貧乏人・島謙作

ただの貧乏人です

IT業界の悪習:悪文にしないために心がけていること

2014-03-05 13:48:37 | 日記
IT業界にいると、プレスリリースや、販売代理店のメール、テクニカルサポートの返信などを見る機会があります。中には「笑っちゃいたくなる程」の悪文もあります。私が、そんな悪文を書かないために心がけていることを書いてみました。

-無意味に漢字を混ぜない-

A.「有難う御座います」
B.「有難うございます」

私は漢字を使えばいいとは思いません。IMEがあればどんな複雑な漢字も一発で出てくる便利な世の中です。漢字は表意文字なので、キャッチーです。「有難」という文字だけで、十分感謝の気持ちが伝わります。「御座」を漢字にすると、「有難」と「御座」の文字に目が行ってしまいます。無意味に漢字を使えば偉いと思っている人は、どこに文章の主眼があるのかに注意して、そこにうまく漢字を使うべきです。また「ございます」と「御座います」を使い分けている方は上級のテクニシャンです。

「お見積書をお送り致します」

「致します」は不要でです。「見積書をお送りします」で十分です。「お]がダブっているのはしつこい文面です。一文章に3回出現したら、イエローカードです。

たまに、「お前は漢字しか使わない中国人か」という文章もあります。

「全部了解致しました」
「全て了解しました」

日本語は表意文字の「漢字」と「音」を表すかな文字を組み合わせて表現するから表現が豊かです。「全部」を「全・て」と形容詞で言い換え、間にひらがなが入るることで、「了解」という「表意文字」が引き立ちます。


-「させていただく」を絶対に使わない-

私は、「させていただく」の言い方は「上から目線」であると不愉快に感じます。顧客の前では絶対に使いません。これは私が常に心がけています。もし、選挙演説で「この公約を実現させていただきます」と発言した候補者は、私は絶対に投票しません。

なぜ彼は「この公約を実現します」と言い切れないのでしょうか。

これは「私はこの公約に自信がない」から「させていただきます」と同じ意味です。

「実現します」

と言い切った候補者は、非常に快い。例え彼が結果として実現できなくても、それは結果論です。「実現します」と言い切った時点で候補者の出馬の決意が明確です。

よくIT関連の発表会で

「この価格で提供させていただきます」

と言う馬鹿がいます。誰もそんな価格で提供しろとは要求していません。

ITエンジニアの私は「この設定にさせていただきます」とは絶対に書きません。「この設定にします」と言い切るだけの自信がなければ、「します」とは言い切れないのです。「します」と言った以上「する」ことが前提であるし、「できる」という自信がなければ書きません。「できる」からには十分な下調べをした結果です。

「させていただきます」

を乱発するIT技術者は、私はその時点で「こいつは自分の発言に自信がないな」と見抜いています。

同様にベッドの中で女の子に「これからXXさせていただきます」と普通は言いませんよ。言ったら引っぱたかれるでしょう。「やるぞ」と言った方がよっぽど男らしいのです。

-「思います」を乱発しない-

この表現は「させていただきます」の延長です。つまり自信がないから「だと思います」を乱発していいます。メールの10行程度の文章の中に「させていただきます」と「だと思います」が3度出てきたメールは、まず本人の性格と能力と文章の内容を私は疑います。遅延行為でイエローカードです。つまり回答を全く検討していないから、自分の「思いついた事」を「思います」に凝縮しています。私は送信者が明らかに自信のない内容について返事を書いたと判断します。

十分下調べをした上での回答であれば「XXです」と言い切れる自信がある表現が使えます。「だと思います」と言われた時点ですっかり技術者であることを忘れています。

忙しいから「だと思います」と使うのは仕方がありません。しかし、「今は××だと思うので、後日、くわしく調べてご報告します」と書けば、相手はそこで一安心できます。しかし「だと思う」で終わらせてしまうと、そこで「本日の業務はお終い」ということです。ここで送信者が業務放棄、フォワード交代だと判断します。

できれヴぁ「させていただく」と「思います」を全く使わない文章を書く挑戦をしてください。非常に文章と自分の意見が引き立つ事に気が付きます。


- 方角を示す言葉を乱発する-

「上の方に示した事を下の方にまとめさせていただきました、御社の方でご検討して頂けるとこちらも有難く存じます」

この表現は最低です。

この一文を読んだら、まず相手の品性を疑います。何にもまとまっていないからこのような悪文になります。


「以上を考慮し、箇条書きにした以下の通りに実施します、ご不明な点はお問い合わせください」

くらいにスマートに文章を書いて欲しいものです。重要なのは箇条書きの内容です。


- ビジネスには丁寧語だけで十分

ビジネスの付き合いは対等です。何もこちらが卑屈になって目立つ謙譲語を乱用する必要はありません。また、相手をヨイショする必要もありません。日本語では尊敬語は皇室に向かって使う場合は重要です。しかしビジネスで相手に対して尊敬語や謙譲語を多用する理由を、私は見つけ出すことはありません。

