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白夜行 (映画)

2010年12月12日 | 映画
© 2011 映画「白夜行」製作委員会

映画「白夜行

人気作家・東野圭吾原作による、とにかく暗~いストーリー。
ある意味、古くは山本陽子、今は米倉涼子で演じられた松本清張原作の底辺に墜ちた女性が階段を駆け上がる「黒革の手帳」などの悪女モノに近いと一見思わせるのだが、これが似て非なるもの。女性の主人公・唐沢雪穂にピカレスクの痛快さとかカタルシスがないためで、心して観てほしい。
また、もう一人の主人公、桐原亮司はひたすら影の役回りを演じ、さらに人生の終わりがこれでは暗すぎる。
また、冷静に考えれば、片方が飛びぬけた美人で片方が理系の天才なわけだから、都合よすぎの部分もある。

原作が長編だったので、2時間の映画にまとめるためにどう構成したのか、という意味でも興味があった。

その点では上手にまとめてあるな、と思ったのが登場人物で、似通った2人の人物を1人にしてあった。
まず雪穂と結婚する御曹司と、雪穂の学生時代にダンス部の先輩であり御曹司の親戚でもある男性を1人の人物にしたのと、亮司側では、銀行員のOLと薬剤師のOLを1人の人物として登場させ、映画用に役回りをすっきりとさせてある。
設定も、2人の出会いが図書館ではなく老人たちがお世話をする、町の小さな公民館的な児童館に変えたのが自然でよい。

それから、原作では謎解きの部分で、刑事と探偵の2人が出てくるが、中盤のサスペンス部分の核になる探偵が一切出てこず、いきなりワンカットでてくるのが脚本家・監督の英断に「スゴイ!」と思った。
ある意味、探偵が謎を追っていく部分が面白みとなるのに、ここをそいで、刑事のプライベートや、刑事と亮司との気持ちのやりとりを映画では膨らませ、原作とはある意味、読後感と違うエモーショナルな場面が用意されている。

ただ、監督にダメ出ししたい部分もあった。それは原作の大阪の土地柄や大阪弁が活かされず、全編標準語なこと。雪穂の幼少時が大阪である部分を取り入れればもっと大人になって東京へ出てきてからの標準語で落差が際立っただろうし、幼少時のドロドロした環境との雰囲気の違いも出たのでは。

また、監督が亮司に入れ込んだ分、雪穂のラストは、口では否定しながら揺らぎを見せ余韻の残った原作に比べ、映画は雪穂の目はもう次を見据えており明確だった。どちらも有りだろう。
原作という土壌を、監督が膨らませて映画を作るから映画は映画で面白いのだ。よく「原作を超えた!」という宣伝文句があるが、ちょっと違うかな。原作は原作で世界観を持ち、映画は監督の世界観を具現化したもので、ある意味別物。

主演の堀北真希については、この暗い役には合っているが、欲を言えばファッション界の寵児となっていく華やかさを終盤にもう少し出せたら良かったかな。
刑事役の船越栄一郎は、刑事の人間味が出てはいたが、謎解き役としてはどうだろう・・・。

亮司を演じる高良健吾は、全然タイプの違う作品だが「南極料理人」での若い越冬隊員の役で、遠距離恋愛に翻弄される人間味あふれる演技を披露し、群像劇の中で光っていた。村上春樹原作の話題作「ノルウェイの森」でも、主人公たちの運命に影を落とす青年の役柄で出演している。
今回の白夜行では抑えた役柄だが、今後期待できる役者の一人だと思う。


<ストーリー>
質屋の店主が殺された――。複数の容疑者が捜査線上に浮かぶ中、事件はある容疑者の自殺をもって一応の解決を見る。しかし、担当刑事の笹垣だけは腑に落ちず、容疑者の西本雪穂と被害者の息子・桐原亮司の姿が、脳裏に焼きついて離れなかった。雪穂と亮司はやがて大人になるが、彼らの周囲では不可解な事件が…。笹垣は執念深く事件を追うのだが…。累計180万部を突破した東野圭吾のベストセラーを映画化。

監督:深川栄洋出演:堀北真希、高良健吾、船越英一郎
2011年1月29日より全国にてロードショー

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