大正・昭和の風景版画家 川瀬巴水展 講演会 (ニューオータニ美術館)

赤坂界隈には縁がないのですが、柄にもなくニューオータニなんぞ
に足を運ぶ...

川瀬巴水さんの名前を知ったのはつい先日、千葉市美術館の『海に
生きる・海を描く』がきっかけでした。
・『海に生きる・海を描く』の感想

海の青、深い闇の藍がとても深くてね...

そこへタイミングよく川瀬巴水展、今回は渡邊木版美術画舗の渡邊
章一郎さんの講演を聴いてきました。

明治にはいって西洋の文化が流入してくる中で、浮世絵のモチーフ
を残そうとする新作版画、一方、絵師、彫師、摺師の分業が常識だ
った版画をすべてを一人でやっつけようとする創作版画、二つの流
れを追いながら、川瀬巴水さんの作品を中心に、多くの作品を見せ
てもらいながらの講演でした...

章一郎さんは三代目、おじいさんやおとうさんのエピソードを織り
交ぜたお話はとても面白く聴けました。

ある雪の日、三原橋の近所を川瀬さんとおじいさんが二人で歩いて
いたそうです。ふと、川瀬さんがスケッチを始めたので、おじいさ
んは傘をさしてあげながら、しばしその完成を待ったという『三十
間堀の積雪』のエピソードはいい話だなぁ...と思いました。

物資がない頃は版木を再利用しながら別の作品を作らざるをえなか
ったとか、震災や戦争などで苦労した頃は、思いに反して売れる版
画を作っていかざるをえなかったとか、版元であるが故の苦労話な
どもなかなか興味深く...

講演後の質疑も活発で、いかにも美術好きな人たちが集っていたよ
うで、とても勉強になりました。

これまでは海外への輸出が大きな割合を占めていたそうですが、こ
れからは国内の市場も活性化させていこうとしているそうです。海
野光弘さんや爲金義勝さんといった、現代的な感覚で作品を創る版
画家さんの紹介もありました。

これからも頑張ってほしいなぁ...

今回の講演はとらさんのお誘いで行ってきました。こうした交流も
ネットならではですね...

とらさんどうもありがとうございました。

・大正・昭和の風景版画家 川瀬巴水展 (ニューオータニ美術館) 前期 ～8/13,後期 8/15～9/3

参考
鎌倉にもオータニ関連の小さな美術館があります...
・美しき日本の四季(鎌倉大谷記念美術館) の感想...
・渡邊木版美術画舗