ただし、感謝の気持ちは表現ではなく、単語として入れておくようにしています。

例えば「お伺いさせていただきます」ではなく「ご訪問します」であれば「伺う」という謙譲語を使わず「ご・訪問」という丁寧表現になります。

よくある悪文で

「先日お伺いした際にご頂戴した資料は次にお伺いした時にお返しさせていただきます」

この馬鹿は何を言っているのかポイントが全くボケています。

「先日訪問して頂いた資料は次回ご返却します」

これで十分だと思います。丁寧な表現は「ご返却」だけに抑えてみました。必要最低限な丁寧表現です。この表現で「喧嘩売ってんのか、ゴルァ!」と怒る人はかなり珍しいでしょう。


「先日有難く頂戴させていただきました御見積は検討させていただきます」

馬鹿か。

「見積書頂きました、有難く検討します」

でちゃんと「事実」と「感謝」の気持ちが表現されています。

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読む側としては、まず前後に散りばめられた秋のお祭りで売っているような安っぽい虚飾を排除し、次に排除された中から重要なコトバの繋がりをつなぎ直す作業を行う必要があります。

さすがにそこまでは失礼なことはしませんが、送られてきた全文を

「。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。」と書かれてきた内容は「。。。。。。。。がxxxxxxxだ」という意味でよろしいでしょうか、と嫌味にならないくらい添削して差し上げます。ここでいい加減な自分の意見を加えると、ただでさえ送信者は日本語がおかしいので、非常に意味不明な返信が帰ってっくる可能性があります。シンプルに「意味の分からない言葉」を正しい日本語に翻訳して差し上げるだけに留めましょう。もしかしたら「あなたの会社とはお取引するつもりがない」という気持ちも暗に伝わる場合もあります。

- 「が」を使わない-

「が」はニホンゴの萬金丹の様に万能の薬です。薬でですが大変いかがわしい薬です。心臓移植手術のついでに胚移植と盲腸の施術をしたような不自然な文章に仕上がります。

「御見積書いただきましたが、XXの件が価格が不明ですが、お考えの方は如何で御座いましょうか」

馬鹿か。

「お見積書頂きました。不明な点があります」
 - XX の価格が不明である。
「この価格の根拠をご説明ください」

くらいに書ければ、相手もどこが不明なのか、説明不足なのかが理解しやすいはずです。

 >- XX の価格が不明である。
XXは今回特注品であるという性格でこの価格でご提供します。

と相手も問題の部分を引用して説明できます。しかし、事例の文書をそのまま引用して回答するのは非常に困難です。何しろ問題のポイントがぼやけています。


-全文引用して返信する-

私がサラリーマンだった頃、最初の問い合わせから全部のやり取りを FWD: して、「引き継いでください」の一文で送ってきた馬鹿が隣にいました。本当に馬鹿です。印刷すると5ページ位になった。この長文の中のどこに問題点があり、引き継いでほしい項目が全く指摘されていません。前後の繋がりを理解するだけで半日かかりました。本人はこれで引き継いだつもりになっているので、深刻に事態を理解できていないのが明白です。本人は、自分が全く仕事ができません、という事を FWD で全て表現しているということです。

少なくともメールでの問い合わせについては

>相手の文章
それに対するこちらの意見や回答

という返信をするようにしています。少なくとも、「> 相手の文章」 を引用した時点で相手にも引用された部分はこちらで十分検討して回答していますという事実です。

全文引用して回答された文章は、まず独善的で自分の意見しか述べていません。あなたはこの様ないい加減なやり取りを全文で FWD; された側の立場を考えてみたことはありますか。

大体、こうしたメールは、メーラーの中で、全文を読むことが困難です。仕方がないので、印刷して文脈を追いかける必要があります。。全くもって受け取った側からは時間の無駄です。しかも悪いことに、

「相手の返信にこう書いてあったでしょう」

と言い出す始末です。そこまでメーラーで読む気が失せるということを、この馬鹿は知りません。困ったことに、同じことを相手にしてやると、相手は怒ります。

全然違う内容なのに Re: する馬鹿者

本当にこの馬鹿は何とかして欲しい。単純に subject を書きたくないから、こちらが送った内容に Re: して全く違う内容を書く。ほんとうにこういう馬鹿を教育する機関を文科省は作るべきです。

