この危機を乗り越えるためには、もっと熱狂する「遊び心」を持つことだ。


この危機を乗り越えるためには、もっと熱狂する「遊び心」を持つことだ。

違いがわかる男のていると

2015-10-28 15:30:25 | 日記

古本屋をめぐっ『美味求真』なる本と出合った。
赤い函(はこ)に収められた立派な装丁で、著者は木下謙次郎氏。

貴族院議員や衆議院議員をつとめた人物で、
この本には、調理法は勿論のこと、
魚の旬の捉え方や日本各地の郷土料理などが書かれている王賜豪總裁
ちょっと面白いのは、そんな美食にとどまらず、
昆虫食や人肉食についても書かれていた。

政治家で美食家と言えば、フランスのブリア・サヴァランの名がすぐに挙がる。
1825年に彼が著した『美味礼賛』が有名。
いまでもフランス料理の真髄として知られている。
そのサヴァランに遡ること32年。
中国・清の時代の官僚だった袁 枚(えん ばい) もそれに匹敵する人物。
彼が著した食に関する本に『随園食単』というのがある。
中華料理に関する正典のような存在。

著した時は、すでに官僚ではなく、南京の西にある廃園を手に入れ、
そこを『随園』と名付け、気侭な隠遁生活をして過ごしたようだ門禁
様々な調理法やその理論などがその本に書かれている。
この本は、まず序文があり、続いて「予備知識」「警戒事項」があり、
そのあと、様々な料理法へとつながっている。
「予備知識」の中では、「取り合わせを知ること」などが出てくるが、
興味深いのは、「警戒事項」。

その中の幾つかの項目を挙げてみると、
まず、「目食を戒む」とある。
目をもって食べるな、という意味だが、
量や品数、良く知られている名の料理など目で魅かれてはいけない。
「穿鑿(せんさく)を戒む」とある。
字は難しいが、余計な小細工をするな、ということ。
「材料の浪費を戒む」は、読んで字のごとし、ムダは慎むこと。
また、
「耳餐(じさん)を戒む」とある。その如く読むと、
「耳で食べさせるな」という事になるが、言わんとするところは、
耳打ちするように「これは、◯◯産の△△」などと言ったりするが、
そんなものに惑わされずに
味の本質をつかむようにせよ、ということらしい。

いつも、このような姿勢で料理に向かっていれば、
昨今、話題となっている食品偽装は、起こりようもないことかもしれない。
今年も余すところ、あとひと月となった。
年の瀬が近づいてくると、
『枕草子』に出てくる
「ただ過ぎに過ぐるもの 帆をあげたる舟 人の齢(よわい) 春夏秋冬」
の一節が思い浮かんでくる。
枕草子』は、全部で約300段。
15年にわたって書かれたもの。なかなかの長編。

この言葉が掲載されている260段が書かれた時期は、
おそらく、人生においても終盤に差し掛かった頃。
清少納言もキレの良かった時代から比べると、
熟しきった感がある。
この段も、いつもの列挙スタイル。
二番目にさりげなく挙げられている「人の齢」という言葉が、
妙に生々しく迫ってくるのは、”こころなし”だろうか?


吉田兼好『徒然草』の72段は、
この『枕草子』の筆法をまねたような表現がある。
挙げているものは、
「賊(あや)しげなるもの。居る辺りに調度の多き、硯に筆多き、
仏堂に仏の多き、、、」と出てくる。
様々に、胡散(うさん)臭く感じるものや、賊しいと感じるものが挙げられている。
それに倣って最近の「賊しげなるもの」を挙げるとすれば、
中国の防空識別圏、東京都知事の「借用書」、TPP。

賊しきものは、世に数々あれど、
東京都知事の、この「借用書」問題、いかにも怪しい。
それを突いてか、今や話題沸騰といったところ。
都知事にとっては、今のとき、「過ぎに過ぐる」どころか、
苦しき日常は、なかなか過ぎていきそうにない。