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小野薬、オプジーボに潜む3つの競争力

2016年09月02日 | 企業研究
小野薬、オプジーボに潜む3つの競争力
日経新聞 大阪経済部 高田倫志
2016/9/2 5:30
 
小野薬品工業の株価下落が止まらない。がん免疫薬「オプジーボ」をめぐり、共同開発パートナーの米医薬品大手が8月、より幅広い肺がん患者への効果を調べる臨床試験に失敗。小野薬の持ち合い株売り出しや年約3500万円とされる薬価を引き下げる動きも重なり、株価は8月末まで5週連続で下落した。この間の下げ幅は3割を超える。10月に向け株価を左右しそうな材料が相次ぐ。



 大きく下げた小野薬株はどこに向かうのか。大きなカギを握るのが厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)だ。100ミリグラム73万円、体重60キログラムの患者で計算上、年間約3500万円とされるオプジーボの価格が高すぎるとして、18年4月予定の薬価改定を待たず、薬価を引き下げる可能性が浮上している。8月24日から中医協で議論が始まった。10月中には一定の結論を出す方針が示されている。
 仮に薬価が引き下げられれば、小野薬の収益にとってはマイナスの影響は避けられない。すでに8月下旬には証券アナリストらが相次いで業績予想の引き下げに踏み切った。小野薬の会社計画では17年3月期の連結営業利益は前期比2.4倍の725億円。市場では18年3月期に営業利益1000億円を超えるとの見方もあるが、薬価次第で大きく振れるのは明白だ。大和証券の橋口和明アナリストは「18年3月期に入るまでにオプジーボの薬価が25%下げられる可能性がある」と予想する。

 日本では16年4月から医薬品の価格改定基準が導入され、年1000億円以上を売り上げる薬は価格を25%から50%引き下げられる。SMBC日興証券の中沢安弘アナリストは「米国での処方容量などを比較した場合、55%引き下げの可能性もある」と試算。目標株価を4900円から3800円に下げた。

 しかし、「泣きっ面に蜂」の悪材料続きでもオプジーボには3つの競争力が潜む。「医療現場でのニーズ、成長余地は非常に大きい」(SMBC日興の中沢氏)。1つは薬価が引き下げられても、適用範囲の拡大が期待できることだ。9月中に腎細胞がん、16年内には血液がんの一種向けに適用される見通し。さらに胃がん、食道がんなどへの効果も期待される。国立がん研究センターによると、胃がんの国内死亡者数は年4万8500人、食道がんは同1万1200人に達する。医療機関のみならず、患者や家族の期待は大きい。

 さらに、もう1つはオプジーボと他の医薬品を併用する需要だ。オプジーボなどのがん免疫薬は併用治療への期待が強く、複数の薬を同時に投与する治験が多く行われている。共同開発パートナーの米医薬品大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)ががん免役薬の一種「ヤーボイ」や、従来型抗がん剤を一緒に使う併用治療による臨床試験を進めている。

 最も大きいのは、がん治療薬における先行者利得だろう。オプジーボは国内で14年9月から皮膚がんの一種に、15年12月からは肺がんに臨床現場で2年間で合計8000人に使用された実績がある。オプジーボは専門医認定を受け、5年以上の抗がん剤使用経験を持つ医師がいるなどの条件を満たした全国800カ所の病院でしか使用できない。こうした病院にはほぼ行き渡っている。医師は副作用への懸念から普段使い慣れない薬は敬遠する傾向がある。肺がん専門でオプジーボを2年間使ったある医師は「多くの医師が使い慣れたオプジーボを優先するだろう」と話す。

 現時点でオプジーボの薬価が引き下げられるかどうか予測は立てにくい。厚労省が10月に引き下げを決めた場合、18年3月期の利益の伸びは一気に鈍化するのは間違いない。19年3月期には通常の薬価改定があり、さらにオプジーボの薬価が下がる可能性がある。当初、株式市場が抱いていたような利益水準は期待できなくなる。投資家はオプジーボの薬価と販売数量をつぶさに見極める局面に差し掛かっている。

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