美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




渋川にあるハラミュージアムアークに増築された、觀海庵の落成記
念の展覧会...

黒くて長い回廊を進む。右手に牧場を望みながら。霧に煙った真っ
白い牧場。

黒い扉に手をかける。その向こうに漆黒の闇が口を開けている。そ
れがアニッシュ・カプーア...右手に自動扉。その先にはモノクロー
ムの水平線。それが杉本博司...ロウソクの明かりに調整された室内
は仄かに暗く、その中へ...

正面の通路が先の方で右手に折れる。その通路は縁側に見立てられ
ている。縁側の外側、左手の壁には赤いロスコと青いファーブル、
つきあたりを右手に折れた壁には森徹山の屏風...

縁側に囲まれた空間が書院。その結界には応挙の淀川が流れている。

書院の中央にはクラインの青い塊。それを囲むように永徳の虎と、
探幽の龍虎。その狭間、青い塊の向こう側に違い棚、その上にひと
挿しの枇杷。それが須田悦弘...

新しいもの古いものとが静かに調和している。このために作られた
かのように見える空間の、ここからがもっとも好きなアングル。


応挙の絵巻ははじめてかな。春先でしょうか。淡い水色と柔らかい
緑が気持ちのいい絵。海を観る庵の中で観る、海に続くイメージ...


ギャラリーツアーとその前後、都合三回足を運びました。三回目、
お客さんが途切れた静かな時間帯。受付のおばちゃんが淀川沿いの
地名をメモしたコピー紙を応挙の現物と照らしてたり、ロスコの絵
の前でその筆の動きを研究してたりします。美術関係の仕事は初め
てだそうですが、毎日ここに通うのがうれしくて仕方がないという...

あらためて会場を見渡して、それはそうだろうなぁ...と思う。


もとからある一般の展示室では束芋の映像がよかった。原美術館の
個展でも観た『真夜中の海』。あのエントランスロビーから見下ろ
す海もよかったけれど、今回の鏡で連鎖した広がりのある海もいい。

あと、昔は新しかったのだろう作品も多数ならぶ中、屋外の真っ赤
なキャンベルスープとジャスパー・ジョーンズの『批評家は笑う』
は色あせずに格好よかった。ただ、近隣が牧場なだけに、名和さん
のゼブラはブラックではないかと...(^^;


さて、この会期中、日曜日にはギャラリーツアーが開催中。今回増
築された収蔵庫なども公開されています。要予約。せっかくここま
でくるのであれば、この機会に是非。

觀海庵落成記念コレクション展 (ハラミュージアムアーク) - 9/23 まで...

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コメント
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-08-20 01:17:23
こんばんは。素敵なご感想をありがとうございます。結界が淀川、まさに言いえて妙ですね。あの空間の素晴らしさが記憶に蘇りました。

真夜中の海は、見せ方が違うとこうも印象が変るものかと感心した作品です。私もベストに挙げます。

ここはまた、皆さんと一緒に遠足で行ったりしたら楽しいかもしれませんね。
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-08-20 02:48:05
はろるどさん
こんばんは

こんな時間に端末に向かっている自分が悲しいなぁ...(^^;

> 皆さんと一緒に遠足で行ったりしたら
行きましょう!
伊香保には竹久夢二記念館もあるので、セットで...
 
 
 
お久しぶりです (テツ)
2008-08-30 06:43:18
觀海庵の応挙の絵巻、ほんとに巧みに計算された配置でした。
觀海庵は、古美術・現代美術・建築が全体でひとつの小宇宙をかたちづくっていましたね。

「真夜中の海」、あの展示方法には驚きました。
床に座り込んで眺め続けていると、夜の浜辺にいるような気分でした。
 
 
 
Re: お久しぶりです (lysander)
2008-08-31 03:12:55
テツさん
こんばんは

> 床に座り込んで眺め続けていると、
そんな観方もあるのですね...
今度、行く機会があったら試してみます。
 
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