美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




昨日からの不順な天候で風強く、小雨ふりそぼる鎌倉。そろそろ紅
葉のシーズンだからか、大勢の人が電車を降りて行きます。東口を
降りて小町通りへ。そこら辺はまだ観光客もまばらで、北へ北へと
歩いて行くうちにだんだんと人が少なくなっていきます...

鎌倉の神奈川県立近代美術館で開催されている内藤礼展の初日に朝
一番で行ってきました...

まずは屋内の展示。

第一展示室の『地上はどんなところだったか』。照明を落とした室
内の人影はまばらです。ガラス瓶...模様の入った布...風船...はか
ないものたちがそこかしこに展示されています。そこには静かな律
動が感じられます。リズムでなく律動...音楽というよりは生命を感
じさせる何か...

展示スペースのガラスケースも作品の一部となり、はっとした効果
をあげています。それはまるでイリュージョンのようです。今年も
っともはっとした展示のひとつ。あれは誰でもそう見えるものなの
だろうか...それとも私だから見えたものなのだろうか...

第二展示室は外光の入る空間。そこには模様の入った布が敷き詰め
られています。ここにきたらお土産を忘れないように。丸い筒のよ
うに重ねられた、薄くてはかない内藤礼さんからのメッセージ...

外に出ます。中庭には『精霊』という作品。二本のリボンが曇天を
背景に舞っています。折からの強風にあおられ宙空にからまったリ
ボン。そんな様子を鋭い眼で見つめている人がいました。昨年の横
浜トリエンナーレでディレクターを務めた水沢勉さんです。私はデ
ィレクター・トークツアーでお話をうかがいました...
横浜トリエンナーレ2008

水沢さんは意を決したようにスタッフの方と二人でリボンをおろし
始めます。風にほんろうされるリボンがゆっくりとおりてきます。
作品はとてもシンプルでテグスにリボンを結びつけたもの。お二人
は手元におろした作品をほどき始めました...

強い風に暴れるリボンはほどくのも大変そう。とても難儀していた
のでついつい手を出してしまいました...

三人の共同作業で何とかほどけ...

私は両の手にリボンをひとつずつ握ります。左と右から水沢さんと
スタッフの方が、そろそろとつりあげます。ハイスピードで流れて
いく灰色の雲をバックに、少しずつ空に還っていく二本のリボン...
最後に二本のリボンを解き放った時の爽快感...

今度は風の穏やかな晴れた日にこよう...

中庭の脇のスペースには『恩寵』...というテグスにビーズを通した
作品。天井からつり下ろされた作品を見つめたまま周囲を歩きます。
ゆっくりと歩を進めるにしたがって表情を変える光の糸...それはち
ょっとした彫刻のようでした...

会場を後にしたら雨足が強くなりました。雨宿りがてらご飯を食べ
ました。ゆっくり食べているうちに、晴れ間が見えてきました...
宙空のリボンも違って見えるだろうな...と後ろ髪ひかれるような思
いを残しつつ、それは次の楽しみにとっておくことにしました...

内藤礼さんの展示を観て思ったのは、私は本当に観ることが好きな
のだなぁ...ということ。そして、私は本当に内藤礼さんの作品が好
きなのだなぁ...ということです。

内藤礼展『すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水がある
ように存在している』
(神奈川県立近代美術館) - 2010/1/24

おまけ 内藤礼さんについて書いたこと
『きんざ』に行ったこと
作品集『地上にひとつの場所を』のこと
発電所美術館の内藤礼展『母型』

コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
お土産 (mizdesign)
2009-11-26 08:34:16
こんにちは。
他者の存在を前提とする、呼吸するような存在感がとても魅力的でした。
第二展示室のお土産は分からなかったです。
 
 
 
Re: お土産 (lysander)
2009-11-27 01:03:18
mizさん
こんばんは

> 他者の存在を前提とする、呼吸するような存在感が
> とても魅力的でした。
他者の存在を前提とする作品...
それは観る者への信頼かもしれません。

お土産は結構めだっていたのですが、
オブジェだと思うとスルーしてしまう
かも...(^^;
 
 
 
Unknown (noel)
2009-11-29 11:08:37
こんにちは。
今回ようやく内藤作品の魅力がわかったような気がしました。あの場所と建物の雰囲気と全てがマッチしていました。
ぜひ晴天のリボンもご覧になって下さい(笑)
 
 
 
Unknown (lysander)
2009-11-29 23:56:47
noelさん
こんばんは

> 今回ようやく内藤作品の魅力がわかったような気がしました。
> あの場所と建物の雰囲気と全てがマッチしていました。
本当に観ることの喜びが感じられた展覧会でした。
あんなにミニマルな展示なのに...

> ぜひ晴天のリボンもご覧になって下さい(笑)
次に行く時を楽しみにしています...(^^)
 
 
 
空間の記憶 (テツ)
2009-11-30 12:17:13
内藤礼の名前も知らない昔、佐賀町エキジビット・スペースの個展を観た記憶があります。
内藤さんの作品は、いつも空間の記憶とともに私の中に残っています。
 
 
 
Re: 空間の記憶 (lysander)
2009-12-01 01:14:18
テツさん
コメントありがとうございます。

> 内藤礼の名前も知らない昔、佐賀町エキジビット・スペースの
> 個展を観た記憶があります。
> 内藤さんの作品は、いつも空間の記憶とともに私の中に残って
> います。
今回の展示は、会場で出会ったハプニングも含めて、
私がこれまで観たどの内藤さんの展示よりも素晴らし
かったと感じているのですが、やっぱり昔の展示を
観ている人は羨ましいです...(^^)
 
 
 
Unknown (iko)
2010-01-22 14:48:20
こんにちは。

あのお土産、飾りたいと思って
ふさわしいフレームを探しております。

一応スタッフに聞いてみたので
持って帰って良いことがわかったのですが
(作品リストに記載はありましたが)、
気づかない方も多かったかもしれませんね。

ところでlysanderさんは横浜にお住まいなんですね。
私は横浜で育ったのです(今は東京です)。
大岡川、懐かしい。

TBさせていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
 
 
 
Unknown (lysander)
2010-01-23 01:37:36
ikoさん
こんばんは

> あのお土産、飾りたいと思って
> ふさわしいフレームを探しております。
おー...いいですね...
透明のアクリルなんかがいいかもしれませんね...

> 大岡川、懐かしい。
大岡川、いいですよね。
桜の季節が待ち遠しいです...
 
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