少なくとも「これこれについて」というサブジェクトが付いたメールの返信に対しては「RE:これこれについて<了解しました。くらいはつけるのが少なくともマナーです。

まぁそれを省略するのはいいとしても、「これこれについて」に対する返信メールが「RE:これこれについて」で全然違う内容を書いている馬鹿がこの世の中に蛆虫みたいにはびこっているのは撲滅して欲しいです。全然書いている内容が「これこれ」についてじゃないんです。
\\\
書いた内容をそっくりそのまま引用するよりあくどい。「これこれ」じゃない内容を全く新しく構築するのではなく、単純に「返信」ボタンを押して、本文だけをそっくり書き直しただけの話です。これで、議事のスレッドを追う事は不可能になります。要するに自分の意見を全く違う目的や意見に入れ替えるだけで、全く自分の意見がありません。サブジェクトを変えないということは「新規の内容」でもなんでもなく、単なる自分のつぶやきにであるしかないのです。それにもかかわらず「こう言っただろう」という奇妙な反応者が発信者に対してなぜ私はまじめに返信する必要があるのでしょう。不思議なことですが、スレッドを変えずに「だから言っただろう」と主張するメールの読者がいることはとても不思議です。

つまり自分は新しいスレッドを作れる自信がない。だから、他人のスレッドを引用して、 RE: で全然違うスレッドを作ろうとする。同じタイトルを使って違うスレッドを作っても、読む側は重要に考えることは絶対にないわけですよ。発言者を批判する事が目的です。それを「おらが主張」と申し上げる。後にそれもメールじゃなくて、電話だとかの強烈なツールをつかって批判する訳なのです。

もしこういう蛆虫をそっくり消せる殺虫剤があるなら、私は買いますよ。


-あなたの日本語は英語に翻訳できますか-

これも私が常に心がけていることの一つです。どんな翻訳サイトでもいい。書いた文章を翻訳サイトに放り込んで、「私でも理解できる英語」に翻訳されているかをチェックしてみましょう。 "It is" などと翻訳されている場合は、大抵、主語が省略されている悪文であったり、特定名刺の複数形が "a xxx" となっている場合、元の文章がおかしいのです。例えば

「見積書は」が "a estimate" となればおかしい。

「この見積書は」であれば "this estimate"とか "the estimate"などと翻訳されるはずです。
逆に自分が書いた日本語を英語に翻訳して、その英語を日本語に再翻訳してみましょう。これでしっかり意味が通れば、少なくともあなたの日本語はグローバルに通用する日本語であると言えます。英語だけではなく、フランス語でも中国語でも、翻訳ソフトを使えば意図は十分伝わるでしょう。全く日本語として体をなさなければ、あなたの日本語はひどい日本語です。


-ですます調かだである調か-

論文を書く場合は「だ、である」調が推奨されます。私は本当に相手に伝えたいことを書いている場合、「です、ます」調にします。原稿は「だ、である」で書いた後、先方に伝わるように文章を書き直そうと試みると、語尾は「です、ます」調が収まりが良くなることがあります。不思議なことですが、です、ます調の方が文章が締まるようです。

この文章を書き始めた時、私は「だ、である」調で書きました。しかし、推敲すると「です、ます」調の方がリズムの良い自然な文章となりました。私がですます調を使う事は個人的な意見です。だ、である調で相手に不快な思いをさせずにうまく感謝や丁寧さを仕込んで使う人は文章のテクニックが優れています。私はそれほど文章を書くことに卓越していませんので、ですます調を主に使います。

-こそあど言葉-

こそあど言葉は避けるように心がけます。「これ」、「それ」、「あれ」が「どれ」なのかが全く文脈から伝わらないケースがあります。解釈が危険になる場合があります。私も口語では使います。文章にする際は、「こそあど」が「どれ」を意味するのかを明確にするべきです。

-とにかく短文にする-

「この資料をお送りさせていただきますので、十分ご検討の上、不備がございましたらお手数ですが、ご指摘お願い申し上げます」

ひどい悪文ですね。

「この資料をお送りします。ご検討ください。不備がありましたらご指摘ください」

一つの馬鹿長ったらしい文章を3つに区切るだけで、「資料を送る」「検討してほしい」「不備を指摘して欲しい」という3つの伝えたいことが明確です。この3つの要件を長ったらしい一つの文章にまとめること自体、チーズインハンバーグをデミグラスソースで煮込んだオジヤような、意味不明なテイストとなってしまいます。(例えに無理がありますね)少なくとも「ごはん」「チーズハンバーグ」「味噌汁」は別な皿に提供して欲しい。だからこそ、それぞれの皿のテイストが引き立つはずです。

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まず、大手IT企業のプレスリリースなどでは、ひどい悪文は見当たりません。おそらく主文を書いた人が推敲担当者に渡して十分に表現をスリム化しているからでしょう。

しかし、ブログ形式のウェブサイトで運用しているIT企業の場合、「悪文大好き」な担当者が書き散らしたような悪文が散見できます。少なくともプレスリリースなどで「させていただきます」や「思います」が3度以上出てきた場合は危険信号です。読む気が失せます。内容の信憑性を疑います。私の悪文を見つけるという悪い趣味があるせいでしょうか、語尾を見ただけでそこに何が掛かれているか、全く理解できなくなってしまいます。

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というオレだって、ブログを書くときは悪文で書き散らすんだけどなぁ。ま、いいか。