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香水 ―ある人殺しの物語― / パトリック・ジュースキント

2007年02月10日 | 本。
久しぶりに新しい本を読みました。

香水 ―ある人殺しの物語― / パトリック・ジュースキント

…といっても、この本が出版されたのは1987年なのですけど。

舞台は18世紀フランス。
今でこそキレイなイメージのパリですが
当時は恐ろしいまでの悪臭が立ち込める街だったのです。
うろ覚えの知識ですが、確か排泄物をバケツとかに溜めといて、
捨てるときは道にザァーっと流していたのがこの辺の時代だったかと。うへぇ・・・。
だから、それを踏まないようにって理由でハイヒールが生まれたんですって。

そんなフランスに生まれたジャン=バティスト・グルヌイユが主人公です。
この男、異様に鼻が利きます。というか匂いで周りを認識しているという感じ。
人を嗅ぎ分けることは勿論、木やドアノブや石の匂いまで嗅ぎ分けられるのです。
その並外れた嗅覚を生かして、落ちぶれた調香士に弟子入りし、
香水作りの技術を学びます。

ある日、彼は「究極の匂い」に出会います。
匂いで世界を認識している彼にとって、それは喉から手が出るほど欲しいもの。
その匂いを香水で再現し、さらに高めるためには、
人を殺すことなど毛ほども感じません。
「究極の匂い」のために起こる連続殺人。
その果てにグルヌイユが手に入れたものは…本書を読んで確かめてみてくださいv

ジャンルはサイコサスペンス、でしょうかね。
結構、陰湿な感じの本ですが、私は結構そういうの好きなんで(悪趣味
グルヌイユの歪曲した感じがいい味出してます。
忍耐強く、聡い。でも何かが欠落した不気味さ。
匂いを取り出して精製する技術に示す情熱は 最早 執着でしょう。
少しネタバレ→グルヌイユに関わる人関わる人が ばたばた死んでゆくのもスゴイ。
グルヌイユは何にもしていないのに、
でも彼に関わらなかったらきっとそんな死に方しなかったろうに、
と思うような死に方ばかりです

ラストシーンは予想外。匂いの力って凄い、そして怖い。
そして、グルヌイユの孤独感を感じます。
グルヌイユは「あの匂い」を至上のものと思っていて、
匂いの為なら連続殺人なんて罪だとは微塵も思わないような、所謂 確信犯なのですけど、
ちょっと可哀相な気もしました。

海外小説に漂う何ともいえない翻訳物っぽさはあまり好きじゃないのですが、
それを補って余りある本です。

3月にパフュームという題で映画が公開されます。
ミニシアター系っぽい内容ですが全国ロードショウですよ。
グルヌイユの匂いの世界をどう表現するのか気になりますので、
国試終わったら観に行きます!


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2 コメント

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Unknown (tama)
2007-02-10 12:42:15
犬は臭覚の世界を持っているのかも?
4次元で世界を認識している。って。
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Re (竹子)
2007-02-12 21:10:17
>tamaさん
そういえばそうですね!
犬は近眼だといいますし、
嗅覚がメインのグルヌイユの世界に近いのかもしれませんね。
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