この危機を乗り越えるためには、もっと熱狂する「遊び心」を持つことだ。


この危機を乗り越えるためには、もっと熱狂する「遊び心」を持つことだ。

してきた一台の車を見

2017-04-11 11:32:20 | 日記

分自身の体を見ているように思ったという事例――について、友人の娘がいったことを思いだしたからだった。わたしが質問をすると、エドワードは驚きとうれ身體脂肪しさのいり乱れたような顔をして、一度などはあとでちゃんと話すからというようなことをつぶやきさえした。
 ちょうどこの頃、ダービイ氏が亡くなった。わたしは後にそのことを神に感謝した。エドワードはひどくうろたえたが、とり乱したりはしなかった。結婚以来、家族のつながりという、エドワードにとっては死活にかかわる観念のすべてを、アセナスが自分にむけさせていたので、エドワードは驚かされるほどたまにしか父親に会っていなかったのだ。とりわけさっそうと自信たっぷりな態度で車を運転することが増えてからは、エドワードが父親の死に対して冷淡すぎるという者もいた。エドワードは父の死を機会に実家にもどりたがったが、アセナスが住み慣れたクラウニンシールド荘を離れたくないと主張した。
 その後まもなく、わたしの妻は友人――まだダービイ夫妻と交際していたわずかばかりな者のひとり――から、奇妙なことを聞かされた。その友人は夫妻に会うためにハイ・ストリートのはずれに出かけ、猛烈なスピードで私道からとびだた。車を運転していたのはエドワードで、妙なほど自信たっぷり、せせら笑いにも似た表情をうかべていたという。呼鈴をならすと、気味の悪い若い女中が出てきて、アセナスも外出しているといった。しかし立ち去るときに、ふと屋敷に目をむけると、エドワードの書斎の窓の一つに、あわててひっこめられる顔がちらっと見えた。その顔は、いいようもないほど胸をうたれる、苦痛、敗北、な客製化すすべもないやるせなさのこもる表情をたたえていた。それは――いつもの横柄さからは信じられない――アセナスの顔だった。しかしその訪問客は、その瞬間、アセナスの顔から外を見つめていたのが、うつろで悲しげなエドワードの目だったと断言している。
 エドワードの訪問はやや頻繁になり、ほのめかしもときとして具体的なものになった。エドワードが口にしたことは、さまざまな伝説が巣食う古めかしいアーカムの街ですら信じられないものだったが、エドワードは正気を疑いたくなるような誠意と確信をこめて、暗澹《あんたん》たる知識を口にするのだった。さびしげな場所で開かれる恐ろしい集会のこと、闇の秘密をはらむ深淵に通じる広い階段が地下にある、メイン州の森の中心部に位置する巨石建造物の廃墟のこと、不可視の壁を通って他の時空に通じる複雑な角度のこと、遠方にある禁断の地や他の世界や別の時空連続体を探検することが可能になる慄然たる人格交換のことを、エドワードはわたしに話した。
 ときとしてエドワードは、ある種の気違いじみたほのめかしに説得力を加えるため、わたしを呆然《ぼうぜん》とさせるような物を見せることがあった――それは地球上に存在するとは思えないような、とらえがたい色と困惑させられる肌理《きめ》をもった物体で、その途方もない曲線と表面は、およそ考えられる幾何学の法則にしたがうものではなく、何の目的に用いるかは見当もつかなかった。エドワードは「外部から」手にいれたものだといった。妻が手にいれる方法を知っているというのだ。エドワードはときどき――かならずおびえきった聞きとりにくい囁き声で――以前大学の図書館でときたま見かけた老エフレイムについて、さまざまなことを遠まわしにいった。そうした言及は決して具体的なものではなかったが、老魔術師が――肉体的と同様に霊的な意味において――本当に死んでい公屋按揭るのかという、きわめて恐ろしい疑惑を中心問題としてもちだされているようだった。
 ときにエドワード・ダービイは会話の途中で不意に言葉を切ることがあった。わたしはそんなとき、あるいはアセナスが遠くからダービイの話を察知し、何か未知の精神感応による催眠術のようなもの――学校で示した何らかの類《たぐい》の力――でもって、エドワードの口を封じることができるのではないかと思ったものだ。日がたつにつれ、アセナスはきわめて不可解な力をもつ目や言葉で、エドワードがわたしの家を訪れるのをやめさせようとしたから、どうやらエドワードがわたしにいろいろなことを話していると疑っていたらしい。エドワードはわたしに会いに来るのが困難になった。ほかのところへ行くふりをして家を出るのだ。