「犬」を、きまぐれに飼ってみたチェン達のお話。
「ポップ隊(Pop Squad)」
医学の進歩に伴い、「若返り」を繰り返して永遠の命を手に入れた世界。
それに伴い、子供を産む事は禁止された。
それでも、若返りの権利を放り出し、隠れて子供を産む事をやめない女たちは後を絶たない。
ポップ隊は、そんな彼女たちを取り締まり、生まれた子供を「処分」する警察である。
永遠の命を手に入れたため、15年がかりで演奏を完成させる事ができた、美しきビオラ奏者。
永遠の命を手放し、摘発に怯えながら隠れ暮らす「母親」たち。
両者の狭間に存在する、ポップ隊員の主人公。
恐竜のぬいぐるみが象徴的なお話です。
「イエローカードマン(Yellow Card Man)」
タイのバンコクで、かつては「大人(たいじん)」として富める生活を送っていたチャン。
遺伝子改造された疫病がはびこり農地を奪われ、今ではイエローカード難民として、底辺での生活を余儀なくされている。
大昔にクビにした使用人マー・ピンは、対照的に出世してイエローカードを返却して移民にまでなろうとしていた。
かつての主と使用人。そして逆転した関係。
最後の、チャンの決断とは…?
「やわらかく(Softer)」
ある土曜日の朝、優雅にバスタブに身を沈める夫婦。
しかし、妻は死んでいた…。
妻はなぜ死んでしまったのか。
夫が決めた行動とは?
「第六ポンプ(Pump Six)」
化学物質の摂取過剰の為、出生率の低下と痴呆化が進行したニューヨークが舞台。
主人公は、下水処理施設で働く男。
停止したポンプを修理できないかと奔走する主人公がけなげだけど、まわりの人間の痴呆化に、ちょっと恐ろしくなる一篇。
ざっとご紹介しましたが、他の短編もおもしろいですよ。
描かれている世界が特殊なので、受け付けないという人もいるかも。
若返りとか、環境適応能力を身につけるとか、「科学の進歩!」という華やかさもあるのに、なんだか退廃的なムードが漂います。
未来って、なんか、希望に満ち溢れてはいないのね。
現在感じている、自分ではどうしようもない出来事とか、諦める事とか、不信感とか、そういう物はなくならないのかなぁ…。
などど、考えてしまいました。
(まあ、フィクションなのですけどね)
「第六ポンプ」
パオロ・バチガルピ
早川書房(ポケット・ブック版)
パオロ・バチガルピの「第六ポンプ」。
舌を噛みそうな名前の作者は、アメリカの作家です。
1冊の中に10篇の短編が収録されていますが、全て未来(近かったり、遠かったりはするけど)のお話。
印象的だったのは、
「フルーテッド・ガールズ(The Fluted Girl)」
「砂と灰の人々(The People of Sand and Slag)」
「ポップ隊(Pop Squad)」
「イエローカードマン(Yellow Card Man)」
「やわらかく(Softer)」
「第六ポンプ(Pump Six)」
ですね。
以下、簡単に内容をご紹介。
「フルーテッド・ガールズ(The Fluted Girl)」
楽器として生体改造された、双子の姉妹のお話。
お互いの身体に息を吹き込み、体中にあいた穴を押さえる事によって音色を奏でる「フルート化された少女達」。
お話は、姉のリディアの一人称で進んでいきます。
「砂と灰の人々(The People of Sand and Slag)」
体の中に「ゾウムシ」を飼い、砂でも泥でも食糧にして栄養に変換できるようになった人類。
ゾウムシ技術のおかげで、過酷な環境でも生き延びる事を可能にした人類。
そんなところへ、ある日一匹の「犬」が現れる。
砂は食べられず、怪我をすれば治療が必要で、回復までには何日もかかる…。
そんなもろい「犬」を、きまぐれに飼ってみたチェン達のお話。
「ポップ隊(Pop Squad)」
医学の進歩に伴い、「若返り」を繰り返して永遠の命を手に入れた世界。
それに伴い、子供を産む事は禁止された。
それでも、若返りの権利を放り出し、隠れて子供を産む事をやめない女たちは後を絶たない。
ポップ隊は、そんな彼女たちを取り締まり、生まれた子供を「処分」する警察である。
永遠の命を手に入れたため、15年がかりで演奏を完成させる事ができた、美しきビオラ奏者。
永遠の命を手放し、摘発に怯えながら隠れ暮らす「母親」たち。
両者の狭間に存在する、ポップ隊員の主人公。
恐竜のぬいぐるみが象徴的なお話です。
「イエローカードマン(Yellow Card Man)」
タイのバンコクで、かつては「大人(たいじん)」として富める生活を送っていたチャン。
遺伝子改造された疫病がはびこり農地を奪われ、今ではイエローカード難民として、底辺での生活を余儀なくされている。
大昔にクビにした使用人マー・ピンは、対照的に出世してイエローカードを返却して移民にまでなろうとしていた。
かつての主と使用人。そして逆転した関係。
最後の、チャンの決断とは…?
「やわらかく(Softer)」
ある土曜日の朝、優雅にバスタブに身を沈める夫婦。
しかし、妻は死んでいた…。
妻はなぜ死んでしまったのか。
夫が決めた行動とは?
「第六ポンプ(Pump Six)」
化学物質の摂取過剰の為、出生率の低下と痴呆化が進行したニューヨークが舞台。
主人公は、下水処理施設で働く男。
停止したポンプを修理できないかと奔走する主人公がけなげだけど、まわりの人間の痴呆化に、ちょっと恐ろしくなる一篇。
ざっとご紹介しましたが、他の短編もおもしろいですよ。
描かれている世界が特殊なので、受け付けないという人もいるかも。
若返りとか、環境適応能力を身につけるとか、「科学の進歩!」という華やかさもあるのに、なんだか退廃的なムードが漂います。
未来って、なんか、希望に満ち溢れてはいないのね。
現在感じている、自分ではどうしようもない出来事とか、諦める事とか、不信感とか、そういう物はなくならないのかなぁ…。
などど、考えてしまいました。
(まあ、フィクションなのですけどね)
「第六ポンプ」
パオロ・バチガルピ
早川書房(ポケット・ブック版)