第三回 仁藤耀
「さて『ルミナス』の最後は仁藤耀くんだ。林崎くん、君が彼女を『ルミナス』のリーダーに指名したんだよね?」
「ええ、まぁ。他に適任者がいないといいますか、あの三人だと消去法で耀だろうなと」
「おやおや、自信がなさそうだね」
「まあ燈は脳天気だし、晶は斜に構えたところがあるし、それを考えると耀しかいないんですよね。昔から一緒に遊ぶ時もなんだかんだ言って耀が中心だったし」
「ははは、そういう考え方もあるか。しかし林崎くんの危惧も分かるよ。仁藤くんに不要な負担を掛けたくないのだろう?」
「……え!? ええ、まぁ。(やっぱりこの人、鋭いのかなあ)」
「仁藤くんは確かに溢れんばかりの才能に恵まれている。しかしそれが故に自らも滅ぼしかねない。才能だけでは何も出来ない、それを使いこなす技術こそこれからの彼女に必要なものだ」
「え、はい(……なんか珍しくちゃんと講師らしい事を言ってるし!)」
「それに彼女については、他にも危惧すべき点があるな。歌でもパフォーマンスでも全体的に高いレベルで安定してるのだが、逆に言うとこれといって特筆すべき点がない」
「そうですね。それは僕も気になってます」
「彼女の魅力はむしろ日常性からのギャップだろうね。学園内でも何度か見かけたが、プライベートでは目立たぬ格好をしているね」
「そうですね。余り派手好みではありませんし、最近ちょっと目が悪いとかで眼鏡を掛けていることもあります」
「彼女の普段の姿を知っている君にしてみれば、ステージで躍動する仁藤くんは、それこそさなぎから蝶へ成長したようなものだろう。しかしファンはステージ上の彼女しか知らない。その点はジレンマだな」
「だからといって余り普段の姿をアピールするのも難しいですよね」
「昔もステージ上の自分と普段のギャップに悩んだアイドルもいたそうだ。仁藤くんは君がしっかり支えてやってくれたまえ」
「はい、頑張ります(……ん? その昔のアイドルって、ひょっとして輝夜さんなのかな?)」