美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




長谷川祐子さんのトークを聞きました(9/17)。聞き手は ART iT編集
長の小崎さん。副題は『感動の創造 アーティストとデザイナーの共
存領域』です。

会場の Vantanはクリエイターを目指す若者の学校なので、聴講する
人も若者ばかり。開演前に司会の若い女性が『本日は長谷川さんの
仕事術なども...』なんて話をしていたので、どんな内容になるのか
一瞬不安になったのですが、ご自身が企画した展覧会やアートに対
する考えなどもうかがえて、とても刺激になりました。

キュレーションをされた水戸芸術館の『Another World』、2001年の
イスタンブールビエンナーレ、金沢21世紀美術館、東京都現代美術
館の『Space For Your Future』などなど。作品にまつわるエピソー
ドを散りばめながらの二時間強。以下、かいつまんで印象に残った
言葉を綴ってみます。

平面よりは立体、空間に興味あるようです。
・自分自身の反応・感性が確かめられるもの。
・視覚が身体・精神に与える影響。
・時代を越えて私たちを(旅に)連れて行ってくれる作家。
・平面は視覚にくるが、空間は体にくる。五感全部を作った反応。
・立体空間は現実とネゴシエートする。五感とのリコネクション。
・平面では現代を表現するには足りない。

視覚についてはこんなこともおっしゃっていました。
・視覚表現はローカルである。LAの乾いた空気と日本とでは、同じ
 作品でも違ってみえる。

現代美術について。
・現代美術の役割は美術の概念を広げることにある
・どんなところまでも想像力を広げていい。もっと先に行っていい。
 自由なフレームとしてのアート。善き人間性、理念を共有する。
・その場所で何ができるのか。それぞれのジャンルにいるアーティ
 ストを横断させたい。
・自分をメディアムと考えるアーティストが増えている。

ご自身の興味について
・周辺への興味(東欧・女性・ブラジル)。
・それはエスタブリッシュされていない、安全ゾーンにいないもの。
・カオスの口から新しい秩序が立ちのぼる瞬間がいい。

また、キュレーターとしては以下の言葉が印象に残りました。
・作家を追い込む。追い込むといい答えが返ってくる。返る答えが
 ない作家は(展示の)中心から外す。
・それは芸事だからあたり前のことである。

何人かの作家に触れた中で、石上純也さんについてのコメントが印
象に残りました。
・石上さんは空間を変容させる人間が建築家であると自覚している。
・だから空間を浮遊するようなテーブルの作品も、建物を建てるよ
 りもドラスティックに空間を変容させている。
・Space For Your Future の大きな風船は成功するかどうかぎりぎ
 りのところだったので、万が一の時のためにワークインプログレ
 スの展示も用意していた。

あとは左翼的なフレームから現代美術を解き放ちたいというような
話をされていました。ここは何かひっかかるものがあるので、もう
少し話を聞きたかった...

会場からの質問に対して...

Q.ギャラリーと美術館の違いは何か?
A.ギャラリーは嗜好性で作家を選ぶ。そして支援して育てる。一方、
美術館では作品の価値づけを考える。歴史に位置づける。コンテキ
ストを考える。例えば草間彌生と名和晃平の作品をどのように並べ
るのか。

Q.コミケやGEISAIなど、ギャラリーや美術館でないスペースで企画
 されるイベントにクリエイティビティの可能性があるか?
A.ある。力のあるアーティストなら出てくる。ただ、美術館というの
はエレガンスが求められる場所でもあるから、展示する作品は考えな
ければならない。例えグラフィティであっても、箱の中で生命を失わ
ない作品であれば美術館に展示する。プロはサイトの意味を考える。
ラフに置いてもいいけど、どのように置くかはシリアスに考えないと
いけない。

それができていない展示には火をつけたくなる。

こんなところです。

鋭い事をずばずばおっしゃる長谷川さんは終始にこにこされている
のですが、坂口安吾の描いた夜長姫の笑顔ってこんななのかもしれ
ないな...と思いました...(^^;

私はただの鑑賞者ですが、とても刺激になりました。

おまけ
インタビュー 長谷川祐子 CINRA MAGAZINE

蛇足
東京都現代美術館はもともと意欲的な展示をしていたと思うのです
が、長谷川さんが関わることで、ドライブがかかっているように思
います。
2006年 3月の MOTコレクション(東京都現代美術館)
東京都現代美術館の収蔵品展が凄い!

個人的に刺激的だと思う展覧会について書いてみたこと。
刺激的な展覧会って...何?
# やっぱり東京都庭園美術館がいいなぁ...

あと、ふと、例えば先進的な展覧会があったとして、それを表彰す
る制度ってないのかな、と思いました。伝説的な展覧会、のような
ものを、記録として残していくシステムがあってもいいのにな...

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (mizdesign)
2009-09-21 02:15:45
こんばんは。
シャープで明晰な語りですね。
聞いてみたかった。

>もっと先に行っていい。
迷える当世にこの明快な肯定は力強い。

>空間を変容させる人間が建築家
ええーっ!えらくまた狭い定義な気が。。。

>それができていない展示には火をつけたくなる。
過激ー。
 
 
 
Unknown (lysander)
2009-09-21 23:53:16
mizさん
こんばんは

> > 空間を変容させる人間が建築家
> ええーっ!えらくまた狭い定義な気が。。。
ここら辺、定義を狭くしているのは私の書き方の問題では
ないかと思います。どうもすいません。

この前、御徒町で聞いた mizさんの建築話は、素人の
私にはとても新鮮だったので、そのうち、また、一席
お願いします...(^^;
 
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